epic5 「マジカル・ハイド」

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 ハイド&アグリ編。サブタイトルにあるように、ハイドがメインですが、ハイドと最もウマが合わないと「されていた」アグリと組ませることにより、二人のキャラクターを浮き彫りにしています。

 今のところ、「ゴセイジャー」は二人のメインキャラクターをフィーチュアする方針になっているようです。

 そして、さすがは荒川脚本。考えさせられるようなエスプリや毒はないものの、キャラクターの動かし方や立て方は天下一品ですね。

 ハイドはそれほど面白味のないキャラクター設定なのですが、クソマジメで細かすぎるというクローズアップの手法をとることで、そのコミカルな部分を強調。しっかりキャラを立たせています。

 今回登場するウォースターの刺客は、バグンテス星人・流感のウチュセルゾー。「宇宙戦争」と「伝染せるぞ~」から成る、なかなか秀逸なネーミングです。

 声は大ベテランの中尾隆聖さん!何故か「おそ松くん」のイヤミに似た口調でしたが、ウィルス感染を流行させるというエグい作戦の割にコミカルな印象を残すのは、多分に中尾さんの声と演技に依る処が大きいでしょう。

 そのウチュセルゾーが、「天才風邪」なる病気を蔓延させるというのが、今回のウォースターの作戦。しかも、「天才化」は単なる初期症状であり、真の症状は「ビービ化」というものです。

 この「子供を戦闘員化する」作戦は、結構頻繁に登場するネタなのですが、今回は「ウィルスに感染」という結構タイムリーな話題と、「子供の成績が良くなるならリスクは厭わない」という風潮が、時事的な側面を持っています。ただ、後者はあんまりエスプリとして効いていない感じで、子供がビービ化する(子供から、大人がピッチリとしたスーツを着た状態に変化する)という、ちょっと気味の悪い感覚の方が強調されているようです。

 さて、対するゴセイジャーは、巧みなシチュエーションの使い方により、見事にハイドとアグリのペアを、他のメンバーから分断しています。

 冒頭、買い物当番が、ジャンケンによってハイドとアグリに決定。ここでは、「ジャンケンなんて下らん」といった表情のハイドが巻き込まれるという形により、まず笑いを誘います。そして、エリの超適当な買い物メモに苛立つアグリ、アグリの割と行き当たりばったりな買い物、そんなアグリに慎重すぎる買い物を強いるハイドと、「買い物」というキーワードだけでそれぞれのキャラクター性を際立たせ、笑いを付加しているのが見事です。

 その後、買い物に出かけたハイドとアグリだけがウチュセルゾーと交戦したところで、二人の戦闘スタイルの差異を遺憾なく描写。ここで、敷島蓮子なるキャラクターと邂逅させます。ここまで全く無駄がなく、いいテンポです。

 この蓮子というキャラクターは、ウィルス研究における第一人者という設定で、しかも息子が天才風邪に感染しています。被害者として、そして解決者として積極的に事件に関わらせ、それをヒーローがサポートするという、割と珍しい構成であり、敵を倒して勝手に治るという予定調和を避けたあたりは、かなり評価出来るのではないでしょうか。

 続いて、ハイドとアグリがウチュセルゾー対策に奔走する間、アラタ達は望の学校に赴き、天才風邪でビービ化した子供達を相手に奮闘します。ここでも無理なく分断させることが出来ています。

 こんな風に、ストーリーのメインを張るキャラクター以外を徹底的に舞台袖へと追い遣りつつ、一応の存在感を感じさせるという作劇は、結構バランス感覚を要求させる作業だと思いますが、今回は非常に上手くまとまっていると思います。

 解決に至る流れは、ハイドが「カモミラージュ」の天装術で蓮子に変身し、ウチュセルゾーを誘き出すという作戦が図に当たり、まんまとウチュセルゾーの体液を採取。蓮子はそれによって天才風邪の特効薬を完成させるというもの。この流れが非常に小気味良く、また理にかなっており、さすがハイドと唸らせるのに充分な説得力を備えています。今回はツッコミどころが殆どありませんねぇ。

 この、クライマックス戦では、ハイドのタクティカルな戦い方と、アグリのパワーファイター振りが遺憾なく描写されつつも、ハイドの繊細かつ大胆な戦いぶりにアグリが感心し、アグリの持つランディックアックスの重さにハイドが驚くといった見えざる交感を経て、互いの実力を認め合うという流れが見られます。ハイドとアグリを組ませるシチュエーションが、ここでしっかり実を結ぶという筋運びは、実にイイ感じです。

 特に、ランディックアックスの重さの描写は、ゴセイブルーの「演技」にその殆どを依存しているわけで、実に素晴らしいものだったと言えるでしょう。

 ただ、今回には、やや「やっつけ仕事」なシーンがあります。

 それは、巨大戦。シーイックブラザーなる、ソーシャークヘッダー、ハンマーシャークヘッダー、マンタヘッダーの3大ヘッダーの登場です。

 一応、冒頭にその存在を匂わせるマスターヘッドの言葉があり、ハイドが戦いにおいて諦めない姿勢を見せるというフックはあるのですが、どうにも唐突でストーリーにあまり関わっていません。

 ただ、シーイックゴセイグレートのフォルムは海賊船長を意識した出で立ちで新鮮でした。敵を分析する機能もハイドらしく、キャラクターとしての完成度は高いと思います。実際は、頭部と腕部が変わっただけなのですが、これだけ印象が変わるのを見せられると、ヘッダーシステムの効率の良さが分かります。

 早速今年もミニプラが欲しくなってしまいましたが…今年はハマりたくないので、じっと我慢しているところです。

 この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.2 [DVD]に収録。