忍びの1「俺たちはニンジャだ!」

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 運命の悪戯か、奇しくも2が並ぶ日にスタートしました「ニンニンジャー」。今シーズンもよろしくお願い致します。

 忍者モチーフの戦隊は三度目となり、先達の「カクレンジャー」、「ハリケンジャー」とどのような差別化がはかられているか、非常に楽しみにしておりました。ところが始まってみると、これが凄まじい娯楽重視の作風。このやりすぎ感は凄いです。

 正に、ポカーンとしている間に情報を頭の中に詰め込まれる感覚。戦隊が採用してきたあらゆるモチーフを「あれもこれも」と取り込んでしまいながらも、ちゃんと第一話の役割に徹している辺り、さすがですね。

ネーミング

 「ニンニンジャー」というネーミング自体は、近年のパターンから言ってもそれ程インパクトはありませんが、「手裏剣戦隊」という枕詞が凄いと思います。「炎神」、「獣電」、「烈車」といった既存の音を造語に読み替える手法が散見される中、ド直球のタイトルでしたね。思えば、「カクレンジャー」は駄洒落ネーミングの始祖ですし、「ハリケンジャー」は初めて「レンジャー」の「レ」を無視したネーミングでした。忍者系は、正に何でもありです。

 むしろ、今回インパクトがあったのは、アカニンジャー、アオニンジャーといった、日本語の語感でしょう。色を日本語で呼ぶのは「ゴレンジャー」以来となります。和のテイストを前面に押し出した「シンケンジャー」ですらシンケン「レッド」でしたから、かなり思い切った方向に振り切った印象です。

 ただ、前シーズンも「トッキュウ1号」といった具合に完全に日本語だったので、その前例が露払いになったのではないでしょうか。実はそれ以前も、「ライブマン」にグリーンサイ(当時はRhinocerosに馴染みが無かった)が居たり、「ダイレンジャー」にリュウレンジャー、シシレンジャーといったネーミングを採用する等、「ゴレンジャー」以来完全に途絶えていたわけではありません。あえて漢字で書けば「電磁マン」、「獣連者」といった具合に、シリーズには日本語由来のネーミングが散見されます。

設定

 今回は忍者の血統がベースとなっており、その点では忍者の末裔だった「カクレンジャー」や、基本的に忍術学校の生徒に過ぎない「ハリケンジャー」とは一線を画す設定だと言えます。むしろ、和テイストの先達であり、「侍」が現代にもまだ存在するという世界観の「シンケンジャー」に近いものとなっていて、レッドがいきなりオープニングに登場して一戦を交える初回の構造もよく似ていました。

 さらに興味深いのは、アカとシロが兄妹で、他のメンバーは従兄弟であるという設定でしょう。兄弟戦隊はこれまで「ファイブマン」、「ゴーゴーファイブ」、「マジレンジャー」の三戦隊で設定され、他のシリーズでも一部のキャラクターが兄弟であるという設定のものが見られたものの、さすがに全員が従兄弟というものはありません。兄弟程近くはなく、かといって末裔程遠くは無い。この距離感の匙加減は好印象ですね。重要なキャラクターである祖父・好天を頂点とする血縁関係がイメージしやすくなっています。

 また、八雲が魔法学校に通っている(と事も無げに言い放つ)というぶっ飛んだ設定があったり、霞が優秀な理系大学生である事を強調したりと、これまでの戦隊の主要素を味付けとして取り入れている感があります。天晴と風花の父・旋風が忍者ではないという意外性も相俟って、血統とその宿命に縛られない自由さが漂っているので、話の幅が拡がりそうですね。

 敵は順当に妖怪なのですが、今回は「シンケンジャー」のテイストが付加されているように感じられます。「シンケンジャー」の外道衆は「不幸」を喚起する為に活動していましたが、今回の牙鬼軍団は「恐れ」を集めているという設定になっており、近似性があります。

 まだチラ見せ程度にしか出ていない為、全貌は次回以降となりますが、チェーンソーから変化するカマイタチのビジュアルが鮮烈に描写され、当期のコンセプトが明瞭に示されています。日用品(?)がある種の「種」によって怪人に変化するというのは、「ジェットマン」辺りを彷彿とさせますが、よりビジュアル的に洗練されていますね。ちゃんと妖怪に見えるデザインワークも素晴らしいです。

キャスト

 戦隊は、シーズン開始と共にリセットされるシリーズなので、ほぼ毎年、新人に近い俳優陣でキャスティングが行われます。

 近年は、演技経験のある年長者をブルーに配置するようになっていましたが、今回はそこまで明確ではないようです。霞役の山谷さんが、恐らくはドラマ出演等を最も多く経験しているくらいで、全体的にフレッシュな顔ぶれになっていると思います。

 その(特撮への出演も含めて)経験豊富な山谷さんですら、長期シリーズの初回ともあってかやや緊張気味に見えるのですから、他の面々は言わずもがなといった処。しかしながら、その堅さこそが実はこれが新シーズン序盤の魅力なんですよね。年間を通して、どう変化していくかが見られるのは非常に楽しみです。

 アカニンジャー=伊賀崎天晴には、西川俊介さん。殆どドラマ初経験に近いそうですが、スポーティな雰囲気そのままに、アクションを懸命にこなす姿に好感が持てますね。所々セリフが不明瞭な部分もありましたが、アフレコになるとそうでもないので、現場がかな~り寒かったのではないかと推察。

 アオニンジャー=加藤・クラウド・八雲には、松本岳さん。柔和な雰囲気がありますが眼力はなかなか鋭く、ブルーに相応しい。男性主役陣の中では最も演技経験があるようで、魔法と忍術を操るというトンデモキャラをどうスタイリッシュに演じてくれるか、期待が高まります。

 キニンジャー=松尾凪には、中村嘉惟人さん。メンバー最年少でいかにも少年といった風情でありながらも、どこか落ち着いた雰囲気がありますね。キッズモデル時代を含めると芸歴は長いそうなので、その辺りが影響してるんでしょうね。最年少イエローは色々なシリーズで見られる設定ですが、どれも良いキャラクターなので今回も期待です。

 シロニンジャー=伊賀崎風花には、矢野優花さん。「妹」と素直に受容できる清涼感と、ドタバタに対応出来るコケティッシュなキャラクター性が魅力的。所謂「アニメ声」ではなく、妙に大人っぽい声質とのギャップがまた良いですね。ダンスが得意だとの事なので、アクションにも期待がかかります。

 モモニンジャー=百地霞には、山谷花純さん。丁寧語で喋るキャラでありながら、悪戯好きな面を併せ持つという、近寄りがたいんだか人懐っこいんだかよく分からないキャラクターを、早くも掴みつつある辺りはさすが。山谷さんは、「宇宙刑事 NEXT GENERATION」で凄い芝居を披露していて必見です。既に特撮には何本か出演されているので、まずは最前線を走ってくれる事を期待しています。

 天晴と風花の父・伊賀崎旋風には、矢柴俊博さん。基本的に新人に近い主役陣のまとめ役。初回から既に独特の存在感を発揮している辺り見事です。今シーズンは、珍しく後見人キャラが二人も存在する事になるので、旋風はどの役回りを担当する事になるのか興味津々です。忍者ではないが造詣は深いという設定が絶妙で、優しい雰囲気が「ニンニンジャー」の良心をシンボライズしているように思えます。

 ラストニンジャと呼ばれる祖父・伊賀崎好天には、笹野高史さん。このキャスティングにはかなり驚きました。何の役で出て来てもハマる巧者で、正に名脇役。今回は、死んだと思われていた偉大な忍者が生きていて、巨大ロボ(オトモ忍)を密かに開発していたという、「バトルフィーバー」の鉄山将軍も真っ青のトンデモキャラを担当されますが、初回から「そんな人であってもおかしくない」と思わせる雰囲気は抜群! 今回は特に、飛び降りの着地がちょっとヨロッとする辺りの巧さ...筆舌に尽くしがたいです。「忍タリティ」なんていう「トンデモ語」をさらっと違和感なく披露する巧さも最高。

 声の出演としては、敵のボスに麦人さんをキャスティングしているのが嬉しい処。他にも、潘めぐみさん、松田賢二さんといった、いかにも素顔での出演がありそうなキャスティングに注目したいですね。

アクション

 まず、恐れを知らない天晴が斬り込んでいき、生身アクションを披露。戦闘未経験の四人がその姿に引っ張られるようにして決意するという流れになっています。この辺りの流れはドラマとしては至極単純ですが、往年の戦隊を彷彿とさせる潔さがありますね。第一話として、他の部分を重視したであろう事が分かります。

 変身シーンは、ガジェット重視の近年の中でも、最もガジェット重視のものに映りました。戦闘も含めて、トイのギミックがこれでもかとフィーチュアされますが、世界観にマッチしていて違和感はありませんでしたね。美麗な合成が異世界に誘うような感覚で迫ってくる、圧巻のシーンでした。

 名乗りは、一般人には多分真似の出来ないものに(笑)。これまでは、「サンバルカン」のバルパンサーがバック宙をする程度で、後は「ダイレンジャー」の高難易度の拳法名乗りがコピー困難なくらいでしたが、今回は完全に各種宙返りがメインになっているので、これは大変だなと。戦隊では終盤に素面名乗りがありますけど、今回はどうするんだろうかと、今から心配してしまったのですが(笑)。まぁ、バンクでの処理になっているので、合成やワイヤーアクションを駆使するのかも。

 変身後のアクションは、忍者らしく忍者刀主体で行くのかと思いきや、早速何でもありで来ました。所々忍術をフィーチュアしてましたが、あくまで戦隊アクションの集大成を狙っている感覚で、非常に立体的でしたね。各種ガジェットも全て出し惜しみなしで、詰め込みまくっているのですが、ちゃんと一定のテンポを保っていて凄すぎます。

 各人の個性を描き出す、ちょっとした動きも良いですね。特にシロがドジという描写が実に素晴らしい。必殺技を最も経験豊富なアカが単独で担当する辺りも巧いと思います。

巨大戦

 巨大戦は、パイロット版の性格を有する初回だけに、大充実。オープンセットや高精細のミニチュアワークのリアル感、そして戦隊の雰囲気を踏襲した荒唐無稽な描写の妙等、やはりこれまでのシリーズの集大成を狙っているようです。

 構成メカは、人型、ドラゴン型、ダンプカー型、犬型、リニアモーターカー型といった具合に、完全にバラバラなモチーフを採用していて、てんこ盛り感が半端ない。アクションの魅力やメカ特撮の魅力を一緒くたにして、勢いの中で見せるという凄い画面になっています。

 合体後のシュリケンジンも挑戦的なデザインで、人型のシノビマルが中央に「座る」というインパクトの強さ。操縦も「神輿」の要領になっています。ロボのスーツには、わざわざシノビマルが細かい動きをするギミックが仕込まれていて、シュリケンジンを操縦するシノビマルを、更にアカが操縦しているという構図を納得のビジュアルで描き出しています。

 必殺技のシーンでは、シュリケンジンだけでなくシノビマルも刀を振るっているように描かれており、これまたインパクトは絶大。いやぁ、凄いです。

雑感

 とにかく要素てんこ盛りという印象。その割にベースとなる設定は緩くなっていて、自由に振る舞う余地をわざと作っているようにも見えます。前作「トッキュウジャー」の、「設定はぶっ飛んでいるがドラマは意外にシリアス」という方向性とは異なり、「設定ぶっ飛ばしたからあとはヨロシク」的な勢いが漂っていました。

 近年のシリーズを見る限り、「飛ばしすぎて失速」というような事態にはならないと思いますので、この「何でもあり」な雰囲気のまま完走して欲しいですね。

 次回からは、しばらく各キャラクターの設定編が続くと思いますので、掘り下げを楽しみにしたいと思います。まずは、八雲から!