第26話 明日への飛翔

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ストーリー

 ミサキ総監代行は、総監への報告書を書いていた。リュウがヤプールに拘束された際に付着していた異次元物質を元に、フジサワ博士はディメンショナル・ディゾルバーの開発に着手、異次元へのルートを半永久的に絶つことで超獣殲滅を図るという。

 フェニックスネストのフライトモードが紹介された。GUYSのトップシークレットだったフライトモードの運用は、今回のディメンショナル・ディゾルバーを発射する作戦の要となったのだ。その頃、アライソの元へミサキ総監代行が訪れていた。「GUYSクルー達をよろしくお願いします」というミサキに対し、「私の腕一つでもパイロットの操縦技術だけでもなく、もっと大事なものがある」と返した。

 サコミズ隊長はディメンショナル・ディゾルバーをフジサワ博士から受け取る。そこへミサキ総監代行が現れると、フジサワ博士は再会を懐かしむ。実は2人は古くからの友人であり、フジサワ博士の招聘はミサキ総監代行の進言によるものだったのだ。会話が総監の話に及んだとき、空の裂け目から超獣ベロクロンが出現。サコミズ隊長はリージョン・リストリクターを発射するが、ベロクロンの放ったミサイルがサコミズ隊長の側で着弾してしまう。

 サコミズ隊長の命に別状はないものの、眠ったまま動けない状態となってしまった。ヤプールはメテオールの研究施設を襲ってきたのだ。フジサワ博士は次のゲートが開くまであと4時間と見積もった。「隊長の敵討ち」を声高に叫ぶリュウやミライをよそに、ミサキ総監代行は、サコミズ隊長のみがフライトモードの運用指揮権を持つため、フライトモードの運用は不可能と報告した。CREW GUYSの面々の反対意見に晒されたミサキ総監代行は、何故か笑顔で「大丈夫。あなた達は、私が死なせない」と言って去った。フジサワ博士は「昔から笑顔で励ましてくれた」と思い出話を語る。その時ミライは、ミサキ総監代行が自らフェニックスネストを飛ばそうとしていることに気付いた。

 ミライは「一人で抱え込まないで下さい」とミサキ総監代行に進言。それを聞いていたアライソはCREW GUYSに「飛ばすのか、飛ばさないのか、はっきりしろ!」とゲキを飛ばした。ミサキ総監代行はCREW GUYSのメンバーを信じて、総本部にフライトモード運用を進言。CREW GUYSも加えて急ピッチでフライトモード運用に向けて作業が進められることになった。病床のサコミズ隊長は消え入りそうな声で「GUYS SALLY GO」と号令する。

 ところが4時間経過しないうちに、ベロクロンは出現した。これからヤプールの大攻勢が始まるかもしれない。GUYSに戦慄が走る。直ちにベロクロンを迎撃すべくガンウインガー、ガンローダー、ガンブースターが発進。ベロクロンの放つ無数のミサイルに苦戦するCREW GUYSだが、もう異次元のゲートは開き始めている。「俺たちがここに居る意味を思い出せ!」とのリュウの言葉に、「君たちの思いはヤプールなんかに負けはしない」と返す通信が入った。サコミズ隊長が戦列に復帰したのだ。3機はガンフェニックストライカーにバインドアップし、フェニックスネストは遂にフライトモードの運用を開始した。

 異次元ゲートにロックオンを完了し、フェニックスキャノン発射寸前、ベロクロンが強力なミサイルを発射した。ミライはウルトラマンメビウスに変身してそれを阻止。ベロクロン迎撃に打って出た。フェニックスネストはディメンショナル・ディゾルバーを発射し、見事に異次元ゲート消滅を成功させた。さらに、インビンシブル・フェニックスとメビュームシュートの連続攻撃でベロクロンも撃退。ここにヤプールの野望は潰え去った。

 ミサキ総監代行は、報告書に「彼らの存在が、私の笑顔の糧となっている」と書き加え、報告書の宛先を「親愛なる総監殿」とした。

解説

 ヤプール編3部作に、とりあえず一段落つけた今作。ヤプールとの一大攻防戦が展開されるのかと思いきや、何と、前回に続き今回もヤプールの姿はおろか声さえも登場しなかった。

 今回展開されたのはヤプールの襲撃というよりも、「滅ぼせない敵」ヤプールをいかに封印するかという、「事前阻止」の色合いが濃い内容だ。さらに、ミサキ編であるという別の側面も持ちあわせており、相当なテンションで盛り上がる一編である。

 ミサキ総監代行と言えば、時々笑顔を見せるものの常に冷静で、総監代行という職務に誇りと自信を抱いている印象が強い。しかしながら、彼女も悩める人間であり、責任感の強さ故の弱さも内包していた。そういった点がごく自然に、また魅力的に描かれているところが本エピソードの美点である。エキセントリックな側面を持つキャラクターであるフジサワ博士と、親しい関係にあるというのも、物語的な仕掛けを超えたところで爽やかな印象を与えていて良い。

 今回の特徴と言えば、何と言ってもサコミズ隊長負傷によって熱く盛り上がるリュウ達のドラマである。ただし、このような展開は危険性もあり、「全員が真っ直ぐな感情で、少々クサいセリフを吐きつつ盛り上がる」という陳腐な展開に堕し易い。実際、このような面は如実に現れているのだが、フジサワ博士や、意外な再登場が嬉しいアライソがその制動力として働き、画面を締めることで、感動にベクトルを向けているのは特筆に価する。しかも、サコミズ隊長は「敵討ち云々」が果たされる前に易々と復活してしまい、GUYSというチーム全体でヤプールに対し敢然と立ち向かうのである。このような上層部含めての防衛チームの一体感というものは、かつてないものかも知れない(「ウルトラマンガイア」の最終章でも類似した感動を味わえる)。

 そのサコミズ隊長だが、負傷するという意外な役回り。割と超人然としたキャラクター故に、負傷すること自体が意外性を帯びている。病床での「GUYS Sally Go」は屈指の名場面。さらには前述のように早々に復活を遂げ、フェニックスネストを飛ばしてみせる。結局、サコミズ隊長の超人振りは、強調されることになった。また、ミサキ総監代行とフジサワ博士の会話が総監の話に及ぶと、途端に慌ててその場から逃げようとする様子が描かれたり、ミサキがサコミズ隊長被弾時に今にも泣きそうな表情をしたり、「親愛なる総監殿」と報告書に書いたり…。サコミズ隊長=総監という説が、ますます有力になりそうな場面が続出。ヤプール阻止の為の総力戦を描きつつも、こういった小ネタを仕掛けていくところが小気味良い。

 さて、GUYS側のドラマが充実を見せるあまり、ヤプール側の描写が、かなり薄いものとなっている点は否めないところだ。肝心のヤプール本人(?)は、前々回にしか登場しない。空が割れるという共通項でヤプールの存在をアピールしているものの、ベロクロンにしても「ウルトラマンA」で見られたような、「突如前触れも無く現れて猛威を振るう」といった活躍ではなく、「サコミズ隊長に傷を負わせる」、「メビウスの登場機会をつくる」といった使われ方をしている印象が強い。ただ、それは前々回からの三部作すべてに言えることかも知れない。

 前々回は、信頼関係の再確認で、実質超獣はリュウを拉致しただけ。前回は、フジサワ博士の突出した能力に翻弄されただけ。そして今回は、前述の通りである。ヤプールという存在が真に活躍するのは映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」であり、この「超獣三部作」を振り返ると、映画とバッティングしない形で、超獣というキャラクターを利用した「GUYSの強さのアピール編」だったと言える。映画ではGUYSの活躍の場は殆ど与えられなかった。いわば映画はウルトラマンの物語であった。逆にTVシリーズのヤプール編は、前々回の冒頭でゾフィーとタロウが参戦を許されなかったように、あくまでGUYS中心の物語であった。このように映画とTV両面を俯瞰すると、見事なコントラストを描いて両立していることが分かる。「映画を見ていなくてもTVは楽しめる」という文言は各方面で見られたが、両方を見て初めて真のヤプール編が成立するということに、否定的な論を向ける諸氏は少ないだろう。

 蛇足だが、オープニングでの登場怪獣紹介で、ベロクロンのシルエットに続いて、ミサイルの放出もシルエットで描かれた。「ミサイル超獣」に相応しい演出として印象的だ。本編でも、ミサイルは遺憾なく描写され、戦闘機各機を交えた「板野サーカス」に興奮を覚えたファンも多かっただろう。「ウルトラマンA」冒頭では、ベロクロンのミサイルになす術も無く墜落していく防衛軍が描かれたが、遂にミサイル一基たりとも被弾しない防衛チームが描かれる時代になったのだ。

データ


監督

北浦嗣巳

特技監督

北浦嗣巳

脚本

小林雄次