第7話 星の破壊者

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ストーリー

 突然、空に生じた裂け目より2つの光がポイントJS501、朝霧山山麓に落下した。光の1つは秘密裏に地球に降り立った宇宙人で、かなりのダメージを追っているようだった。

 その落下を異常な次元振動として確認したDASH。ヒジカタ隊長は、ただちにカイトとミズキを調査に向かわせた。2人は二手に分かれて調査を開始する。しかし、ミズキが調査に向かった箇所は徐々に霧が深くなり、カイトとの通信不能に陥ってしまう。挙句、斜面を転落して負傷してしまった。

 何とか歩くことが出来、洞穴を見つけたミズキは、その奥で宇宙人らしき男と出会う。男は空間移動装置の故障で動けない状態だと言う。ミズキは本部に報告して救援を求めることにしたが、男は深い傷を負っていて気を失ってしまった。ミズキは本部には連絡せずに応急処置を施す。

 一方その頃、カイトは巨大なカプセル状の物体を発見する。ヒジカタ隊長は、応援のため、コバとショーンの出動を決定する。

 ミズキの応急処置により宇宙人の男は気がついた。その時、男が左腕に装備している装置のランプが1つ点滅し始めた。6つすべてが点いた時、移動装置が使用可能になると言う。彼はケサムと名乗った。彼が色々な星を回ってきたのを聞き、ミズキは多くの出会いを経験してきた彼を羨ましく思う。しかし、ケサムの正体は、惑星の自然を破壊し蝕む種族を、高性能爆弾で破壊する使命を帯びた工作員だった。ミズキはケサムに信じあう大切さを説く。

 ミズキの元へやって来たカイトは、爆弾の爆発を阻止すべくケサムを攻撃するが、ミズキを人質に取られてしまった。マックスに変身するカイト。マックスは爆弾を除去し処理しようとするが、ケサムはそれを阻止すべく巨大化、マックスとの爆弾をめぐる壮絶な戦いが始まった。

 高い戦闘力を有するケサムに苦戦するマックス。その時、ミズキの必死の叫びが響く。「あなたともきっと分かり合えるわ! あなたを助けたこと、私は後悔してないわ。たとえ星の破壊者であったとしても!」。攻撃の手を緩めたケサムに、マクシウムソードの一撃が決まる! マックスは爆弾を空へ持ち去った。

 人間大に戻った瀕死のケサムは、ミズキの想いを受けて爆破寸前にそれを解除。ミズキが彼の元にたどり着くと、ケサムは一瞬微笑んで息絶えた。カイトはその光景を苦々しく見つめるのだった。

 人類を危険に晒した自らの責任を痛感するミズキに対し、ヒジカタ隊長が言う。相手を信じると言う気持ちだけは、決して失ってはいけないと。近い将来、宇宙人と地球人が分かり合える日が来ると信じて…。

解説

 これまでのエピソードの、明快かつ明朗な雰囲気から一歩脱却してみせた、変化球的な一本。当初よりファンが予想していた、いわゆる「重い話」が早くも第7話で登場した。

 地球の種族を根絶やしにするという、凄絶な使命を帯びてやってきたケサム、そのケサムと出会ったミズキ。この両者が今回の物語の核となり、ミズキと同行こそするものの、カイトは2人の傍で動くキャラクターに過ぎない。

 ところが、「完全に部外者でありながらも物語に決着をつけるためにウルトラマンとなる」という単純な図式に堕さないところが、実は今回の凄いところである。

 前半、というかマックスに変身するまでは、確かにカイトはケサムとミズキの周りでストーリーを追う、いわゆる狂言廻しに過ぎない。ところが、マックスに変身し事態がいよいよ収束しようとするとき、マックスは「涙を呑んで」マクシウムソードで斬り付けるのだ。当然、マックスのマスクに「涙を呑む」ような表情を浮かべる機能はない。しかし、何かを決意したようにマクシウムソードに力を込める瞬間の演出、突如ブラックアウトした画面をマクシウムソードが切り裂くアニメ的な演出に、そんな表情を想像させるパワーが秘められている。

 ここで、瞬間的にマックス=カイトの心情が前面へと表出し、ケサムと別れていくミズキの心情と完全にシンクロしていく。これまでのエピソードでは、あえて酷い言い方をすれば、マックスは単なる戦う力であったが、ここまでカイトの心情を反映させたマックスの戦いを見ることによって、改めて「一心同体」を感じるのだ。ミズキが笑ったり怒ったり泣いたり…、ミズキ関係の名場面は、挙げれば尽きることがない。しかしながら、「本当にこれで良かったのか」、戦い終わって、そんな表情を浮かべるカイトこそが、本エピソードの白眉だ。

 もう一つ、ケサムがミズキとの関係によってストーリーを盛り上げた要因に言及しておきたい。それは、「ケサム」が個人名であるということだ。結局、本エピソードではどこの出身なのか、そして本質的には何者なのか、さっぱり分からないようになっている。ただ「ケサム」と呼ばれる男が、滅ぼさんとする種族の女と図らずも交流することで、記号からキャラクターへと変遷していく。ここで、「○○星人」と呼んでしまうことによって記号化されたキャラクターを置くよりは、個人のアイデンティティを強く感じさせる個人名で呼ばれたキャラクターを置いた方が、はるかにドラマの盛り上がりを呼ぶと思うが、どうだろうか。

 そして最後に、ケサムとマックスの対決について一言。巨大化したケサムを眺めていると、所々にウルトラマン的な解釈が投影されている。これは、何か宇宙的な意思より発令された使命を果たしに来たという点で、両者が近似した存在であることを暗喩しているのではないだろうか。ウルトラマンマックスとケサムを決定的に分かつ要素は何か。それは「分かり合える意志」ではないかと、本エピソードから感じるのである。

オマケ

 ヒジカタ隊長に、娘がいることが何気ないセリフから判明した。ちなみに、隊長に家族がいるという設定は、帰ってきたウルトラマンの伊吹隊長が初である。なお、懐中時計を愛用するという趣味も判明。

 今回、カイトからマックスへの変身シーンは、短縮バージョンが使用された。巨大化がアングルと演技のみで描写されるのは、最近にあっては新鮮だ。

 マックスのバトルシーンでは、久々にネクサスっぽいCGシーンが登場。ケサムの攻撃を超スピードで回避し、マクシウムソードを見舞うシーンは超絶的なカッコ良さ! さらに爆弾を持ち去る飛行シーンでは、「急いでるぞ!」と言わんばかりの合成が施されており、飛行シーンの描写としては新しい感覚だった。