第12話 初めてのお使い

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ストーリー

 トリヤマ補佐官は総監に呼ばれ、初めて総監室への入室を許可された。緊張しつつ総監室に入ると、そこにはミサキ総監代行が。総監は外出中であった。トリヤマ補佐官に課せられた任務は、研究段階で危険視された「ある物」を、最終処理施設まで運搬することだった。自ら赴くと息巻くトリヤマ補佐官に、周囲の者たちは心配気。

 途中、トリヤマ補佐官は、乗り物酔い止めのドリンクを飲む為に車を降り、「危険物」の入ったケースを開ける。ケースの中には4つのカプセルが入っており、トリヤマ補佐官は誤ってその内の一つを川に落としてしまう。トリヤマ補佐官は、「一個ぐらい良い」としてそのまま運搬任務に戻ってしまった。川で珍品集めをしていた、古物商の平蔵は、トリヤマ補佐官が落としたカプセルを拾う。

 トリヤマ補佐官が任務を終えてフェニックスネストに戻ると、彼が無事に任務を終えて戻ってきたことに安心したCREW GUYSの面々は、いかに例のカプセルが危険であったかを品評し始めた。どうやら例のカプセルはメテオールだったようだ。トリヤマ補佐官は慌てふためく。そのメテオールは「グロテスセル」と呼ばれ、無機物を怪獣化する能力があるという。しかも、巨大な怪獣となった場合、制御できなくなる危険なメテオールなのだ。あまりに危険なことが判明したため、トリヤマ補佐官はテッペイ、コノミ、ミライを指名し「極秘任務」を指示した。CREW GUYSの中でも温和なイメージのある3人を選出し、秘密裏のうちにグロテスセルを回収するつもりだ。

 その頃、平蔵は古物商店「寿限無堂」に戻ってきた。孫の由香が、例のカプセルを象の置物のそばに置くと、置物の象がひとりでに動き始める。しばらくすると、様々な古道具が部屋を飛び回り始めた。平蔵は「付喪神」だと言って、大層感激している様子だ。

 ミライ達が捜索を続けるうち、「寿限無堂」が「付喪神」を商売にしている様子を、コノミが目撃。コノミが入手したカエルの貯金箱は、生物のように自在に動き回る。テッペイがカエルの蓋を開けると、その中からはグロテスセルが抜け出た。ミライ達は「寿限無堂」に赴き、家宅捜索を開始。遂にグロテスセルを発見した。感激したトリヤマ補佐官は、またも誤ってカプセルを落とし、今度は割ってしまう。抜け出たグロテスセルは、恵比寿様の像に取り付き怪獣化を果たした。コダイゴンジアザーの誕生だ。

 グロテスセルが大量に取り付いているため、超強力な怪獣となってしまったコダイゴンジアザー。ミライはウルトラマンメビウスに変身する。

 メビウスはコダイゴンジアザーに立ち向かうものの、超強力な戦闘能力を前に、全く歯が立たない。そこへウルトラマンヒカリも登場。ところが、二人のウルトラマンによる共同戦線をもってしても、コダイゴンジアザーには歯が立たない。

 テッペイはグロテスセルを気化させることを思い立ち、平蔵に恵比寿像の破損箇所を尋ねる。平蔵から右足に欠けた部分があることを聞いたテッペイは、メビウスとヒカリに右足への攻撃を進言。メビウスとヒカリが光線を放って右足を攻撃すると、右足の亀裂からグロテスセルが気化し、コダイゴンジアザーは元の恵比寿像に戻った。

 トリヤマ補佐官に同行した3人以外は、何故コダイゴンジアザーが出現したのか不思議がっている。しかし、「初めてのお使いに失敗はつき物ですよね」と事も無げに言うサコミズ隊長には、真相を隠せなかったようだ。

解説

 1クール消化目前で登場した屈指のコメディ編。ウルトラシリーズでコメディ編が繰り出されるときは、大抵コメディアンとしての資質をふんだんに有した、新たなゲストキャラを用意する傾向がある。しかし今回は、ウルトラシリーズきってのコメディリリーフである、トリヤマ補佐官を最大限に有効活用するという方法が採用された。

 トリヤマ補佐官のポジションに関しては、当初より賛否があったものの、多くの苦悩と障害を、熱気で突破していくタイプのストーリーが多いメビウスでは、割と重宝するキャラクターではないかという見方も成り立つ。特に、トリヤマ補佐官だけが右往左往し、結果的に怪獣登場因子にまでなってしまった本エピソードを見ると、大変有効なキャラクターとして機能していると言えるだろう。

 さて、今回題材として選ばれたのは、かの名作時代劇(!)映画「大魔神」似でコアな人気を誇るコダイゴンである。帰ってきたウルトラマン・第43話「魔神月に咆える」に登場。グロテス星人によって、御神体が怪獣化したものだ。コダイゴンの強烈なインパクトに隠れ、マイナーキャラに堕してしまったグロテス星人が、アーカイブ・ドキュメントに登場。そこから「グロテスセル」というタームが生成されるなど、およそ想像もつかない展開に、コアなファンは狂喜したに違いない。

 「コダイゴンジアザー」という、ある意味安易に過ぎる名前も、恵比寿様のビジュアル・インパクトと妙なマッチを見せ、トリヤマ補佐官が運ぶストーリーに彩りを添える。帰マンにおける魔神像から、恵比寿様への発想の転換も見事である。印象としては、コダイゴンの継承と言うよりは、ウルトラマンタロウに登場したエンマーゴや、ウルトラマン80に登場したジヒビキランの後継といったところだ。

 冒頭で「1クール消化目前で登場した屈指のコメディ編」としたが、実際に、ここまで全体の流れとは無関係に独立したエピソードは、これまで皆無であった。正統派であろうが、コメディであろうが、必ず設定の根幹に関する説明が行われている。今回は、ウルトラマンヒカリについてのGUYSの見解がトリヤマ補佐官から語られるものの、ほぼ設定に関わる言及は無かったと言っていいだろう。それだけに、名バイプレーヤーのうえだ峻氏の雰囲気も相まって、独立性の高い傑作エピソードに仕上がり、ウルトラシリーズの本流である一話完結型の構成に懐かしさすら覚えるのだ(前作「ウルトラマンマックス」を、既に懐かしいと感じてしまうのは、メビウスというシリーズの求心力の高さ故だろう)。

 トリヤマ補佐官役・石井氏とうえだ氏の名演が強烈すぎて、あまり印象に残らないが、GUYSの面々も結構細かい面でコメディを支えている。

 グロテスセルの極秘探索にミライ、テッペイ、コノミを選ぶという、卓抜したキャラ選定にまずは感心。サコミズ隊長に何度となく報告しようとするクソ真面目なミライ、新テクノロジーへの興味が先行し終始楽しそうなテッペイ、マイペースながら鋭く真相を突いて来るコノミ。キャラクターが基礎設定からテイクオフし、独り歩きし始めるのを見る思いだ。

 今回は完全に脇役に回ったジョージとマリナの会話も、「何か、商売繁盛な雰囲気の漂う敵だな」「海外暮らし長い割りに、そういうこと知ってるのね」というセンスの良さ。ビジュアル・インパクトに決して負けない個性を、全員が発揮していて心地よい。

 クライマックスのバトルは、終始コダイゴンジアザーに有利な描写となっており、ヒカリが登場する為のお膳立てになっている。ただし、右足の亀裂を狙って光線を放てば良かったという結果からすれば、ヒカリの登場はあまり意味がない。セリザワが登場しないのも今一つで、ここでのヒカリは実に蛇足感が強く、残念だ。殺陣の組み立て方としては、面白いのだが…。

データ


監督

鈴木健二

特技監督

鈴木健二

脚本

川上英幸