第32話 エリー破壊指令

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ストーリー

 コバはホログラムデッキで、射撃訓練を行っていた。命中率98.6%で最高得点記録を更新したが、最後のターゲットだけはどうしても外してしまう。エリーが左足に重心がかかりすぎていると指摘。ところが、説明する最中にエリーの頭脳はハッキングされてしまう。エリーは何者かにコントロールされてダッシュアルファで基地を脱し、コバは直ちにダッシュドゥカで追跡を開始した。同時にベース・タイタンは強制閉鎖されてしまった。

 閉鎖はエリーを通じてコンピュータプログラムを書き換えられた為だと分析するショーン。エリアJS230を北上するエリーを追跡するコバに、ヒジカタ隊長はエリーの追跡続行と、敵の正体を突き止めるよう指示を出す。宇宙空間では謎の宇宙船が接近していた。

 洗脳型ウイルスを除去して再起動したエリーは、宇宙工作員ケルスと対面。その頃、エリアJS547の倉庫に潜入したコバは、警備員と思しき宇宙人を倒し、ケサムに酷似したその姿に驚いていた。ケルスの目的が、世界各地のUDF基地破壊であることをDASHに知らせるエリー。ケルスはエリーをミサイルの誘導システムに仕立て上げたのだ。途中で通信を切られたエリーは、ケルスに計画の中止を進言するが、一笑に付されてしまう。

 コバは順調にエリーの元へと向かっていたものの、数の多さに苦戦していた。その頃DASHでは、トミオカ長官によるUDF上層部の決定報告を受けていた。トミオカ長官による苦渋の報告は、「エリーを破壊せよ」。それが上層部の決定だ。ミサイルが射程圏内に入るまでの20分で、ショーンによる閉鎖プログラム解除が行われることになった。コバには、そのタイムリミットだけが伝えられた。

 コバは遂にケルスと対面するが、左足を撃たれて負傷。しかしコバはエリーの元へ辿り着く。そんなコバにエリーは「私を破壊してください」と言う。その頃ショーンは見事に閉鎖プログラムを解除していた。直ちに出動するDASH。一方のコバは、シミュレーションで得た感覚を元に、ケルスの卑怯な策をも見事に突破。突入を果たしたDASHメンバーと合流する。

 逃走したケルスを追ったカイトはウルトラマンマックスに変身。巨大化したケルスと壮絶な格闘戦を展開した末、ケルスの左腕にあるミサイル発射装置をマクシウムソードで破壊。さらにケルスをマクシウムカノンで打ち破る。宇宙へ向かったマックスは、ミサイルを搭載した宇宙船をマックスギャラクシーで破壊するのだった。

 事件後、全治一週間で入院を余儀なくされたコバの元へ、エリーが新しいダッシュグローブを届けに来た。礼を言うコバにエリーは笑顔で返した。

解説

 「エリー破壊指令」という物騒なサブタイトル。破壊の指令を出したのがUDF上層部だったという、ちょっと意外性のある展開。コバの活躍を期待するファンに見事に応えるコバ主役編でもある。

 エリーとコバの関係は、シリーズ初盤より伏線として描かれていたのだが、このエピソードで一つの答えらしきものが垣間見られる。人間とアンドロイド。別種ゆえ恋愛にまでは発展し難いものの、別種である互いの「人格」を最大限に認め合うという、SF的に最高のリレーションである。アメリカSF・TVシリーズの傑作「新スタートレック(原題:STAR TREK - THE NEXT GENERATION)」には、データ少佐というアンドロイドが登場するが、他の登場人物はデータ少佐の「人格」を確認しているという構図が描かれる。エリーも、データ少佐と同様の幸福なアンドロイドとして、そのアイデンティティを確立したわけだ。

 今回は、ウルトラシリーズにおける定番である「上層部に対する現場の反旗」の構図に近しい。が、件の命令を下すトミオカ長官自体がDASHの最大の理解者の一人であるため、この構図は弱い。本エピソードに、この伝統的な構図独特の「毒」が感じられないのは、それに起因している。むしろ、タイムリミットに向かって努力し続ける各人を見つめるスリルに、ストーリーの重きが置かれているようだ。

 さて、本エピソードの主役はやっぱりコバである。冒頭の訓練シーンのプロフェッショナル振りや、ダッシュドゥカですぐさま飛び出し、報告はその移動中に行うというカッコ良さが際立つ。ケルスと対峙しても全く物怖じせず、むしろ動きを見切ったと言ってのける優秀さは、とかくダッシュバード墜落組としての役回りに甘んじてきたコバの面目躍如といったところだろう。細かい芝居でも、ガンナーとしての存在感をアピールすべく、脇に挟んだダッシュライザーのアタッチメントを手際良く交換したり、一瞬の隙を付いて交差撃ちを放つなどの、西部劇的な動きを取り入れていて好印象だ。

 ケサムという、ミズキを語る上で重要なキャラクターを踏まえたケルス。コバとエリーが重点キャラであるため、ミズキに関しては特に深い描写がなされることはなかったが、それでも、微妙な表情で複雑な感情を思わせる、細かい演出が散りばめられており、物語の連続性を的確かつシンプルに見せている。ただしこれが原因なのか、ケルスはケサムに比べて深みに欠けるキャラクターとして映る。ケルスの場合、エリーを管制麻痺やミサイル誘導装置に利用し、衛星軌道上のミサイルを発射して世界各地のUDF基地を襲撃するという作戦が、あまりに具体的である。そこでは、作戦を分かりやすく説明するためのダイアログがどうしても必要で、それはケルス自身の行動から多く語られなければならない。感情のドラマが入り込む隙がなく、ケルスが単なる「敵役」になってしまっているのも事実だ。

 しかしながら、シンプルな敵役を得たことで、エリーをモノ扱いする(実はエリーも、自身をモノ扱いされて当然だと認識している点に注目)上層部と、それを認めないトミオカ長官を含むDASHの面々の奮闘が熱く映るのであり、コバの活躍も見ることができるのだから、作劇とは分からないものである。

 ところで、今回はマックスの活躍も派手に描かれている。ケルスのようにシンプルなヒューマノイドが相手の場合、当然格闘戦にスピード感とテクニカルな攻防が求められ、それは高レベルで達成されている。さらに、宇宙空間でマックスギャラクシーを使用するという、地上でマクシウムカノンを使用したこととの差別化がちゃんと行われており、マックスギャラクシー登場の必然性云々を超えたビジュアルインパクトが痛快な一編だ。

オマケ

 冒頭、コバがシミュレーション訓練を行っていた施設には、「ホログラム・デッキ」の文字が見られる。これは解説中でも言及した「新スタートレック」にも登場し、数々の名エピソードを生み出した優秀な「舞台装置」だ。エリーといい、ホログラム・デッキといい、かなり「スタートレック・シリーズ」が意識されているのは間違いないだろう。

 今回の主役アイテムは何と言ってもダッシュライザーだが、シンプルな銃型の武装だけに扱いが簡素で、機能性を感じさせる装備であることを改めて認識。とかくマーチャンダイジングの関係でギミックに走りがちな昨今の武器の中において、一際シンプルさが異彩を放っている。