epic6 「ブレイクアウト・ゴセイジャー」

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 はっきり、アラタ編。これまで、二人一組でコンビを組ませ、各々の流儀の違い等によってキャラクターを浮き彫りにするというスタイルをとってきましたが、それが定番という訳ではなく、ストーリーを回転させる為の方便だったという事です。

 敢えていうなら、望との「逆上がり」というキーワードを用いた交流があり、アラタと望が二人一組と言うことも出来ますが、精神性以外での部分では、アラタと望は活動フィールドが完全に異なっている為、厳密にはコンビとは言えないでしょう。

 前述の「逆上がり」というテーマとは別に、アラタの成長譚の序章という意味合いも込められており、デレプタとの再戦というイベントが用意されています。このデレプタ、アラタ渾身の一撃も余裕で受け止める程の強さで描かれており、基本的に「星人」で括られているウォースターの中で、格の違いを見せつけました。

 あと、これまた唐突にランディックブラザーなる3体の新ヘッダーが登場。クワガヘッダー、サイヘッダー、ティラノヘッダーの、陸上生物関係でありつつも、実に統一感の薄い3体(笑)。純粋にランディックゴセイグレートのシルエットから逆算されたような感じですね。

 今回のウォースターの刺客は、イラブンゴラ星人・韋駄天のヒドウ。高木渉さんの登板ということで、アドリブも全開…なのか?

 登場からいきなり「快傑ズバット」の口上を真似してましたが、これが荒川さんの趣味なのか、高木さんの趣味なのか(いや、ポーズも真似してたから、荒川さんの趣味でしょう)。いずれにせよ、真のターゲットが理解する範疇を軽~く超えてしまっているのは確かですねぇ。

 このヒドウの超高速攻撃に対抗するというのが、今回の骨子。スカイック族らしく、視覚に頼らず音でヒドウの動きを予測するアラタの姿を見て、他の4人が特訓によりアラタと同じ戦法を身につけるという流れになっています。

 この特訓のシーン、アラタと同じスカイック族のエリが、天装術によってターゲットとなる竜巻を出し、それを、目隠しした一同が撃つというもの。エリはさすがにスカイック族だけあって、すぐに風の音による位置把握を遂げます。その後、他の面々も次々にマスターしていくのですが、ランディック族の二人はかなり苦戦した後にようやくマスターするという描き分けがなされていて、キャラクター特性の差別化がよく出来ている印象です。

 一方、アラタはepic1にてデレプタによってつけられた腕の傷が痛み出すというハプニングに見舞われます。何で今頃?と思いましたが、ヒーリング系の天装術によって傷の痛みを抑制していたことが説明され、なるほどと納得。このあたりは抜かりがありません。

 この傷の痛みが、二方向に効いてきます。

 一つは、逆上がりが出来ない望を励ます為に、アラタが逆上がりをして見せようとするも、痛みに阻まれて出来ないというシチュエーション。

 もう一つは、デレプタとの再戦への「物語的きっかけ」として。

 これらが、アラタの「逆上がり成就」により、デレプタを退ける一手になるという展開に収斂していくあたりが、なかなか見事。美しいストーリー運びだと思います。

 そして、このアラタ VS デレプタの一線が、戦隊らしくない重厚なアクション演出になっていて、むしろ最近のライダーシリーズを思わせる感覚になっていました。これはゴセイレッドのヒーローとしての存在感を、最大限に発揮させるに充分であり、その後のシーンでアラタの変身が解除され、巨大戦でのコクピットにアラタ一人だけ素面で座っているという、珍しい構図への流れを自然なものにしています。

 そんなアラタの姿勢を、望もデータスを通じて中継で見ており、望が勇気付けられて逆上がりの練習をし始めるというシーンでラストを迎えるわけですが、望の逆上がり会得に悲観的なハイドも含めて、望の逆上がり成就で終わらないあたりも、余韻があっていい感じです。

 このラスト、「無駄なものは一つもない」というアラタの言葉を、「逆上がりとて無駄ではない」という明瞭なロジックに翻訳してみせた、爽やかなシーンでした。ちなみに、「無駄なものは一つもない」というニュアンス、護星天使なる天上の存在ならではの巨視的な面と、地に足の着いた戦隊ヒーローならではの微視的な部分が混在していて、絶妙です。

 巨大戦では、前述の通りランディックブラザーが登場。アラタの物語なのに、何でランディック?という感じがしないでもないですが、一応、ヒドウのスピードに対抗すべく、ランディック族の二人が頑張った結果の登場というエクスキューズになっています。

 この流れはとっても唐突で強引な印象は否めないですが、映像作りという点では、実景との巧みな合成や、リアル感を度外視したビル間の高速移動等が、非常に素晴らしく、リアルと非リアルの狭間を絶妙に行き来する、見事な画面作りだったと思います。

 巨大戦に事実上不参加となってしまったアラタが、密かに、そして静かに強くなりたいという闘志を燃やす一幕は、いわゆる「草食系」の出で立ちをしているアラタを、正統な戦隊レッド化させるきっかけとして機能している感があります。これからどのような変化を見せていくのか、楽しみですね。

 この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.2 [DVD]に収録。