第30話 勇気を胸に

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ストーリー

 束の間の平和な夜、カイトは悪夢を見ていた。かつて自分がマックスと出会った光景が展開される。ラゴラスの吐く冷凍光線がカイトを襲い、この瞬間、カイトはマックスと出会ったのだが、マックスの赤い光球はカイトを素通りしていく。薄暗い病床に横たわる瀕死のカイト。マックスは何故自分を選んだのか…。

 龍厳岳でグランゴンの別個体が死骸となって発見された。グランゴンは背中のマグマコアを食われており、それはかつてグランゴンと同時に現れた、ラゴラスによる仕業ではないかとヨシナガ教授によって推測された。直ちにグランゴンの調査を開始するDASHとUDF。龍厳岳には前線基地が設置された。グランゴンのサンプルを採取したショーンは、分析を開始すべくラボへ急ぐ。その時、エリーが龍厳岳の磁気異常を報告、DASHは迎撃体制に入った。

 現れるラゴラスエヴォ。前線基地はたちまち火の海と化した。ラゴラスエヴォは口と胸部から発する光球を前面で一つにし、発生させた強力な光波によって、ダッシュバードのミサイルをすべて粉砕してしまった。ミズキの危機にマックススパークを手にするカイトは躊躇する。「マックスの力に頼ってばっかりだ」と自戒したカイトはダッシュアルファで陽動を開始。隙を見せたラゴラスエヴォを、コバがプラズマショットで撃つと、ラゴラスエヴォは地底へと逃げてしまった。

 攻撃力だけでなく、知能を進化しているラゴラスエヴォにどう立ち向かうのか。自ずと期待はショーンへと向けられた。その夜、ショーンは分析の成果として、怪獣のマグマコアを自壊させる新兵器「A.G.メイザー」の開発を進めていた。しかし発射前、周波数を合わせた途端に爆発してしまうと説明するショーンは、方法が思いつかないと嘆く。カイトは「きっと出来るさ」と励ますものの、ショーンは「出来なくても、きっとマックスは助けてくれる」と呟く。

 初めて怪獣に対する恐怖を感じたショーンは、自分の発明によって怪獣を倒すことを楽しんでいたのではないかと述懐する。それを聞いたカイトは、マックスへの依存心を明かした上で、両親を救えなかった自分が「これから救える人がいる」と思ってDASH入隊に臨んだと告げる。「ショーンの才能が多くの人を救った」というカイトの言葉がショーンの心に響いた。A.G.メイザーの完成を約束するショーン。その様子を見ていたミズキは、カイトの無茶な行動の理由を初めて理解。「でも、ちゃんと教えて欲しかったな、私にも」とカイトに告げる。

 翌朝、ラゴラスエヴォは再び出現した。DASHはショーンのA.G.メイザー無きまま出動、口の中をピンポイント攻撃する作戦に出た。しかし、ラゴラスエヴォに隙はなく、その攻撃によってミズキの乗るダッシュバード1は墜落し始めてしまう。

 かつてマックスに出会ったときの既視感を覚えたカイトは、意を決してマックススパークを掲げる。異空間の中で、カイトはマックスに何故力を貸したのかを問う。マックスは本来文明に干渉しない立場であるが、カイトの「皆を守りたいという気持ち」に動かされたのだと答える。「私は君に今託している。自分の判断を信じたまえ」というマックスの言葉に、カイトは礼を言い、ウルトラマンマックスへと変身を遂げた。

 だが、マックスは強力なラゴラスエヴォに完全な劣勢を強いられる。マックスギャラクシーさえ通用せず、絶体絶命のその時、ショーンは遂にA.G.メイザーを完成させた。ラゴラスエヴォの攻撃法にヒントを得たそれは、ダッシュバード1と2から異なる周波数の光線を同時に発射するシンクロ攻撃だった。ミズキとコバの完璧な連携プレーによってA.G.メイザーは放たれ、ラゴラスエヴォは四散! 勝利の余韻に浸るDASH隊員。カイトはマックスの期待に答える決意を固めるのだった。

解説

 前回に続き、脚本の小中千昭氏連続登板。前回はウルトラシリーズの根本に迫る内容、今回は同じ小中氏による第27話「奪われたマックススパーク」に続いて、カイトのアイデンティティに迫る内容として鮮やかなコントラストを見せる。

 本編全体を見渡してみると、ラゴラスエヴォというスター怪獣候補のような怪獣を登場させて、派手なバトルを繰り広げるという図式が前面に押し出されている感が強いが、根本にはショーンの奮闘とカイトの迷いという2つの重厚なドラマが流れている。

 ショーンの奮闘には、ウルトラマン・第37話「小さな英雄」にて描かれる、イデ隊員のウルトラマンに対する依存心のドラマに類似した部分が見られる。「マックスはきっと助けてくれる」というセリフは、ショーンの依存心を的確に現わしており、「小さな英雄」におけるイデ隊員とよく似ている。ただし、本エピソードが「小さな英雄」の二番煎じにならなかったのは、カイトの存在ゆえだ。

 初代ウルトラマンとハヤタの関係は、乱暴かつ端的に言って「ウルトラマンがハヤタのフリをしている」という一文で表現できるかと思う。しかし、今回明らかとなったマックスとカイトの関係は、「ウルトラマンマックスは自分の力をカイトに託している」というものだ。つまり、これも乱暴に言ってしまえば、カイトがマックスの力をどう使おうが勝手ということになる。マックスの言にある「皆を守りたいという気持ち」がカイトにある限りはだ。

 ここで、ハヤタとカイトの決定的な違いが現れる。ハヤタはウルトラマンそのものである故に、「小さな英雄」におけるイデ隊員に対する励ましの言葉は、どこか上滑りしている印象がある。ところが、カイトはマックスの力を使うことはできるが、目線はショーンと同じ位置にある。マックスの力を使うことができる故にマックスへの依存心がカイトにも芽生え、ショーンと共有することによって、次なるステージへと足を進めるというドラマが展開可能となったのだ。これは正に、マックスのシリーズ冒頭で、カイトとマックスの関係を曖昧にしておいたことが奏功した部分ではないだろうか。だからこそ、カイトとマックスの対話シーンが自然に感じられるのだ。

 小中氏のように大河構成に長けた人物が料理することにより、マックスのシリーズにも、第1話より連綿と続くドラマの一貫性が朧気ながら見えることとなった。それは、ミズキの存在にも関係してくる。「ちゃんと教えて欲しかった」という意味深なセリフは、明らかに最終エピソードに向けた伏線であろう。ここでは「カイトがマックスに頼っているから無茶な行動をする」という意味にも、「カイトがマックスである」という意味にもとれるように、わざとボカしてあるのがニクいところだ。

 一方のショーンはそのイデ隊員のように、ウルトラマンの存在について悩みに悩むかと思いきや、悩みに悩むのは新兵器の実現方法についてであった。これはショーンというキャラクターに非常にマッチしている。イデ隊員とショーンで最も異なる面を挙げるとすれば、それは繊細さである。ショーンに繊細さがないというわけではないが、どちらかと言えば神経は図太そうな印象がある。今回の活躍ぶりはショーンの優秀さを示すと同時に、彼のポジティヴな面が強く照らし出されたものとして評価されていい。

 さて、強力な怪獣ラゴラスエヴォを迎え、その対処法が重視された結果、仮説ラボのシーンが登場したり、ダッシュバード1と2の凄絶な連携攻撃シーンが登場し、特撮シーンが豊富に盛り込まれることとなった。ラゴラスエヴォの火炎弾をかわして走るダッシュアルファのシーンは、実車とミニチュアのシーンが秀逸なカット割で表現され、ダッシュバードの一連のシーンでは、ミサイル発射シーンをCGで、怪獣の前に滞空するシーンは操演でという、各セクションの連携が精密なプランによって組み立てられていて爽快。奇をてらった大胆な演出こそないが、安定感と円谷特撮のエッセンスが存分に感じられるシーンが続出した。

 今回はドラマ面と特撮面の双方が、マックス随一の重量感を持ったエピソードであると評価したい一本だ。

オマケ

 「No problem!」、「What are you...?」、「Here we go」、「I'm okay. But...」など、比較的聞き取りやすい英語がショーンより発せられた今回だが、唯一「Anti-Geomonster Maser」だけはちょっと難しいのでは? と感じた。実際本編では「A.G.メイザー」という新兵器名だけが重要ではあるが、ちょっと普通の子供にとっては説明不足(?)。

 あと衝撃だったのは、その「A.G.メイザー」が単なるパルスパターンのデータ(ショーンはアプリケーションと呼んでいた)だったこと。ダッシュバードの装備は、パルスパターンによって用途や威力が変化する、非常に柔軟性に富んだ優秀な兵器であることが判明したわけだ。これはレトロなメカファンにとっては物足りないかもしれないが、SFとしては充分満足のいく設定だと言えるだろう。