第18話 ウルトラマンの重圧

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ストーリー

 無人ステーション04が怪獣ベムスターに襲撃された。かつてウルトラマンも苦戦した怪獣だとテッペイが言う。ステーション03に04のシステムを完全移植するには2日を要すると言い、地球への飛来が懸念された。ミライは、ウルトラマンヒカリが光の国に帰還したことで、プレッシャーを感じていた。

 一方、地球には、オオシマ彗星のB群が向かっていた。出動するリュウ達をよそに、ミライはウルトラマンメビウスに変身し、大気圏外へと出たリュウ達を易々と追い抜いた。メビウスはオオシマ彗星をメビュームシュートで破壊する。ミライがフェニックスネストに帰ると、CREW GUYSのメンバーはメビウスの行動を批判。特にリュウは「GUYSをコケにしやがった。メビウスだって所詮宇宙人だ。あんなヤツ仲間じゃねぇ」と息巻く。ミライはメビウスを擁護するが、リュウは「許せねぇ」と聞く耳を持たない。

 意気消沈したミライに、サコミズ隊長は「信頼は築き上げていくことは難しいが、崩れるのは怖いくらい簡単だ」と言う。サコミズ隊長はコノミとミライに、明日の重要な仕事を命ずる。その夜、ミライはベムスターに敗れる夢を見た。

 「重要な仕事」とは、コノミの勤めていた保育園に訪問することだった。そこには、不器用な子、器用な子がいて、互いにケンカもする。ミライは不器用な子が可哀想だと言うが、コノミはそれを否定し、教え込んでもプレッシャーに取り付かれるだけだと言う。コノミはメビウスが物凄い重圧を感じていて、勇み足を踏んだのではないかとミライに告げる。ミライは、一人ではなかったことに気付く。

 その頃、ベムスターはレーダー波を吸収して監視網をかいくぐり、地球に向かっていた。「接着剤でも叩き込むか」というリュウの言葉に、テッペイは高分子プラスターをベムスターの腹部に打ち込む作戦を立案。硬化剤の起爆スイッチはテッペイに託された。CREW GUYSは出動し、テッペイの作戦を実行に移す。

 作戦遂行中、マリナ機がベムスターに捉えられ、ベムスターに食われて行く。死を覚悟したマリナを救ったのは、ミライ=メビウスであった。メビウスはベムスターの飛行能力に翻弄され、メビュームシュートを吸収されてしまう。苦戦するメビウスを援護するCREW GUYS。マリナはフォーメーション・ヤマトを敢行、ジョージが高分子プラスターを打ち込む。テッペイは起爆に成功するが、ベムスターには通用しなかった。

 メビウスはヒカリの言葉を思い出し、メビュームナイトブレードを構えるメビウスブレイブにチェンジ。ベムスターを見事撃退する。

 テッペイは作戦失敗を、リュウは進歩が無い自分たちを嘆くが、ミライはメビウス一人じゃ勝てなかった、と言う。リュウは何事も無かったかのように「メビウスは仲間だ」と言って仲間と談笑した。

解説

 意外にも、初の本格的なミライ編となった今回は、ベムスターという、第2期ウルトラにおけるスーパースター級怪獣を擁するエピソード。しかも、狙いすましたかのように、第18話に持ってくるあたりがニクい。というのも、帰ってきたウルトラマンでベムスターが登場したのは、第18話だったからだ。

 今回を帰ってきたウルトラマンの第18話と比較すると、裏返し構造になっていることが分かる。

 まず、襲撃されたステーションが無人。帰マンでは有人であり、それ故に悲劇性が強調されていた。続いて、ベムスター襲来で悩みを抱くのがウルトラマンであること。帰マンではむしろ、ステーション襲撃に伴う友人の死に対する苦悩を、加藤隊長が抱えるという展開が中心であった。さらに、ベムスターとの闘いにおいて強調されるのが、仲間の存在であること。この部分に関しては、帰マンでは脚本の市川森一氏が「狙っていた」と語るように、ウルトラセブンという、この時点では帰マンと殆ど関係の無い人物による手助けが、高いイベント性を伴って描写された。

 こんな具合で、帰マンの第18話を基本フォーマットとしつつも、随所で差別化を打ち出しており、筋運びとしての完成度は高いものとなっている。ベムスターの造形も納得のレベルであり、その上格闘戦に適するように設計されていると思しき箇所が見られ、メビウスとの決戦シーンを盛り上げるのに一役買っていた。些か演出的に可愛らしすぎる部分もあったが、可愛いのに凶悪というギャップが楽しめるということもあり、許容できる要素だ。

 さて一方で、何となく前半部分に釈然としないものを感じる向きも多かったのではないだろうか。地球防衛のプレッシャーにとらわれたメビウスが、リュウ達を追い越してオオシマ彗星を爆破するが、その後のリュウ達の反応が問題である。

 端的に言うと、リュウ達がメビウスの優秀な能力に対してクサってしまうのだが、地球防衛の任に就いている人間が、そのようなことで腹を立てていていいのかという疑問に集約される。リュウ達の反応が正しいかどうかという点に限定すれば、地球防衛の立場において不謹慎と言えよう。しかし考えようによっては、この反応は非常にリアルだ。

 地球防衛云々以前に、このCREW GUYSの成り立ちを振り返らなければならない。彼らは地球防衛に対し、すこぶる崇高な思いを抱いているわけではない。最も地球防衛の意識が高いと思われるリュウでさえ、ウルトラマンではなく地球人が地球を守るという理想を追求しているに過ぎない。すなわち、個々の防衛意識よりも個々の精神的成長に重きを置いている集団、それがCREW GUYSなのだ。だから、リュウ達の反応は非常にリアルである。

 今回は見所が色々とある。要注目のシーンは、マリナがベムスターにとらわれた際の涙だろう。勝気なイメージの強いマリナの、弱い部分と強い部分が遺憾なく描き出された、突出して完成度の高いシーンである。コノミがミライを諭していると言っても過言ではない、一連のシーンも良い。また、リュウの何気ない一言から作戦が完成していくところや、その作戦の奇抜さは「ウルトラマンタロウ」を彷彿させ、ニヤリとさせられる。

 そして、メビウスブレイブへのチェンジ。M78星雲出身のウルトラマンはフォームチェンジしないという、慣例のようなものが存在していたが、ついにメビウスがフォームチェンジを果たした。40周年記念作品ということで、あらゆる要素を盛り込もうという姿勢が見られる。フォームチェンジの描写自体は、昭和ウルトラの雰囲気から逸脱しないようにという配慮からか、比較的あっさりな演出が成されているが、メビュームナイトブレードにはケレン味がたっぷり盛り込まれていてカッコいい。

データ


監督

佐野智樹

特技監督

北浦嗣巳

脚本

川上英幸