GP-03「捜査ノキホン」

 軍平は元刑事のキャリアを生かして早輝や連に「逮捕術」の手ほどきをし、範人はゴーオンジャーになれたことが嬉しくてはしゃいでいた。ただ、2人にはまだパートナーとなる炎神が何故か現れていない。また、走輔達を素人と見做す軍平に対し、走輔は心中穏やかではないようだ。軍平は敵と戦う時のノウハウを厳しく教えてやると言い出す。走輔達が反発する中、ガイアークの出現をボンパーが感知。5人は北関東地区・曽古ヶ丘に向かう。軍平は真っ先に走り出した。

 曽古ヶ丘に到着した5人を突如襲う地響き。同時に周囲の森林が沈下・消滅してしまった。さらにはウガッツ達が大量に出現する。5人はゴーオンジャーに変身してウガッツ達を蹴散らすが、軍平は蛮機獣がいないことを疑問に思い、戦線から離れて別の場所に向かう。その地中には軍平の睨んだとおり、害地目蛮機獣・スコップバンキが居た。範人と軍平はブリッジアックスとカウルレーザーで地中からスコップバンキを燻り出す。そこへ走輔達が合流、スコップバンキを攻撃するが、取り逃がしてしまった。軍平はスコップバンキを取り逃がしたことに憤慨してその場を去っていく。範人は軍平を追った。

 ヨゴシュタインは忘れていた宣戦布告の為にスコップバンキを送り出したのだが、スコップバンキが目標を間違えてしまい、人里離れた曽古ヶ丘を襲撃してしまったのだという。「狙うべきは別の丘なり~」ヨゴシュタインは高らかに笑うのだった。

 軍平は「頼れるのは自分の足だけだ」と言い、範人を連れて、スコップバンキが地中を掘り進んで逃げた穴の中を探るべく、行動を開始する。地中をかなり進み、2人が辿り着いた先では、スコップバンキとウガッツ達が地盤を破壊する作業を行っていた。範人と軍平はゴーオンジャーに変身して破壊装置を爆破するが、スコップバンキは自らの手で破壊工作を継続する。

 一方、連はスコップバンキの言った「お門違い、いや丘違い~」という言葉から、「丘」が別の丘を指すのではと気になっていた。連の言葉を気に留めない走輔はコイントスに失敗。そのコインが偶然早輝の雑誌をめくり、ネオトキオヒルズのオープニングセレモニーの記事が早輝の目にとまる。「ヒルズ=丘」に気づく早輝。同じ頃、範人と軍平もスコップバンキの真の目標がネオトキオヒルズであることを突き止めていた。

 ネオトキオヒルズのオープニングセレモニーに、走輔と連、そして早輝は変装して潜入。現れたスコップバンキの前でわざと逃げ遅れて油断させ、スコップバンキを一蹴した。スコップバンキの掘削跡から現れて合流した範人と軍平は、3人の洞察に驚く。怒ったスコップバンキが襲い掛かるが、走輔と軍平のコンビネーションの妙もあり、5人のゴーオンジャーは見事スコップバンキを退けた。

 喜ぶのも束の間、スコップバンキは巨大化を果たす。走輔達は炎神ソウルを炎神キャストにセットし、炎神達を元の姿に戻すと、エンジンオーへと合体させた。だが、スコップバンキの矢継ぎ早の攻撃はエンジンオーを苦戦させる。軍平のアドバイスを受け、スコップバンキの攻撃をかわしたエンジンオーは反撃に転じ、ゴーオングランプリでスコップバンキを下した。

 戦いが終わり、走輔と軍平は互いの実力を認め合う。範人の提案で5人は掌を重ねてチームワークを確認した。その頃、新たな炎神バルカとガンパードは何処かを爆走していた。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 バスオン!

今回の連トリビア

 「巌流島の戦いで、宮本武蔵は二刀流ではなく長い木刀で戦った」

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
武上純希
解説

 範人と軍平、最初のメイン編。ギャグテイストに彩られた悪役の企みを、割とシリアスな捜査で追い詰めていくという、スーパー戦隊シリーズの原点「秘密戦隊ゴレンジャー」を思わせる展開が印象的だ。しかし、そこは「ゴーオンジャー」。やはりアップテンポな感覚とライトな作風で余裕のヒーロー像を見せ、3人+2人という変則編成を生かした秀逸な構成で魅せる。

 今回は、走輔、連、早輝の3人チームと、範人、軍平の2人チームが、互いに別行動をとり、最終的に一つにまとまるというチームワーク完成譚が主体だ。こういったパターンのエピソードは、ヒーロー同士の対立を描くことが必須となる為、見る者に「気まずい雰囲気」を強いるのが常だが、今回にはそれがあまり感じられない。それは主に走輔と軍平に限って「対立」が描かれているからだ。ちなみに連や早輝は冒頭から軍平の逮捕術とやらを楽しそうに(?)レクチャーされているおり、その上お気楽な範人はゴーオンジャーになったことを純粋に楽しんでいる様子。当の走輔と軍平の対立構造にしても、走輔が先輩ゴーオンジャーであるのに対し、軍平はゴーオンジャー初心者。逆に軍平は元刑事という捜査や戦術のプロフェッショナルであるのに対し、走輔はそういったことに関わったことのない「ド素人」という構造になっており、特にどちらが格上というわけでもない。互いにキャリアの違いがあれど、総合的には対等というところが絶妙なのだ。これにより、それぞれのポジションにプライドを持ちつつ対立はするが、丸く収まることが容易に想像できるという「安心感の高い」エピソードになっているのである。

 これはつまり、高年齢層には物足りないという感想をもたらすことにも繋がりかねない。だが、画面の印象からして、決して満足度が低いとは思えない。これは近年「特捜戦隊デカレンジャー」にも見られた、キャラクターのチームワークの亀裂に依存したドラマ作りを行わないというポリシーが、却ってキャラクターの個性を際立たせ、安心感の中に躍動感をもたらすという効果を狙ったものだろう。「デカレンジャー」あたりは、難解さやキャラクターによる緊張感の強調が、高年齢層にウケるとは限らないという好例だろう。

 ところで、3話目にして明らかになったことがある。それは、ガイアークのキャラクター性だ。ヨゴシュタインが「宣戦布告を忘れていた」というシチュエーションより展開される短いシーンは、ギャグテイストに溢れており、本シリーズの敵役がコミカルな路線を狙っていることが分かる。また、大地を汚し云々といったガイアークの目的を、この3話目でわざわざ復唱しているのも特筆事項だ。ここまで分かりやすい悪の組織の例は近年稀であり、ある種の衝撃を受けた。スコップバンキも、ギャグテイストに溢れた「秘密戦隊ゴレンジャー」の仮面怪人や「激走戦隊カーレンジャー」のボーゾックに匹敵する強烈なキャラクターであった。

 話を範人と軍平に戻そう。

 一応、範人にはNo.4のナンバリングが、軍平にはNo.5のナンバリングがされているのだが、2 人のポジションとしては軍平がリーダーシップをとっている格好だ。今回の展開にはそれが明確に示されており、これからは走輔&軍平のダブルリーダー体制がとられる可能性も高い。

 前回までの軍平は、支離滅裂なキャラクターとして各方面で話題になったが、今回である意味「大人しい」キャラクターになったのではないだろうか。冒頭、嬉々として逮捕術をレクチャーする姿は少々アブナい雰囲気を醸し出しているものの、ストーリーが本格的に動き出してからは、正統派の「スパイアクション」を展開していく。あえて特殊な装備を用いず、ロープを調達して(!)スコップバンキの掘った洞穴に潜入していく様子は、「宇宙刑事シリーズ」直撃世代にとって興奮必至の場面だ。このシーンにおける、自分の足だけが頼りだという軍平はかなりカッコいい。範人をリードしつつ、範人の能力を生かして局面を打開していく姿は、素直にヒロイックに映るものだ。なお、洞穴への潜入シーンでのロープを使ったアクションは、大部分を本人が演じており迫力があった。

 さて、範人と軍平に関しては割とシリアスな展開だが、走輔、連、早輝に関しては総じてコミカルな展開となっている。スコップバンキのコミカルなキャラクターに迎合するかのように、珍妙な変装を用いて事件を解決に導いていく姿は、スーパー戦隊シリーズの別の側面を踏襲したものだと言えるだろう(しかも、何の経験もない3人が宙返りキックを決めるというシーンが、昔ながらの戦隊らしくてイイ)。ネオトキオヒルズという場所に辿り着いたのも、この3人に関しては完全に強運以外の何物でもなく、地道に捜査して割り出した範人と軍平とは好対照だ。この、3人+2人構成を使ったストーリー構築は、ギャグすらも無駄にしない見事すぎる完成度を誇り、このようなシリアスとギャグが乖離するようなシチュエーションでも見事に融合させてしまっている。これには感服だ。

 違うやり方(軍平言うところの「ド素人」とそうでない者)でも、同時に同じ場所に辿り着いたという卓抜した時間と空間の妙は、その後のゴーオンレッドとゴーオンブラックの共同戦線に結実し、巨大戦での軍平による「経験を生かしたアドバイス」で勝利へと導かれる。「誤解を解く」「互いの利益になる」といったパターンよりも遥かに子供向けらしい清潔さがあり、またビジュアルで納得させられるのだ。ただし、範人と軍平には、まだパートナーとなるべき炎神が現れていない為、カタルシスという面では走輔達に完全に譲ってしまったのが惜しいところ。メインとなるべき2人に必殺技の機会を与えられていないという、戦隊史上稀に見る異常事態ではある。

 そして、初期数話ならではの巨大戦の充実。今回は大胆な実景との合成に見られた。ほんの数秒だが印象的な鳥瞰カット、スコップバンキが爆発する際のオーバースケール気味(恐らく狙っている)のカットなどが挙げられる。実際にアクションが行われたビル街のセットは、恒例のものが使われていたが、今回は空中にジャンプするなどのオープンアクションが挿入され、別の空間的広がりを感じさせるものとなった。ゴーオングランプリが炸裂する際のインサートカットは、巌流島のトリビアが出た直後だったからか、時代劇的な処理がなされ、異様なカッコ良さを放っていた。「炎神」が一方の主役である故に、やはり巨大戦の充実も「ゴーオンジャー」には欠かせない要素ということだろう。次回への引きとして、新たな炎神であるバルカとガンパードもチラッと登場している。

 ラスト、5人がスクラムから「チェッカーフラッグ!」とやるシーンは、どこかノスタルジックなイメージに彩られる。ここでは、既に軍平も他の4人と変わらない笑顔を見せており、早すぎる打ち解け振りに少々唖然とするが、それでもキャラクターそれぞれが各々のやり方で事件解決というゴールに辿り着いたということが、1本通してビジュアル主体で語られたことによる効果か、妙に納得させられたのは間違いない。この畳み掛けるような爽快感と迫力が、今後も続いていくことに期待したい。