Episode 21 受難 -サクリファイス-

 ウルトラマンの消耗により、メタフィールドの一部が崩壊。ゴルゴレムはメタフィールドの外へ脱しようとする。懸命にゴルゴレムを阻むナイトレイダーだったが、あらゆる兵器が通用しない。ウルトラマンはわずかなエネルギーを振り絞り、ゴルゴレムを粉砕する。しかし姫矢の身体は既に限界であった。姫矢はTLTによって回収されてしまう。これはウルトラマンの能力を調査したい松永管理官の指示だった。

 一方その頃、根来は「毎朝スポーツ新聞」に保呂草のスクープを売り込んでいた。圧力から逃れることの出来る数少ない新聞社として根来が選んだのだが、翌朝、他の新聞社が軒並み陳腐なモンスターネタを1面トップに据えている様子に愕然とする。完全にガセ化されて憤慨する根来をM・Pが包囲。だが根来は首尾よく逃走する。根来は恵にコンタクトを取るが…。

 姫矢は松永の指示で記憶を探られていた。しかしセラのトラウマが、ウルトラマンとの邂逅の記憶を遥かに凌駕しており、ウルトラマンの力を獲得した瞬間を知りたい松永を苛立たせる。松永は側頭葉への電気刺激による調査の限界を知り、姫矢にビースト振動波を照射して反応を引き出すことを決定する。

 一方、ナイトレイダーはメタフィールドの組成分析を終了、その組成はウルトラマンを構成する物質と同一であった。つまり、メタフィールドはウルトラマンの身体で作り出されていた。姫矢は、自らの命を削って戦い続けてきたのだ。その姫矢は、今や強力なビースト振動波照射によって生命を奪われんとしていた!

 その夜、追われる根来は怪しげな3人組と遭遇する。彼らは「かくまってやる」と告げるが…。

解説

 エピソード冒頭は、危機迫るヒーローの逆転勝利を描いた特撮ドラマ「ウルトラマン」の王道的シーンが展開され、カタルシスを感じさせるものであったが、姫矢拉致から一転、ドラマは海外SFミステリードラマのような硬質でアダルトな展開へと変化する。

 今回のエピソードを支えるのは、間違いなく松永と根来である。一般市民の目から最も遠い暗部に身を置き、光の力を持つ人間からその秘密を探ろうとする松永。一般市民の目に最も近いところにいながら、なかなか闇を探る機を見出せない根来。この闇から光を見る視点と光から闇を見る視点の対比が、圧倒的なコントラストで迫ってくる。

 もし今回のストーリーが、松永の姫矢に対する調査のみで描かれていたとしたら、絵空事に近い次元での物語に終始しただろうし、もし根来だけのストーリーだったら、退屈な逃走劇に堕してしまっただろう。2つのドラマが同時進行し、それぞれのシーンが交互に挿入される構成は、散漫な印象を与えるかもしれないが、それぞれの俳優の存在感が見事にそれを打ち消している。

 「海外SFミステリードラマ」と前述したが、はっきり言ってしまえば、今回は「X-ファイル」の雰囲気によく似ている。ところどころ音楽までが似ていたのには思わず笑ってしまったが、新聞による情報操作を目の当たりにした根来のやるせなさは、毎度モルダー捜査官が味わうものに酷似していた。そして極めつけは怪しげな3人組だ。「X-ファイル」にも似た雰囲気、というよりそのまんまの3人組「ローン・ガンメン」が登場する。斉藤暁氏のキャスティングも絶妙。

 これまで、物語の構造的な面で「X-ファイル」を思わせる部分は見え隠れしていたが、今回一気に暴露してしまいかねないファクターを放出した。ネクサス世界は、少しずつストーリーテリングのバリエーションを開花させようとしているのか。