epic37 「エキサイト・モネ」

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 モネがメインの回は、実はあんまり印象に残らない回も多いような気がしますが、今回は別。はっきり「ヒロインをフィーチュアして遊ぶ」というコンセプトが現れており、その華やかさだけでも一見の価値ありです。

 ほぼ戦隊の「ユニフォーム制」が定着してから、普段着になるだけでも「オッ」と思わせる効果があるのですが、今回は割と七変化に近いコスプレ回としても成立。といっても、七変化モノの定番である「敵を翻弄する」パターンは一切踏襲されず、単に天知天文研究所内だけでのコスプレであり、その意味では異色でしょう。

 コスプレ自体もさることながら、望や周囲の小道具まで凝って用意されているのには笑えます。完全にギャグ編としての要素を導入しているわけです。ここは、はっきりナンセンス・コメディとして楽しむべきですね。

 こんな感じで、モネ回として十分な魅力を持ったエピソードなのですが、話の作り自体は結構雑。

 最初にマトリンティスが出現してモネにブレスレットを渡す際、データスが反応をキャッチ出来なかったのは、メンテナンス中だったという理由付けに感心し、ゴセイナイトが何事にも動じない精神の持ち主である事を自然に描写するシーンに感激しつつも、肝心のモネが何故達観に至ったのかが、と~っても不明瞭に見えてしまうのです。

 その辺りの詳細も含めて、続きの方で。

 今回のマトロイドは、バイタルのアドボルテG(アドボルテジー)。

 デザインにはサンゴのモチーフが大胆に取り入れられており、元来美しい筈のサンゴの形状が禍々しさを際立てています。多数の砲塔に見立てているのもいい感じです。

 前回はスペックをスキャンするマトロイドが登場しましたが、今回のアドボルテGも同様に分析型。ただし、分析には「バイタルメーター」なるブレスレットを用い、本人は多数の砲弾を射出する、戦力型になっています。

 この「バイタルメーター」は着用者の怒りの度合いを測定し、一定度数を超えると石灰化ガスを噴出、着用している人間を石灰化してしまうという代物。

 これを人類に装着させる事で、石灰化に対する恐怖による統制を達成し、なおかつ、怒りによる反乱行動を封じる狙いがあります。理屈としては素晴らしい完成度だと思いますが、どこに人類全体に行き渡らせるだけのパフォーマンスがあるのかは、謎(笑)。

 まぁ、これは今に始まった話ではなく、大抵の「全人類を○○するのだ」という高尚な目的は、物凄く地道な努力がなければ達成出来ません。だからこそ、一つの街で完結出来るドラマを成立される事が可能になるわけで、それはもう最初の「仮面ライダー」からずっと普遍的な事なのです。

 いくつかのドラマでは、この普遍性に疑問を投げかけるようなテイストを盛り込んだりして、実験的な作風になっていたりしますが、気軽に見られる作品は殆ど成立していないと思います。

 そう、気軽に。「ゴセイジャー」はその辺りを念頭に置いて見るシリーズなんですよね。

 さて、そのバイタルメーターをモネがつけてしまったから、さあ大変…というのが、今回のお話。本当に基本はそれだけで、後はシチュエーションの上でキャラクター達がどう踊ったかを見ることが出来ます。シンプルなお題に巧く味付けされていると、物語の旨味が高くなるという見本ですね。

 モネはかなり勢いのあるキャラクターなので、今回「退屈が嫌い」という事にされています。確かに、身体を動かしていないと気持ち悪いといった感じは、ランディック族の特徴っぽいですが、やや唐突な感がありますね。それに、モネってこんなに怒りっぽかったかなぁ?というのも正直な処。確かにエリやアグリに対しては、結構大きな声を出している印象はありますが。

 いずれにせよ、落ち着きがなくて怒りっぽいヒロインというのを確立すれば、結構珍しいタイプだと思います。

 今回のメインは、そのモネが怒りの感情を喚起しないよう、落ち着く所作を色々試すという部分です。

 瞑想したり、生花をやったり、侘寂に静寂を求める辺りは、なかなか素晴らしい。「ゴセイジャー」には、あらゆる洋風テイストが織り交ぜられているので、こうした和のテイストが入ってくると、ちょっとした違和感と共に鮮烈な印象を与えられます。それぞれのコスプレも良く似合ってます。

 今回は望も傍観者ではなく、積極的にモネのコスプレに付き合っており、傍目にはモネより年上のように見えます。常々モネの年齢問題には言及してきましたが、最近はとても良好なキャラクター作りが為されていると思いますね。望より精神年齢が年下に見えてしまうのは、それはそれで問題かも知れませんが(笑)。

 結局、モネは数々の「静かな所作」には耐えきれず、今にも戦闘の場へと飛び出していこうとするのですが、そこに現れたのが天知博士。町内会程度の規模だと思いますが、大喜利に出演するとの事で、準備していたネタを披露します。

 このネタ、天文学者と刑事が共に「ホシ」を追っているという謎掛けで、私は結構ウマいと思ったのですが、劇中では寒いネタとされています。ここで私はちょい脱落(笑)。私の感性にも問題があるかも知れませんけど、この辺りの「共感できるか否か」は非常に大事です。思うに、もっと寒い方へ振り切らないと、視聴者の共感は保証されないのではないでしょうか。

 で、(ごく私的に)百歩譲って、これが寒風吹き荒ぶような寒いネタだったとして、モネが茫然となり、無の境地を「つかんだかも」なシーンはよいでしょう。可愛いし(笑)。

 しかし、その達観が、何で「何事にも動じませんですわ」になるのかが分からない。

 無心で流麗に相手の攻撃を受け流し、無心で反撃に転ずるという、いかにも和的テイストに溢れたアクションは満点を付けられるのですが、モネの口調が「鹿鳴館香」になってしまうのは、どうにも説得力に欠けるきらいがありました。

 この口調に違和感を感じるのが、今回最大の問題点でしょう。変身後である以上、達観を口調で表現する必要があったのは認めますが、口調に問題があった分、何故、天知博士の寒いネタで、モネが無心の境地を得たかという部分にまで、疑問符がついてしまったのは残念です。

 その後、モネは本来のモネに戻り、文字通り勢いに任せて敵を粉砕するのですが、この流れは非常に良かったと思います。あくまで達観は一過性のものだったという処理が巧いですね。

 それにしても、今回のモネはやたらアップのカットが多い。執拗なまでに寄っているカットも多々。みっきーはシャープな顔立ちなので、こういったアップが映えるという判断でしょうか。若いっていいですね(笑)。