第27話 激闘の覇者

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ストーリー

 光の国で、ウルトラの父とウルトラの母が会話している。ウルトラの父は、3万年間一度もなかった古傷の痛みを覚えていた。何かの前触れなのか…。

 フェニックスネストでは、フライトモードによって荒れた部屋の後始末が終わりつつあった。超獣侵入の可能性がなくなったことで、もうフライトモードを飛ばすこともないのではないかと言うコノミ。そこへトリヤマ補佐官が現れ、可能性が消えたわけではないと息巻く。ウルトラゾーン、クロノーム、ヤプール…何者かの力が働いているのかも知れない。ミライはそう推測した。

 トリヤマ補佐官がやって来た本当の目的は、次なるマケット怪獣選抜を目的としたプロトマケット怪獣のテストのためであった。面倒な作業のため、期限ギリギリまで放っておいたのだ。周囲のトリヤマ補佐官への批判をよそに、テッペイは嬉々としてプロトマケット怪獣選抜作業をはじめた。選抜作業に際して、CREW GUYSの面々は思い出を語る。グドン、バードン、ツインテール、ベムスターは、様々な理由で却下。最終的に候補に挙がったのは、何とゼットンとウルトラマンメビウス。ミライはメビウスのマケット化に納得できない表情。結局、メビウスのマケット化はサコミズ隊長の「メビウスがビックリするだろう」との一言で、却下となる。

 マケット怪獣に相応しいのは一体何かというトリヤマ補佐官の言葉に、テッペイは「シミュレーションなのだから、戦わせて決めればいい」と意見。早速、トリヤマ補佐官は最強と呼ばれるゼットンを奪取。勢い余ってカプセルを落としてしまうのだった。

 気を取り直し、トリヤマ補佐官のゼットンとテッペイのグドンが対戦。結果は先手を打ったゼットンの圧勝であった。渋々テッペイはリセットしようとするが、何とゼットンが暴走し始めた。フェニックスネストのシステムにも障害が発生し始めた。トリヤマ補佐官がガイズタフブックから無理やりカプセルを引き抜いても、シミュレーション空間からゼットンは消えない。ゼットンの侵食は留まる所を知らず、テッペイはウルトラマンメビウスのマケットを送り込んだ。ところが、CREW GUYSのメチャクチャな指示でメビウスは倒されてしまう。ミライは決意した。自らを数値化しネットワークに飛び込むことで、ゼットンと戦うのだ。ミライはメビウスに変身し、シミュレーション空間へと急いだ。

 シミュレーション空間で繰り広げられるゼットンとの戦いは苛烈を極めた。しかし、CREW GUYSの応援の声がメビウスに届き、ミクラスとウィンダムの加勢もあって、メビウスは遂にゼットンを打ち破ることに成功する。こうして無事にネットワークも復旧した。

 光の国では、ウルトラの父が「決断の時が近いのかも知れん」と呟いていた。「メビウスは、もう…」ウルトラの母は悲壮感を露にした。

解説

 マケット怪獣と絡めて見事に料理した総集編的エピソード。総集編の傑作としては、ウルトラマンT・第40話「ウルトラ兄弟を超えてゆけ!」が思い出されるが、T・第40話はタロウ以外のウルトラ兄弟の総集編(!)である。本エピソードはメビウスに限っての総集編だが、軒並み復活怪獣にスポットが当てられていたり、ウルトラの父とウルトラの母が登場したため、何となくスケールの大きさを感じさせる総集編に仕上がっている。

 題材がライトだからか、随所に込められた小ネタや俳優陣の肩の力を抜いた演技が楽しい。例えば、候補のプロトマケット怪獣に対し、各々が様々な反応を見せるくだり。バードンの毒には、実際に毒の被害にあったミライがイヤな顔をし、ベムスターには食われそうになった経験を持つマリナがムキになって反対。キャラクターの経験を生かした面白さが秀逸だ。最強の怪獣を争奪する際のドタバタ振りも、ライブ感に溢れており、楽しい場面だ。

 今回は総集編でありながら、3クール目への突入ということで一つのターニングポイントにもなっている。それが如実に示されるのは、まずオープニングだ。タイトル直前に初代ウルトラマン~ウルトラマン80までの映像が挿入され、ナレーションが流される。BGMは「ウルトラ六兄弟」、各々の映像は有名なスチールで構成されており、感慨深い構成だ。さらに、オープニングの主題歌が2番に変更され、映像もフェニックスネストのフライトモードを挿入するなどの変更を加えてある。極め付きは、オープニングの最後にメビウス、ウルトラ兄弟とヒカリが集合するシーンが挿入されていること。今後の一大サーガを予感させる見事な構図だ。

 本編では、ウルトラの父とウルトラの母がアバンタイトルとエピローグに登場。「3万年間一度もなかった古傷の痛み」という、光の国の歴史を一度でも「勉強」した者ならば、思わず身を乗り出してしまうような発言が飛び出す。3万年前と言えば、当時の設定で光の国にエンペラ星人の怪獣軍団が侵攻して来た時候である。ウルトラの母の「メビウスは、もう…」というあまりにも意味深な発言も登場。大きなストーリーのうねりが、3クールより開始されるのは、ほぼ間違いないと見ていいだろう。

 さて、今回のメインストーリーであるゼットンとの対戦も、マニアックなネタを仕込みつつ楽しませてくれる。まず、今回の演出等を担当した小中和哉監督が1993年に関わった「電光超人グリッドマン」を彷彿させるシーンが登場。ミライがメビウスとなり、ネットワークへと飛び込んでいくシーンである。「グリッドマン」は早すぎた傑作とされ、現在の主流であるVTR撮影を意欲的に導入した特撮TVドラマだ。前後するが、マケットメビウスとマケットゼットンの対戦では、メビュームシュートを放ち、ゼットンに吸収されるシーンから、カラータイマーを破壊されて倒れこむシーンまで、ウルトラマン・第39話「さらばウルトラマン」に酷似。というより、アングルからポージング、ライティングに至るまでこだわって似せてある。ただし、大地に倒れるシーンだけは前後のつながりを考えてか、うつ伏せに倒れるのではなく仰向けに倒れるよう変更されていた。非常に細かいネタに、ファンは思わずニヤリとしただろう。

 他にも、バリアが上方にないことから、ジョージが新マンの技である「流星キック」を提案するなど、ネタ探しに事欠かない。ネタ以外の注目ポイントとしては、メビウスを応援する際の「行けぇ! 行けぇ! ぶっ潰せぇ!」という過激な発言にリュウらしさが溢れていて笑いを誘う。

 ストーリー的には、皆の応援の声が届いて力になるというベタな展開であるが、これらのような細かく丁寧に盛り込まれたマニア要素が彩りを添え、一味違った一編に仕上がっている。「楽しい総集編」の一つの完成形として良いだろう。

データ


監督

小中和哉

特技監督

小中和哉

脚本

谷崎あきら