Episode 29 幽声 -コーリング-

 1ヶ月の間に7件、キャンプ場で失踪者が出た。ビーストの仕業だと容易に推測されたが、現場は白い霧に包まれており、それがビースト振動波の探査を妨害している可能性があった。

 かつて、溝呂木によってビーストの体内に閉じ込められるという凄絶な体験をした理子は、死んだ父母の声が聞こえると言っていた。理子は瑞生が始めて記憶の処理を行った少女でもあり、誤った記憶処理によって事件の記憶のみが残存し、他の主要な記憶を失ってしまうという事態になっていた。

 時を同じくして、溝呂木は再び現れた。理子は溝呂木と出会い、ビーストが出現したエリアの周囲を徘徊していた。ビーストと戦闘に及んだ孤門と和倉は、溝呂木と理子に遭遇する。しかし溝呂木は自らが誰であるかの記憶さえも失っていた。理子は孤門を見て事件の記憶を呼び起こし、溝呂木と共に逃走してしまう。そして、ふと溝呂木が一人になったとき、TLTのホワイトスイーパーが溝呂木を捕獲した。

 いよいよビーストとの決戦が始まった。瑞生は理子にビーストを二度と見せないよう奮闘していた。度重なる記憶処理がどんな結果をもたらすか分からないからだ。ビーストの気配を察知した憐はウルトラマンに変身、出現したウルトラマンは、理子が現場を目撃する寸前にメタフィールドを展開する。しかし、理子にはウルトラマンの戦いが見えていた。ウルトラマンは善戦し、ビーストを倒すことに成功する。ビーストが開放した被害者の情報の一部は、理子の前に優しい両親の幻覚となってあらわれ、理子は笑顔を取り戻した。

解説

 一瞬、姫矢編かと思わせるような、かなり重い内容のエピソード。登場ゲストキャラである理子は、Episode 14に登場した被害者である。溝呂木も登場し、今回は孤門の立ち位置とウルトラマンを除けばEpisode 14の正統な続編と言えよう。姫矢編の雰囲気を持つのは当然かも知れない。

 本編とは関係ないが、本編終了後、新番組「ウルトラマンマックス」の予告が流された。当初4クールの予定だったネクサスが、3クールの放映となったことを周知した決定的な瞬間だ。放映短縮に合わせ、本エピソードはディテール不足やモノローグの多用による場の説明など、少々忙しく粗い印象を残した。

 まずアバンタイトルが既に重要な本編となっていたこと、エンディングに理子のエピローグが重なっていたこと、そして何より憐のドラマが全くなく、唐突にウルトラマンに変身したこと。これら三つだけ取ってもかなり慌しいエディットになっているのではないかと思う。特に憐の登場はあまりにも唐突であり、このあたりはかなり惜しい。しかしながら、全体的にはうまい組み立てに終始しており、完成度としては一定以上であろう。

 むしろ、このエディットが奏功している部分もある。これまでネクサスのエピソードは連続を重視し、幾週に渡って引っ張られることが殆どだったが、今回は怒涛の如く大変スピーディにストーリーが展開し、遂には一話完結に近い構成となった。その中で、理子の心理や衝撃的な溝呂木の再登場、ビーストの生態までも描かれていたのは驚異的ですらある。

 スピーディな展開に合わせ、ウルトラマンの活躍もスピーディにまとめられている。ネクサスではとかく苦戦することの多いウルトラマンだが、今回は善戦に終始し、メタフィールドを邪魔されることもなく(ここに理子の重要なシーンを絡めてくるところが秀逸)、必殺技も華麗に決まった。奇しくも「ウルトラマンマックス」のポリシーに近いウルトラマン像を見ることができた…。