GP-36「走輔...トワニ」

 走輔が、死んだ...!?

 絶望し消沈する一同。憎きはヨゴシュタインだ。そのヨゴシュタインはホロンデルタールのパワーを得て街で破壊の限りを尽くしていた。連達は怒りに任せ、ヨゴシュタインを迎え撃つ。しかし、やはり個々人の怒りに任せた攻撃はバラバラで精彩を欠き、ヨゴシュタインに攻撃を当てることすら叶わない。ケガレシアとキタネイダスが加勢に入るが、ヨゴシュタインは拒否しあくまで単独でゴーオンジャー達を殲滅せんとする。その自信の程は、連達からチェンジソウルを奪ってしまうという戦果にて示された。

 変身能力を失い、完全に戦意を喪失したゴーオンジャーとゴーオンウイングス。その間にも、ヨゴシュタインは「害地目最終作戦」として、ゼンマイネジ乱射によるヒューマンワールドのブロンズ化に勤しんでいた。炎神達の間では、人間をパートナーにしたことを疑問視する声も上がり始める。だが、スピードルは断固として走輔が相棒で良かったと言う。走輔をこの世で最高の相棒だったと評するスピードルの言葉に、連達は走輔の姿を思い出した。そして、自分たちがバラバラで気持ちばかり焦った最低の戦いを展開してしまったことを反省する。ここに「正義の味方」は蘇った。変身できなくても、ゴーオンジャーなのだ!

 猛威を振るうヨゴシュタインの前に、生身のゴーオンジャーとゴーオンウイングスが立ちはだかる。やはり戦いは圧倒的に不利であった。しかし、ヨゴシュタインの力を前にしても、正義の味方は挫けない。その叫びは、死の世界へと歩きつつある走輔にも届き、その歩みを止めさせた。連達の戦いはこれまでにない苦闘となるが、範人、軍平、大翔の息を合わせたチェーン攻撃により、ヨゴシュタインの槍を奪うことに成功。その槍を、連、早輝、美羽が渾身の力を込めてヨゴシュタインの胸に突き刺した。一瞬動きを止めたヨゴシュタインだったが、すぐに怒りを爆発させて巨大化を果たす。

 ホロンデルタールを超えると宣言したヨゴシュタインは、周囲一帯をことごとくブロンズ化し始めた。連は危険を承知の上で、スーツなしのまま炎神に搭乗して戦うことを決意。炎神達は一斉に攻撃を開始するが、スーツのない連達に直接衝撃が伝わり非常に苦しい戦いを強いられる。しかし、6人の意志は一つであった。

「走輔がいなくても、走輔と同じ戦いを、俺たちは、私たちは、戦い続ける!」

 その叫びを聞いたか聞かずか、走輔は死の世界への入口の直前で踏みとどまった。しかし、死への扉は容赦なく走輔を飲み込もうする。

 一方、攻撃の手を休めない連達は気付いた。ヨゴシュタインの胸に付けた傷から、チェンジソウルが覗いていることに。スピードルがヨゴシュタインに食らい付いた隙に、ヨゴシュタインの内部に突入する連達。それに同調するように、走輔も熱い叫びをあげて死の淵から脱しようとしていた。

 チェンジソウルを取り戻したゴーオンジャー6人は変身を果たす。そして、エンジンオーG12を完成させた。エンジンオーG12はすぐさまG12グランプリを繰り出し、ヨゴシュタインに炸裂させる。ヨゴシュタインは多大なダメージを被り、等身大に戻った。感激と走輔への哀悼が入り混じった、複雑な余韻に浸るゴーオンジャーであったが、ボンパーの緊急連絡は「走輔が消えちゃったよ~!」という驚くべきものであった。

 密かに次の勝利を誓うヨゴシュタインの前に現れたのは、蘇った走輔! 「いや、お前にもう次はねぇ!」と宣言する走輔は変身し、ヨゴシュタインに向かっていく。ヨゴシュタインのあらゆる攻撃をものともせず、走輔はロードサーベルの一撃を加えた。次の瞬間、メットは脱げ、走輔は地に膝をつく。だが、ヨゴシュタインは爆発四散。勝負の軍配は、走輔に上がった!

 走輔に駆け寄る連達。走輔も皆への感謝の言葉を口にした。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 バスオン!

監督・脚本
監督
鈴村展弘
脚本
宮下隼一
解説

 「ゴーオンジャー」史上、最も熱さに溢れた名編。しかしながら、走輔は一体どうなってしまうのかというインパクトより、ヨゴシュタインが倒されるというインパクトの方が大きいという、「ゴーオンジャー」らしい面が改めて露呈したエピソードでもある。

 いつもながら、些細なツッコミは沢山用意できる。例えば、ヨゴシュタインが街の人々に手当たり次第ゼンマイネジを発射し、景色までブロンズ化しておきながら、何故連達には使わなかったのか。また、巨大化したヨゴシュタインを倒して街の人々が戻ったのに、皆は何故走輔がまだ死んでいると考えていたのか。そして、チェンジソウルは別途製造可能ではなかったのか、など。

 しかし、完成作品を見るとそれらはワザと用意された「アラ」であったように思う。例としては適切ではないかも知れないが、「ドラえもん」でよく見られる、道具Aを使えば解決する問題を、わざわざ道具Bで苦労して解決するという趣向に似ている(「ドラえもん」のこの点を批判しているわけではない。私は「ドラえもん」を手放しで愛している。念の為)。つまり、以前に描かれた要素をワザと蚊帳の外に置いて、話の盛り上がりを優先させるというものだ。前述の各ツッコミをそういう視点で見ると、以下のようになる。一つ、ゼンマイネジを使って連達を行動不能にしていくよりは、チェンジソウルを奪って変身不能にした方が、素面でのアクションが描写できてより盛り上がる。そもそも、ヨゴシュタインはゼンマイネジを使わずとも彼らを倒す自信がある。一つ、走輔が死んだものとして心情描写していく方が、巨大ヨゴシュタインを倒した際の達成感により感情移入できる。一つ、チェンジソウルを新たに作って解決するより、生身で炎神に乗り込む方が、個々の苦悶の表情を捉えられ、より熱いドラマを展開できる。いかがだろうか、どれもこれも盛り上がりや熱さが優先された結果だ。そして、それらの「アラ」は本エピソードのパワーに掻き消されてしまっているのだ。これをどう受け取るかは我々次第なのだが、辻褄が合わないことに違和感を覚えるのも当たり前だし、そんなこと気にしないというのも、ある意味当たり前だ。ただ、今回に限っては些細なことを気にしない方が絶対に楽しめる、と断言出来そうだ(とりあえず、ツッコミを楽しむという、別の視聴法もあることを付け加えておく)。

 もう一つ、事前に指摘しておくべき事項がある。それはヨゴシュタインの扱いだ。

 今回、ヨゴシュタインは倒されてしまい、事実上の退場となるのだが──「退場」の根拠は、テレビ朝日の公式サイトにて、「蛮機獣」の項目に掲載されていることによる──その為に周到な準備がされていたと見受けられるのである。その契機は結果論から言えばヒラメキメデスなのだが、私はその説は採らない。何故なら、ヒラメキメデス亡き後「自分探しの旅」から戻ってきたヨゴシュタインは少し過激派に傾いたものの、その後仲間の良さを再確認したり三大臣と仲良く歌ったりしていたからだ。直接の契機は、やはりホロンデルタールであろう。本エピソードから2~3話前というタイミング、ホロンデルタールというボス級のキャラクターといった数々の要素からして、ヨゴシュタインの豹変は短いスパンで準備されたものだと推測出来る。

 ヨゴシュタインを「殺す」には、視聴者の感情移入を拒むというプロセスが必要だった。ヨゴシュタインは倒されることにより同情を買うようなキャラクターではなく、そもそも「ゴーオンジャー」というシリーズ自体がそういった展開でホロリとさせるような要素を拒否しているように思う。従って、ヨゴシュタインは純粋なる破壊者となり、ヒーローの絶対的な敵対者となり、そしてケガレシアやキタネイダスを裏切らなければならなかったのである。象徴的なのは、ケガレシアやキタネイダスに、ヨゴシュタインを「嫌」だと言わせている点だ。考えてみれば、ガイアークは街のビル群を派手に破壊したりと悪事の限りを尽くしているのだが、それでも何となくほのぼのとマイペースにヒューマンワールド侵略に勤しんでいるという印象があった。ホロンデルタール出現以降のヨゴシュタインは、破壊の権化に心酔し、とうとう自らがそれに成り代わることで、「ガイアークの雰囲気」とも呼べるある種の共同体を裏切ってみせた。それにより、あらゆる方面からの同情の余地を奪い(それでも以前のヨゴシュタインに思いを馳せる時、少し同情に似た感情を抱くことにはなるのだが)、典型的な悪の一幹部として滅び去る運命に置かれたのだ。

 さて、長い前置きはこのくらいにして、全編これ見所といった今回。文面ではとても魅力を伝えられそうにないが、一応頑張って見所中の見所をピックアップしてみたい。

 まずは、ギンジロー号内に安置されたブロンズ化走輔を囲み、それぞれの表情で悲しみ或いは悔しがるシーン。思い思いの表情に見応え有りだ。この時点で皆冷静さを失っており、「効果があるかどうか分からないが、とにかく何でもやってみる」という、これまでのゴーオンジャーのやり方を思い出すべくもないという雰囲気作りが巧い。とにかく何でもやってみるという姿勢があれば、走輔からゼンマイネジを摘出するといった荒技も可能だったかも知れない。しかし、その姿勢は走輔の死(ということにしておく)を目の当たりにしては、発想すらされない幻想に帰してしまうのである。実は「とにかく何でもやってみる」という方向性は走輔が担っていたものであり、いつもその陣頭指揮をとっていた連は、走輔の方向性に思いがけず追随していただけだということが暴露されたのだ(その連が後半指揮を採る姿に、感涙を禁じえない)。

 一方で、大翔はサンドバッグを破ってしまい、美羽は険しい表情で一点を見つめているといった、普段は冷静なゴーオンウイングスの取り乱しようを美しく描いたシーンが見られる。前回、美羽は何となく意中にある走輔を失って絶望に打ちひしがれた様子であったが、今回は意外に気丈だ。また、予告でチョイスされた落涙のシーンは、走輔の死を悲しんでのことではなく、ヨゴシュタインにまるで歯が立たなかったことへの絶望感によるものであった。表面だけ眺めていると、この時点で美羽はそれほど走輔に入れ込んでいないようにも見受けられる。この、心中を色々と想像させる作劇は「ゴーオンジャー」においては異質であり、走輔と美羽の特殊な間柄を垣間見せている。

 続いては、怒りに任せてヨゴシュタインを一斉攻撃するというシーン。こういったアクションシーンが一番難しいのだが、非常に良く出来ている。試しに音声を消して見て頂きたい。個々人が脈絡なくバラバラに攻撃を繰り出し、それぞれの攻撃が全て徒労に終わっているのが分かるだろう。たまにはアクションシーンの製作事情まで思いをめぐらせてみるのもいい。というのも、一見こんなメチャクチャなシーンであっても、ちゃんとした段取りとシーンの組み立てがあってこそ成立するものだからだ。このシーンに段取りがあるとはにわかに思えないというクォリティ、これが長きにわたるスーパー戦隊シリーズが蓄積してきたノウハウの凄さだ。直後の、チェンジソウルを奪われて叩きのめされていくシーンの凄惨さも抜群。正に「敗走」となったボンパーとキシャモスによる救出も秀逸だ。

 本エピソードの本領はここから。まず、スピードルの「走輔が相棒で良かった」という一言で、全員が走輔のヒーロー性を確認するというくだりがある。ここで宣言される走輔のヒーロー性は、私がしつこく指摘してきた走輔のヒーロー性と合致する。つまり、後先考えずに直感的に行動した結果が、正義のヒーローの行動に相応しい結果に落ち着いて行くことや、あらゆる危機的局面を打開するパワーに昇華されていくということだ。「ゴーオンジャー」世界内でもそれが共通認識として共有されたことは素直に喜ばしい。ここでそれぞれが走輔に対して抱く思いを列挙してみよう。

 連「ほんと、凄かったっすね、走輔って」

 早輝「いつも挫けず突っ走って、みんなを笑顔にしてくれた」

 範人「いつも僕らをドキドキと愉快にしてくれた」

 美羽「バカなことしてても、何かキラキラしてて」

 大翔「俺の知らない強さを持っていて」

 軍平「あいつは、最高のヒーローだった」

 走輔のヒーロー性を確認した後は、いよいよ筋肉痛になりながらキャスト陣が頑張った(公式サイトより)という、素面アクションシーンに移る。戦地に赴く姿には、日用品などを携えるというギャグが織り込まれ、いつもの「ゴーオンジャー」らしい感覚になっている。つまり、前述の「とにかく何でもやってみる」をここで思い出したということを、ビジュアルで示して見せているのだ。その日用品が殆ど役に立たない所には笑いが生まれているが、当人達は真剣そのもの。これは素面でのアクションという緊張感や懸命さが、そのまま画面から表出することで生まれる躍動感だ。

 また、生身のまま炎神に搭乗することの危険さもよく表現されている。アクロバティックな炎神のアクションにより、コクピット内に凄まじい衝撃がかかることが描かれ、ゴーオンスーツにショック低減機能があることをも理解できる。等身大戦にてヨゴシュタイン自らの槍でもたらされた胸部の傷が、巨大化によって人の侵入できる大きさにまで広がり、ゴーオンジャーはそこへ飛び込んでチェンジソウルを取り戻すという、とにかく持てる能力全てを生かして戦う感覚も秀逸で、スーパー戦隊シリーズならではのチームワークとライヴアクション感覚が見事に生かされていた。

 チェンジソウルを取り戻した後は、エンジンオーG12での猛攻。前回に引き続き、あの超重量級のスーツでヨゴシュタインを圧倒する様がカタルシスを生む。連が2丁のハンドルブラスターを構えるのも熱い。この巨大戦で敗れたヨゴシュタインが等身大に戻る様子を見て、まだ生き延びるのではと漠然と、かつ単純に思った方は多いのではないだろうか。かく言う私もその一人である。

 しかし、その後衝撃のシーンが待っていた。走輔は死の淵より、非常に走輔らしい勢いと共に舞い戻った。仲間の涙をよそに蘇っていた走輔は、ヨゴシュタインの前に現れ、1対1の勝負を挑むのである。この時はヨゴシュタインも相当なダメージを負っているが、走輔も死の淵から蘇ったばかりで万全ではないと思われる。つまり、互いのハンディキャップはほぼないものとして扱われる。走輔が蘇ったことを知り、逸る面々を大翔が止め、対決が始まる。この空気感は絶妙だ。そして、時代劇あるいは西部劇の定番である、相討ちと思わせておいて敵が倒れる(この時走輔のマスクが取れる描写がいい)というカット。実際、この対決はかなり駆け足で描写されている為に重厚感には欠けるものの、各カットの絵的なカッコ良さが充実している故に、満足度は高い。走輔のヒーロー性も非常に際立っている。

 なお、今回エンディングが7人バージョンになった。しかも巨大ロボまで踊っている。劇中、大翔と美羽を含めて「炎神戦隊ゴーオンジャー」と名乗っており(走輔はいなかったが)、ようやく一つの戦隊となったというところか。エンディングのダンスには大翔と美羽のダンスシーンが巧く追加され、二人のファンには満足度の高いものとなっている。ということはつまり、大翔と美羽がニコニコしながら踊るというエンディングを作ることが、ここに来てようやく許されたということでもある。ゴーオンウイングスは、遂に名実共にゴーオンジャーの一員となったのだ。