第28話「美しき逃亡者」

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ストーリー

 御園木は、ダイロギアンから回収したデータを元に、五式支援機士ユウヒを建造、もう少しでそれを完成させようとしていた。御園木の元同僚で、現在の国防省科学分析本部長である椿は、あくまで宇宙人の脅威からの地球防衛を意図する御園木に対し、最も重視すべきは国益であると主張する。

 その頃、天馬はアケロン人に酷似した異星人らしき者に追われる1人の女性を救う。女性は久我栞と名乗り、堀口研究室へとかくまわれる。堀口研究室では天馬、未加、堀口博士が栞に事件の経緯を尋ねるが、栞は頑なに口を閉ざす。御園木に連絡し、最も安全と思われる国防省に身柄の保護を依頼するよう手配しようとしたその時、突如栞は逃亡する。実は栞は国防省科学分析本部の所属で、国防省科学分析本部はアケロン人のクローンを作り出し、生体兵器として利用すべく画策していたと言うのだ!

 件のクローン・アケロン人が、奇異な経緯に驚く天馬、未加と戦闘を繰り広げ、撃退している間、栞は国防省の諜報部隊に拉致・監禁されてしまう。科学分析本部では新たなクローン・アケロン人が完成、栞の持ち去った高純度の水晶体から発せられる「不死身となる」エネルギーを浴びせられる。しかし、それはクローン・アケロン人のコントロール喪失をも意味していた。国防省の威信を賭け、沖田が行動を開始、天馬、未加もそれに続く。クローン・アケロン人との壮絶な戦いが始まった!

解説

 国防省内部の謀略と倫理の相克が描かれた、政治色の強いハード編。第3部に突入してから、バラエティ溢れるテーマが展開されて来ているが、グランセイザー全体を見渡しても、グランセイザーを単なる狂言回しに置いてみせたのは、このエピソードが初だろう。この突き放されたような視点が、このエピソード全体をクールな雰囲気に仕上げている。

 今回のキーキャラクターである栞は、国防省内部の暴走から逃走する役どころであり、国防省の威信を賭けて椿の謀略を糾弾しようとする沖田とは対照的。五式支援機士ユウヒのコントロールを司るであろうと、視聴者の誰もが予想できる沖田のキャラクターを、ここで確認するかのような丁寧な作業であり、悪く言えばそのダシに使われる栞を、物語の中心に据えることでストーリーを回転させようというアクロバティックな構成を生み出しているのには、ただただ感心。

 実のところ、ユウヒとクローン・アケロン人は、敵からの提供ソースから誕生した双子とも言えるものだが、利用する者の倫理観如何によって、そのキャラクター性を異にするという展開が成されていることにも注目したい。ユウヒの活躍を期待させる重量感溢れる格納庫シーン、対するクローン・アケロン人のスピード感溢れるアクションシーン。演出と主張が見事にシンクロした、重要エピソードとなった。