Episode 36 決戦 -フェアウェル-

 戦いの後、憐は倒れ伏す。ナイトレイダーは現場での待機を命じられる。憐にメタフィールドを張る力は既になく、市街地での戦闘を余儀なくされると吉良沢は予想した。そして、その時が憐にとって最後の戦いになるだろうとも。

 瑞生は憐にはっきりと自分の気持ちを伝える。しかしそれは憐の苦悩を深めてしまう。苦悩の末、憐はメモレイサーで瑞生の記憶を消そうとする。しかし瑞生の必死な抵抗で、一緒にすごした時間の大切さを悟った憐は、瑞生を抱きしめる…。光はなぜ自分のところに来たのかを考えていた憐に、孤門は姫矢のことを聞かせ、光は受け継がれていく希望だと言った。それを聞いた憐は「ラファエル」が日本に到着したという吉良沢からの情報を得つつも、戦場へと赴くのだった。「俺は俺の光を走りきる!」瑞生に必ず戻ると約束して…。

 ウルトラマンとなった憐は敢然と最強ビースト・イズマエルに立ち向かう。ナイトレイダーもすぐさま参戦するが、イズマエルの強力な光線の前に次々と撃破されてしまう。イズマエルの強大な力の前に、ウルトラマンも一度は戦いを諦めかける。が、吉良沢の「光を信じろ!」という言葉に奮起した憐は、生きて光を伝える為に、持てる力の全てを解き放って遂にイズマエルを粉砕した!

 ウルトラマンにエボルトラスターを返し、礼を言いつつ別れを告げる憐。そのまま憐は意識を失ったまま救急車へと運び込まれる。瑞生の必死の呼びかけと口付けにひと時目を開けて応える憐。救急車の中から、憐のVサインが見える。孤門は憐が生きることを確信していた。

 その後、光は誰に受け継がれたのか…? 凪がストーンフリューゲルに触れた時、まばゆい光が彼女を包む!

解説

 憐編最終回! このクライマックスに向け、怒涛の展開を繰り広げてきたここ数話だったが、今回はじっくりと憐の最後の戦いを追う構成になっており、憐の戦いを見てきた我々に静かで深い感動を与えるエピソードとなった。特に瑞生との交流が丁寧に手抜きなく描かれており、憐編のクライマックスに相応しい爽やかな感動を得ることができる。

 憐と瑞生の丁寧な描写は、二人の沈黙がしばらく続いてしまうシーンが象徴しているように、シーン数や尺の削減に走ることのない構成によって成されている。憐にストレートに気持ちを伝える瑞生、それを受け、自分の無力さを儚んで瑞生の記憶を消そうとする憐、そんな憐を必死になって諭そうとする瑞生(この「喧嘩」シーンがまたいい!)、そんな瑞生の思いを受けて自分の光を走りきり、生きる決心をした憐…というふうに、互いの想いが連鎖して人々を救う力になる、という盛り上がりは、静かながらも非常に力強い筋運びで、まさに燃える展開。それが後半をほぼ丸ごと使ったジュネッスブルー最終決戦を、否が応でも盛り上げている。

 一方、姫矢と憐、2人のデュナミストと近い位置で触れ合うことになった孤門は、姫矢から伝えられた「光の意味」を、憐に伝える役割を果たしている。「光」そのものは、姫矢から憐に受け継がれたが、「光の意味」は一旦孤門を経由して受け継がれた形となり、ここで遂に孤門一輝の役割が顕在化したことになる。彼がウルトラマン=光にとって、必要な存在だったことは揺ぎ無い事実なのだ。ちなみにこのシーンでは姫矢の回想シーンが使用されており、たとえ回想シーンでも、姫矢の登場は嬉しい。

 憐編に入って和倉隊長の名言が頻出したが、それは今回においても存分に発揮された。「人の人生は肩代わりできない。どんなに大切な人間であっても。だからこそ、人は心を尽くして、人と絆を結ぼうとする」という、ネクサスのテーマの根幹に迫るようなセリフを、さらりと言って見せている。シーンの配置上でも、全く無駄のないもので、計算された脚本に思わず溜息が漏れた。そして、後に続く「見ていることしかできないのなら、見ていてやれ。最後まで」というセリフ。前者がネクサス世界を俯瞰するより広い視点に立っているのに対し、後者は孤門の立ち位置でのアドバイスで、このセリフがあることでグッと地に足の着いた印象を受ける。和倉隊長が理想論的なセリフを言いながらも常にリアリティが損なわれないのは、こういったセリフ配置の計算によるものである。

 さて、後半の尺を贅沢に使用したイズマエルとのバトルは、「もうメタフィールドを張る力が残っていない」というエクスキューズのもとで、大胆な市街地戦となった。ここぞとばかりにビルを壊し、ミニチュアの映り込みではマンションの立体駐車場がわざわざ作ってあったり、ウルトラマンが倒れ伏すシーンでは公園の植え込みが丁寧に作られていたりと、ネクサス全編でミニチュア特撮があまり描かれなかった鬱憤を晴らすかのような会心のシーンが連続。その迫力は、さすがウルトラというべき出来栄えであった。最終バトルに相応しい空中からの必殺光線も鮮やかで、着地と共に爆発するイズマエルのシーンは、姫矢編のオープニングを彷彿させる。

 平成ウルトラシリーズでは、最終エピソードを3~6話くらい引っ張って、壮大なスケールで展開してきたが、今回はイズマエルとの決着を事実上1エピソードで終えてしまった。放映期間の短縮も影響しているのだろうが、平成シリーズに慣れたファンには少々物足りない部分があったかも知れない。ただ、最強ビーストであるイズマエルを、短時間で粉砕しうるまでになった憐ならば、きっと生きることが出来るという希望を持たせた展開だと、好意的に解釈したい。

 次回は遂に最終回。ストーンフリューゲルに触れた凪の運命は!?