Episode 26 憐 -ザ・サード-

 アメリカ・ダラスより東京に来た千樹憐は、遊園地のレストランでアルバイトをしていた。仲間の尾白や、オーナーのハリスと共に楽しいアルバイト・ライフを満喫していた。

 憐が来て1ヶ月ほど経ったある日、尾白が試験の追い込みで頭を抱える傍で、憐はアミノ酸の塩基配列に関する論旨を簡潔かつ正確に論述してみせる。そんな憐を監視する黒い影…。

 その頃世間では、様々な原因不明の失踪事件がバンニップという怪物によって引き起こされているという噂が流れていた。さらにバンニップに人間が食われるところを目撃した人間は、「一つ目の鳥」によって記憶を消されるというのである。

 とある落雷事故のニュースを見た憐はデジャヴュを感じ、その現場へと赴く。その現場で起きたこと、つまりビーストの事件を知覚する憐。ビーストの襲撃、ナイトレイダーの迎撃、そしてM・Pによる記憶消去。一部始終を幻視する憐。そんな彼を遠目に疑う瑞生だったが、憐はイレース対象者ではなかった。その夜、憐は奇妙な機器で何らかの数値を測定し、ふと焦りを見せるのだった。

 同じ夜、ビーストは再び出現し、ナイトレイダーはスクランブル。憐はその動きにシンクロするかのように、かつて姫矢が見た石櫃の幻覚の中で、ウルトラマンに遭遇する。憐は光を受け入れ、ウルトラマンへと変身! ビーストの硬い体表に苦戦するナイトレイダーの前に颯爽と姿を現わす。

 そして、ジュネッスブルーとなったウルトラマンは、果敢にビーストを迎撃するのだった。「ようこそ、ザ・サード。君が三番目だ。」吉良沢が呟く。

解説

 遂に幕開けた第三のデュナミスト・憐編。オープニングは主題歌・映像共に一新され、迷いを吹っ切るかのように走るこれまでのウルトラマンの姿から、颯爽と市街を駆け巡るウルトラマンの姿へと変わった。ナイトレイダーの面々のクレジットもこれまで以上に強調され、その仕上がりはウルトラとしては異色の出来栄えであった。また、エンディングも変更となり、番組自体が一新されたかのような印象を与えているのが面白い。

 平成ウルトラでは、ある種牧歌的で爽やかな作風でファンの指示を得た太田愛氏の本による今回。姫矢編のダークかつSFマインドに満ちた雰囲気から見事に転換されたムードに、ファンは大いに戸惑ったに違いない。しかしながら、シリーズであることを踏まえた的確な作劇は流石で、沙耶のキャラクターはそのままだし、孤門はまだ姫矢を引き摺っている節がある。

 さて、新シーズン開幕に相応しく、新キャラクターや新たな謎などが噴出し、なかなか整理がつかないのだが、ここでキャラクター面から少しずつ整理してみることにする。

 まず、新デュナミスト・千樹憐。彼の出生は謎に包まれており、冒頭のモノローグではその生命が何かに脅かされているかのような印象を受ける。腕に奇妙な機器を巻きつけて何かの数値を測定したり、両親がDNAだという冗談(?)を言ったり、アミノ酸の塩基配列についてスラスラと語ったり、爽やかな性格とは裏腹に随分と謎に満ちたキャラクターである。

 憐を取り巻くのが、アルバイト先のオーナー・ハリスとバイト仲間の尾白。特にハリス役にはきくち英一氏(帰マンのスーツアクター)がキャスティングされており、往年のウルトラファンにとって嬉しいサービスとなった。尾白はネクサスには珍しい、真の市民であり、今後の関わり方が期待される。

 そして、TLT側の新レギュラーが野々宮瑞生。前回でもちらっと顔見せしているが、姫矢データの消失事件に吉良沢が言及している最中のシーンだったので、その容疑者ではないかと視聴者に思わせたが、今回を見る限り、そのあたりの判断は保留にしたほうが良さそうだ。彼女の所属するM・Pに関しては、世間に都市伝説めいた噂として業務が漏洩している描写があり、そのほころびに関するドラマに期待がかかる。

 最後に、新しいウルトラマン・ジュネッスブルー。爽やかな適能者・憐のキャラクターを投影したかのような鮮やかな青である。戦い方も姫矢ネクサスとは異なり、スピードを重視したキレの良いアクションが演出されている。オープニングやアイキャッチで大胆な市街戦が描かれているが、果たして実現するのだろうか?