GP-05「時々オカン!?」

 連はいつものように卵料理に精を出す。範人はそれを食べたそうにするものの、すぐに飛び出して行ってしまった。その様子を見て訝しむ走輔に、軍平は「どうせバイトが忙しいんだろうよ」と答える。走輔は範人がまだバイトをしていることに腹を立てた。

 範人はバイト先で鮮やかな手つきを披露しつつクレープを作り、女子高生にモテモテ状態だった。シフトチェンジャーから投影されるバルカも大人気だ。

 機嫌の悪い走輔に連は、範人なりにヒーローも仕事もちゃんと考えているはずだと言うが、軍平はそんな連に「お前は範人のオカンか」と半ば呆れ顔。

 その頃、ヨゴシュタインは、金属を何でも引き付けるという新たな害地目蛮機獣・ジシャクバンキを作り出し、街に送り出していた。それを察知したボンパーの報を聞き、走輔達は範人を欠いたまま出撃する。ジシャクバンキはゴーオンジャーのマンタンガンを吸着しようと試み、ゴーオンジャーは必死に抵抗。連は範人に連絡するが、範人は女子高生たちに囲まれつつのバイトに夢中になっており、連絡がつかない。だが、連の「逆転の発想」により、マンタンガンをロッドモードに変形させたゴーオンジャーは見事ジシャクバンキを何とか撃退する。

 その直後範人が現れるが、走輔は範人の態度に怒り「ゴーオンジャーを辞めてもいいんだぞ」と言い放つ。だが、範人は走輔の真意を汲むことなく嬉々としてバイトに走って行ってしまった。連は食いかかる走輔を止め、自分がちゃんと話してくると言う。

 連にバイトを続けている理由を問われた範人は、咄嗟に「皆に焼肉を食べてもらおうと思って」と答える。連はいたく感激し、走輔には自分が謝っておくと言ってギンジロー号に帰って行った。

 一方、ヘルガイユ宮殿に戻ってきたジシャクバンキは、その力を気に入ったヨゴシュタインによって更なるパワーアップを施されることとなった。

 連は走輔に焼肉の話をして喜ばせようとするが、走輔はまだ疑っていた。連は走輔の頑固さに腹を立てる。その上バスオンすらも、範人は遊び好きのバルカにそそのかされて遊んでいるのだと言う。バスオンは連に、範人が真面目にやっているかどうか見に行こうと言い出した。

 連が範人の様子を見に行くと、範人はアクロバティックにクレープを作り、ますます女子高生達を沸かせて楽しんでいた。連はその様子を見て怒るどころか自分も手伝うと言い出す。連の予想外の行動に、範人は心を揺らす。そこにボンパーの報が入った。連は範人にバイトを頑張るよう告げ、現場へと向かう。

 街ではパワーアップしたデンジシャクバンキが猛威を振るっていた。走輔、連、早輝はハイウェイバスターで一気に勝負をつけようとするが、デンジシャクバンキに吸着されてしまう。

 範人はその頃、連のことが気になってバイトどころではなくなってしまっていた。自分が嘘をついていることに気が咎めた範人は、遂に客である女子高生達の前で告白する。友達が一生懸命頑張っているから行かなければならない。その言葉に、女子高生達は「頑張れ範人! 頑張れゴーオンジャー!」と応援。正体がバレていた事を知り驚く範人。

 デンジシャクバンキの脅威の前に危機に陥ったゴーオンジャー。そこに範人が巨大な鉄球を吊り下げたクレーン車を駆って現れた。デンジシャクバンキは鉄球を吸着して自滅する。連に嘘を告白し、正直な心情を吐露する範人。謝る範人を走輔は快く迎える。5人揃ったゴーオンジャーは雄々しく名乗りをあげ、範人と軍平がジャンクションライフルを放ってデンジシャクバンキを下した。

 だが、デンジシャクバンキは巨大化して反撃。エンジンオーのゴーオンソードを奪ってピンチに叩き込む。しかし、バルカの提案した炎神武装により、エンジンオーバルカが誕生。見事デンジシャクバンキを粉砕した。

 焼肉を楽しみにしていた走輔だったが、結局バイトをすっぽかす格好となった範人に、バイト代は支払われなかった...。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 バスオン!

今回の連トリビア

 「幕末のヒーロー・坂本竜馬も、日本発の株式会社を作ってアルバイトしてたっす」

監督・脚本
監督
竹本昇
脚本
武上純希
解説

 範人+連編で、ジャンクションライフル、エンジンオーバルカ登場エピソード。前回では軍平が走輔とのリレーションシップを確立したが、今回は範人がそれを確立することとなる。ここで気づくのは、ゴーオンジャーの輪に入るということが、そのまま走輔に認められるということに置換可能だということだ。つまり、走輔は単に運が良くて猪突猛進型というキャラクターではなく、ゴーオンジャーのリーダーとしての存在感を「それとなく」示しているのである。これはなかなか新しい感覚で、ある種サークル的感覚を有した戦隊チームだと言えよう。

 さて、ストーリーの主体に置かれているのは範人である。範人は単なるお調子者として描かれてきたが、今回キャラクターが掘り下げられてもやはりお調子者だった。ただし、楽しいことを素直に楽しめる性格や、良心の呵責に耐えかねる様子などに少年っぽい姿を強調しており、全体的に(車関係の戦隊故の措置だろうか)意外と大人っぽいゴーオンジャーの中にあって、真に「年下感」を感じさせるキャラクターだ。パートナーのバルカも恐ろしくお調子者で、範人とは正にベストコンビ。ゴーオンジャーそれぞれに似た性格のパートナーを置くことで、性格の相違による相克を無くし、そこに面倒なドラマを作らないよう配慮しているようだ。

 範人のお調子者以外の掘り下げられた面はあるだろうか。その答えは「ある」だ。軍平がかつて範人を「器用な奴だ」と評したが、それである。

 今回の範人は、クレープ屋でアルバイトしている。だが、そのテクニックや人身掌握術、アクロバティックなパフォーマンスを駆使した営業のウマさは、どれをとってもアルバイトの範疇を超えたものである。さしずめカリスマ店員といった趣だ。また、走輔達のピンチに現れた際は鉄球を吊り上げたクレーンを巧みに操っており、単なる器用者とは片付けられないポテンシャルを表現している。これほど器用さを前面に押し出したキャラクターは、特撮TVドラマ史上でも珍しい。むしろ不器用さを強調して変身後のカッコ良さとのギャップを狙う方が効果的だからだ。そこへ行くと範人の場合、器用さが鼻につくこともなく、その太平楽な性格に中和されて爽やかなキャラクターに仕上がっている点が秀逸である。

 もう一人のメインは連。連に関しては薀蓄王というキャラクターを成立させてきたが、ここでもう一つの面をプラスされる。それは他人を微塵の疑問も持たず信用する愚直さだ。「~っす」という語尾に示されるように、連の人の良さはこれまでも垣間見られたが、今回それが極端に強調されることとなった。しかもそれは、コミカルな味を生み出すものとして方向付けられている。最初の範人の嘘(焼肉を皆に食べてもらうためにバイトをしているという内容)は、連でなくとも少しお人好しの人間であれば疑わなくても不思議は無い。だが連は、範人が「汗と涙を流して」バイトをしているという感覚から大幅に乖離した姿を見せた際でも、一生懸命やっていると解釈して手伝い始めてしまうのだ。ここでバスオンのツッコミを待たずとも視聴者は笑いを誘われるのだが、このシーンには些か問題がある。範人がなまじ器用なだけに、単にふざけているように見えず、むしろ営業努力をしているように見えてしまうのだ。あれだけ繁盛していれば忙しそうに見えるし、連が手伝おうと思ったのも無理はない。とりあえず、その後の連のひたむきな姿に打たれる範人の心情描写が秀逸な為、そのあたりの欠点は払拭されたと見るべきか。「オカン」という語がタイトルにあるが、母のひたむきで前向きな姿に子供が何かを感じるという、少年ドラマのパターンも踏襲されているようだ。

 その後の範人の合流シーンは爽やかな味付けがなされている。結局ずっと能天気だったバルカをよそに、良心が咎めた範人は、女子高生たちの前でバイトを中断することを告白するのである。その直後、範人は大きな応援の渦の中に。これにはいい意味で裏切られた。話の流れからして、範人が彼女達の不満の渦中にさらされる予想も充分成り立つからだ。このシーンはゴーオンジャーの主たる路線と思われる明瞭快活、楽観的視野を見事に象徴したシーンとして印象に残る。その後、範人は鉄球を吊り下げたクレーン車に乗って現れ、ゴーオンジャーに合流する。ここでのスーツアクター諸氏の演技が実に楽しく、変身前とのキャラクター統一が高水準で達成されていることが分かる。特に走輔=ゴーオンレッドの微妙な心情を表す動作は完璧で、そっぽを向き、フンと悪態をついて睨み(マスクで顔が見えないにも関わらず分かる!)、最終的には頭を下げ続ける範人を受け入れる。走輔には初めから範人をゴーオンジャーだと認めている節が感じられる点も二重丸。実に見ていて爽快なヒーロー像だ。

 範人合流後に、名乗りをわざわざ、しかもこれ見よがしに披露するという点で、王道路線を歩む姿勢を見せつつも、実はパロディ精神に溢れていることに気づかねばならない。スーパー戦隊シリーズにおける名乗りは、白浪五人男をオリジンとしており、最も盛り上がる場面にて意図的に挿入されるものである。それはいわゆる「お約束」であり、ゴーオンジャーのように「やろう」と言って行うものではない。ゴーオンジャーのそれは「お約束」を逆手にとって、それをパロディ精神でとらえるという手法である。盛大なパロディに溢れた「激走戦隊カーレンジャー」ですら、名乗りに関してはごく自然な「お約束」として処理されており、本人たちはごく真面目にやっていた印象がある。この措置が受け入れられるかどうかはまだ議論の余地があるが、私としてはゴーオンジャーの雰囲気に合致していると思う。今回は特殊効果がさらに派手になり(バンク化?)、その迫力が上昇。「科学戦隊ダイナマン」~「電撃戦隊チェンジマン」に至る名乗りシーンの進化をパロディ感覚で処理しているようにも見える。

 他にも、ギンジロー号においては卵が豊富に用意されているらしいということや、軍平が肉にこだわっているところなど、コミカルな要素は尽きない。また、ジシャクバンキがデンジシャクバンキにパワーアップし、「デンジシャクグランプリ」を披露するなど、ここでもパロディ精神旺盛な様が見える。蛮機獣にはこれからも注目だ。

 なお、今回はバスオンがナレーションを担当。これでスピードルがナレーションを独占しているわけではないことが分かった。恐らく、メインキャラクターのパートナーである炎神が務めていくものと思われる。これもまた、ストーリーを盛り上げる役割を大いに果たすに違いない。