忍びの37「手裏剣伝説 〜ラストニンジャへの道〜」

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 パロディ満載の絵面が楽しい一編。パロディが目立つ為にナンセンスギャグ編と誤解されそうですが、オーソドックスな流れの中で凪の成長を見せる物語が熱く、逆にパロディ部分が浮いてしまったかのような印象すらあります。

 メインを張る凪は、常に他の面々にリードされる展開の中にあって、思慮を巡らせる暇を与えられたわけですが、それだけに彼らしくちゃんと答えを見付けていく流れが自然でしたね。割と好き勝手にキャラクターが動き回る中、一人でテーマを追い続ける凪の姿に「ニンニンジャー」の良心を感じ取る事が出来ます。

モクモクレン

 目目連をオリジナルとする妖怪。格子状の物体に無数の目が浮かび上がるという、人の恐怖心の権化のような妖怪ですが、今回はPCのキーボードでそれを再現している辺り、センスが抜群です。また、キーボードがモチーフとなっている事で、ゲームを主たる舞台としたストーリーとの親和性も高く、巧いキャラクター配置にもなっていると思います。

 ゲーム空間(?)の中であらゆる事象を操る事が出来るという能力を最大の特徴とします。また、ゲームに熱中する子供達をゲーム内に閉じ込めてしまうという能力もあり、こちらは順当な誘拐モノを再現しています。この誘拐モノとしての側面がある事で、今回が単なるナンセンスギャグにならない、地に足の着いた展開になっていると思う次第。「終わりの手裏剣」が目的ではなく、子供達を救うという大義が提示される事で、ニンニンジャーがヒーローの立場たるを確保しているからです。

 ちなみにこのモクモクレン、ゲーム外でも意外と強く、巨大戦ではSPACEキーの押下によって瞬間移動するという、結構な技能を発揮します。ただし、SPACEつながりでUFOマルを呼び出すという凪の機転により、瞬殺されてしまいましたが...。

ラストニンジャへの道

 今回のメインビジュアルは、勿論「ラストニンジャへの道」と題されたゲーム。好天が作ったと思しきRPGスタイルのゲームですが、PCで動いていて、しかも一昔前のドット絵で構成されているという事は、「一昔前のツクール系」の可能性も(笑)。ただし、好天製だけに忍術が前面的に採用されていて、モクモクレンの能力に等しい動作(即ち、凪達がゲーム内に取り込まれる)をし、実際に「体験」出来るという凄いものです。何でもありですな...。

 バトルに参加出来るのは4人までという縛り、3つの鍵を集めて終わりの手裏剣を入手するというストーリーは、初期ドラクエ(特に1~4)のエッセンスを選択したもの。RPGの定番を踏襲した、勇者タカハル、魔法使いヤクモ、妖精フウカ、僧侶カスミ、戦士キンジという「職業」は各々のキャラクター性をよく捉えたチョイスになっています。凪だけは忍者なので扮装が変わらないというのも可笑しい処。

 戦闘は粗いドットのテロップが流れるという、こちらもドラクエを彷彿させるビジュアル。この辺りの「再現性」はなかなか高く、見ていて楽しい気分になりますし、笑い処だとはっきり分かります。

 しかし、このビジュアルを見ると、「ニンニンジャー」のパロディが届くターゲットってどの辺りなんだろうか...という疑問が。多分「ケロロ」とか「銀魂」といったコンテンツが向いている層なんでしょうね。大きなお友達はそのまま楽しめますし、子供達は親が笑っている処を見て疑問を持つという流れですかね(笑)。

 ところで、巧いなと感心したのは、3つの鍵が揃わないうちに終わりの手裏剣が現れるというくだりです。ゲーム内では「リセット」の役割を果たすアイテム(現実世界でも同様の能力を持つとの言及)となっていて、凪はそれを使うか否かを「試される」という、一種の試練として扱われます。普通ならば、かなりの危難を経て3つの鍵が揃うという筋で順当である処に、しっかりと好天の主張を盛り込んでくる巧さ。そして実は日頃から一番ラストニンジャについて悩んでいる凪が、その試練にちゃんと応えるという流れも爽快です。

凪、一歩リード

 終わりの手裏剣を使うか否か逡巡するも、リセットによって子供達を救えなくなる事を由としない凪は、終わりの手裏剣を使う事なく、一人でモクモクレンに立ち向かう事を選択します。

 基本的に、「一人だけ動ける人物が仲間を救う」という定番の展開を踏襲しているわけですが、今回は救う対象が仲間ではなく子供達であり、しかも終わりの手裏剣というチートアイテムの誘惑も存在するとあって、その切迫感たるや定番の比ではないわけです。

 この、結構な切迫状況において、一人で何とかする事を選択する凪の強さは、前回のキンジの行動(一人で抱え込む)とは対極にあって実に興味深い処。終わりの手裏剣を好天に一時的に「託された」としても何の違和感もなく、むしろ好天が、最年少の凪を最も伸びしろのある候補者と見做している可能性すら垣間見えてきます。

 この流れを見ると、視聴者に「ラストニンジャレース」を最も実感させるキャラクターこそが凪であり、彼が感情移入を担っている事が分かります。シリーズ当初はポジションが曖昧で、自ら空気キャラと自虐するような回まで用意されていたのに、ここまで重要なキャラクターになるとは。なかなか感慨深いものがありますね。

終わりの手裏剣

 終わりの手裏剣は、ちょっと派手な忍シュリケンに変化し、一時的とは言え凪に凄まじい戦力をもたらす事になりましたが、やはり本来の能力が何なのかはまだ謎のままとされました。最終クールに至って謎を徐々に解き明かす段取りになっているものと思われます。

 一応、今回は、終わりの手裏剣を手に取る資格として、強さ、優しさ、そして覚悟が必要と説かれましたが、最後の「覚悟」こそが最大の鍵ではないかと思います。何だか悲壮な物語の予感がして来ますが、「ニンニンジャー」の揺るがし難い雰囲気とどう折り合いを付けていくのか気になりますね。

どうしたキンジ

 前回の一件で色々な壁を乗り越えた筈のキンジが、また怪しい行動をとっています。何となく思い詰めたような表情をし、天晴達の輪に入れない様子が描かれました。

 もしかすると、前述の「折り合い」をキンジが担う事になるのかも知れませんが、正直な処、「またか」と思ったのも事実。もうキンジを解放してやって欲しいと思うのが半分、キンジ以外に悩みそうなキャラがいない(凪も今回でほぼ決着した)から仕方ないと思うのが半分です。

 「追加戦士の美味しさ」を追求している面も否定出来ませんが、不遇振りを見る限り、あんまり美味しくないよね...と思ってしまうのです。

次回

 最終クールという事で各人の主役回が回っています。次回は八雲。敢えて驚愕のゲストには触れません!