忍びの44「最終決戦!ラストニンジャの試練」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 年明けから2週も空いたので、かなり遅くなってしまいましたが、本年もよろしくお願い致します。

 今の処、ブログも「動物戦隊」へ継続していく所存でございます。

 さて、最終決戦開始という事で、いよいよクライマックス感も漂って来ました。最終決戦の醍醐味の一つとして、ボスが本格的に動き出す事により、幹部連中が次々と散っていくというパターンが挙げられますが、正にその王道を踏襲した一編となりました。ただし、構成的には色々とヒネリが効いていて興味深い展開を見せています。

牙鬼幻月

 ピカード艦長こと麦人さんの、素晴らしいCVが禍々しく素敵な牙鬼幻月。もしかすると「ギャバン THE MOVIE」のドンホラーのように、最後まで正式には復活しないのではないか...と私は思っていたのですが、見事に復活しましたね。

 ボスらしい豪奢なデザインが存在感を高めていて、割と装飾が多めな幹部連中と並んでも、全く埋没しない辺りが見事ですね。いわゆる舞台装置系のボスではなく、スーツ系であるにも関わらず、です。スーツである事により、彼の出自が「戦国武将」であるという設定に説得力をもたらす一方、復活前に長く実体を持たないまま意志を示していた事で、その妖力の権化たる存在感との両立を成功させています。

 また、復活後、直ちに最前線に赴いて強大な力を見せつけ、一気呵成に危機編へと突入という安直なパターンを採用せず、敢えて牙鬼久右衛門新月に指揮を任せた上、更には晦正影のみが第一陣として出張るという流れも上々。私はこういうややスタティックな導入が好きですね。パワーバランスが一瞬にして崩れ去るパターンにも醍醐味はありますが、今回のようにそれまで紡いできたものを否定しない語り口の方が断然好きです。

十六夜九衛門改め、牙鬼久右衛門新月

 昨年末における衝撃の正体告白を得て、今回は正式に「本名」まで明かす事となりました。公式サイトによれば、彼を牙鬼幻月の息子とする予定はなかったとの事で、シリーズが「生き物」である事を感じさせるエピソードです。

 ただ、伊賀崎の抜け忍という設定と、牙鬼幻月の息子という設定が重なる事により、それぞれの衝撃度が薄まってしまったような気はします。旋風の忍タリティを奪ったという過去には、骨肉の争いを生む凄味すら漂いますが、それが牙鬼幻月の息子であったが故の行動だとされると、動機付けとしては「利己」や「傲慢」よりも「血脈」が勝ってしまう。その結果、牙鬼久右衛門新月のポリシーが、伊賀崎のニンジャとしての成り立ちに隣接してしまうんですよね。今回提示された「ラストニンジャになる為の条件」を考え合わせると、それが余計にちらついてきます。

 残り少ない話数で、彼がどのように二つの要素を昇華するのか、あるいは止揚するのか、楽しみではあります。私としては、牙鬼幻月を倒すという「親殺し」をして欲しい処ですね。天晴は「好天を殺さない」という回答を既に出しているので、善悪両者のポリシーの対比を見たい処です。

 ところで、今回最も私の背筋を寒からしめたシーンがありました。それは、牙鬼幻月による「牙鬼久右衛門新月=牙鬼幻月の側室に生ませた子」という告白です。その告白を聞いた際の有明の方の狼狽振り。牙鬼萬月に対して無邪気な母性愛を振りまいてコミカルに立ち回っていた彼女の、恐ろしく暗い面を垣間見ました。側室の子という設定は私の予想通りだったわけですが、ここに戦国絵巻における「妻達」の暗部を持ち込むとは露程にも思っておりませんでしたから、結構な衝撃を受けてしまったわけです。何しろ、正室の子は捨て駒で、側室の子が予言された者(状況を見越し、わざわざ牙鬼幻月によって仕込まれた者)だったのですから、有明の方の立場は「敵を欺くには...云々」のレトリックも通用しない程に揺らいでいます。この辺はやはり空恐ろしいです。

晦正影

 天晴の「最終試験」も含め、全体的に暗いトーンに支配されている一編の中、この第一陣を引き受けた晦正影の周辺だけは、「ニンニンジャー」の作風に則したコミカルな味付けを徹底していました。

 老獪な策士という雰囲気をずっと保ってきた晦正影。今回も「頼りにしている人に関する記憶」を改ざんして自分に従わせるという、実に手の込んだ巧妙な作戦を展開します。市井の人間に自分を守らせる事で手出し無用となるパターンは、古くから多用されてきた危機描写の定石ですが、見方を変えれば一般的な怪人の作戦に過ぎないとも言え、幹部の最後の作戦としては些かスケールの小さいものだったと言わざるを得ません。

 ただ、幹部の最後の行動がこれだった事で、敵側のドラマに偏重していく事を阻止したようにも見えます。今回は天晴の試練と晦正影との戦いを並行して見せているので、それぞれがなるべくシンプルに展開しなければならないのは明白でした。そして、それをちゃんと成立させていましたね。

 また、記憶の改ざん自体が重苦しい描写ではなく、晦正影が「偽の記憶をコミカルに演じている」事で笑いが入り込む隙間を作ったのは、賞賛に値するトピックです。中尾隆聖さんの芝居がこれまた見事にハマっていて本当に素晴らしい。しかも、風花と八雲の持つ天晴の記憶の多くに、ヘッポコなものがまじっているという「解決」が採用されるに至って更に笑いが増幅されるのですから、手腕の見事さに拍手ですね。

 そして、ダメ押し的に晦正影の「正体」を開示する辺りもニクい。ミクロ化して人間大のカラクリを操っていたというビジュアルショックが楽しく、その恐ろしさよりもユーモアを強調してきた処が実に良いですね。なお、「ハリケンジャー」のサーガインがこのパターンの「先輩」に当たります。

 正体を易々と見破り、反撃の隙すら与えないまま巨大戦まで一気に畳みかけていくニンニンジャーの成長振りが、今回のトピックの一つです。しかも、天晴を欠いた状態ですから、その成長振りを存分にアピール出来ていたと思います。

ラストニンジャ

 飄々とした好天の暗部が遂に語られました。ラストニンジャは先代から忍タリティを奪う事で継承されるものであり、かつて若き好天(笹野さんの実の息子さんである、ささの翔太さんの出演!!)は先代を斬ってラストニンジャを継承した...と回想されました。

 つまり、ラストニンジャは本当に「現時点でラスト」なのであり、その命脈は「師殺し」でしか保てないという、およそ子供番組のヒーロー側に置くべき設定とは思えないものでした。好天は、天晴(あるいは八雲達)に殺される事でラストニンジャを継承しようとしていたわけで、親子三代で割とほのぼのニンジャをやってきた(ように描写された)伊賀崎一門には似つかわしくない。まあ次回予告を見る限り、恐らくはこの伝統を打ち破る事で何かが突破される事になるのでしょうけど...。

 一方、「好天のタイムリミット」のような感覚は更に高まっており、もしかすると天晴の言う「調子の悪さ」は、ある程度手加減する事で、無理矢理天晴にラストニンジャを継承したかったという事なのかも知れませんね。それだと八雲達の立場がないものの、天晴のように悩みから無縁な人間こそが「師殺し」を達成出来ると踏んでいた可能性もあります。しかし、天晴はそれを固辞しました。ラストニンジャという肩書よりも祖父と孫の関係を選択したわけですね。繰り返し家族論を描いてきた「ニンニンジャー」ですから、ここがキーになると見て間違いなさそうです。好天が達成した「封印」を凌駕する結果を、天晴達のポリシーがもたらすことになるのか...楽しみですね。

次回

 「マジレンジャー」の家族戦隊を彷彿させる勢揃い変身が見られそうですね。ただし、今回はアカニンジャーが三人居るという、前代未聞のビジュアルになるようですが!

 復活した蛾眉雷蔵も気になる処ですし、最終話までテンションを維持してくれそうで、実に楽しみです。