Episode 20 追撃 -クロムチェスターδ-

 七夏と潤平が現場に居合わせたことで、ナイトレイダーは攻撃を仕掛けることが出来ない。姫矢は傷身をおしてウルトラマンに変身、ビーストを迎撃する。しかし、ウルトラマンはエネルギーが尽きて姿を消してしまう。その時、孤門は他にも多数の人間がミッション・エリアに取り残されているのを見て衝撃を受ける。

 何とかビーストの戦意を殺いだナイトレイダーだったが、ビーストは再び位相転移して逃げ去った。和倉は退去を指示するイラストレイターに、なぜミッション・エリア内の避難が行われなかったのかと詰め寄る。和倉は松永管理官にも詰め寄るが、管理官はビーストの進路を確実化するための駒だったという見解を強調するだけだった。

 一方、根来は七夏と潤平に出会う。保呂草が撮影したビーストの写真は、根来に託された。根来なら必ず写真を公表してくれるとする姫矢を見て、七夏は姫矢がウルトラマンであることに気付くのだった。その七夏と潤平は、M・Pによって記憶を消去されてしまう。根来は首尾よく現場を抜け出し、新聞社への売り込みに成功していた。

 ナイトレイダーは、位相特定と位相間移動とを同時に行える新型機チェスターδによって、ビースト・ゴルゴレムを追撃する作戦に出た。ミッションは、δでゴルゴレムの位相間移動制御器官を破壊し、器官が回復する前にメガキャノンチェスターによって殲滅するというもの。孤門はδに搭乗し、ゴルゴレムの制御器官破壊に成功する。姿を現わしたゴルゴレムを直ちにメガキャノンチェスターが撃つが、ゴルゴレムはバリアを張って威力を半減させ、さらに制御器官を予想外の速さで回復させた。

 そこへ姫矢のストーンフリューゲルが現れ、ウルトラマンが登場、メタフィールドで戦いが繰り広げられる。しかし、ウルトラマンの活動に要する生命力は、もはや限界だった。

解説

 前回の後編と言える内容。ただし、ゴルゴレムとの決着はつかない。今回はウルトラマンが前半と後半2回登場するという、ネクサス的には異例の回になった。さらに、アンファンスのエナジーコアがカラータイマーのように点滅するという珍しいシーンもあった。

 前回、松永が「ビーストの進路上の人間に避難勧告をしないのは異例」と言っていたが、イマイチ「??」なシーンだった。結局、今回「撒き餌」だったことがぼんやりと判明する。しかしながら、ちょっと説得力に欠ける面は否めない。ドラマ上、七夏たちが現場にいる必要が絶対的にあったわけだが、その必然を裏付ける要素としては、少し弱い。

 今回はタイトルがチェスターδそのものであることから、新型機チェスターδの高性能を存分に見せる構成がとられている。よく見てみると、結構芸が細かいシーンが多く、例えば位相間移動の詳細な描写や、ストライクチェスターとのメタフィールドへの同時突入の際に、わずかにδが先行するなどが挙げられる。孤門が搭乗を積極的に志願したのは、孤門の主人公たる面を強調したものとして素直にとらえることができる。主役機に相応しいデザインのδに孤門を載せたのは正解だったと言えるだろう。

 一方、根来が遂にその本領を発揮し始める。このキャラクターの魅力は、その胡散臭さにあると思うのだが、それが非常によく生かされていた。写真に見入る様子や、カメラを褒めながらメモリを抜き取る仕草に怪しさが炸裂。一瞬、この人にとってスクープと金が密接に結びついているかと思わせておいて、実は「真実の報道」への深いこだわりと熱さがあるという演出の小気味良さが素晴らしい。そして、M・Pの限界がこの根来によって露呈していく。この構成には見事にはめられ、私は思わずナイトレイダーよりも根来を応援してしまった。

 もう一つ衝撃だったのは、保呂草の死因の隠蔽だ。何と「酔っ払って崖から落ちた」ことになっていたのである。この酷さから考えても、過去に数々隠蔽されてきたビースト事件の遺族の感情は、余程やりきれなかったに違いない。このことから今回感じたのは、M・Pが最も機密性の高い組織である筈が、どこか手際の悪さを感じさせるのは、実は確信犯的な演出だったのかも知れないということ。だとすると凄いことだが。