Dandy in the Underworld (地下世界のダンディ)

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地下世界のダンディ(紙ジャケット仕様)

 私的には最高傑作に推したいアルバム。ボランが、自らを自分から最も遠い処へ置いて見せた前作から一転、ボラン・ブギーの集大成とも言えるべき作品に仕上がっている。

 黄金期のリズムやメロディの組み立てに忠実であり、なおかつ数々の挑戦によって得てきた財産を投入したニュー・ボラン・ブギーとも言える内容は、その充実度からボランの意欲を感じさせるに十分。ボランが自らをよりダイレクトに歌ったと思われるタイトル・チューンの素晴らしさ、ブギー色に溢れた「深紅色の月」、近作の作風が結実した「宇宙の舞踏会」...。あぁ挙げればキリがないのでこの辺りで打ち止めということに。

 しかし、結末を知ってしまった者にとっては複雑な心情を掻き立てられるアルバム。1977年9月16日、30歳のバースデイまであと2週間という時、妻グロリア・ジョーンズ(「ズィンク・アロイと~」からメンバーとして参加している)が運転する車が事故、助手席のボランは帰らぬ人となった。生前「30まで生きられないだろう」と語っていたのは有名な話だ。

 これだけ意欲に溢れた(ボランはショービジネスの世界で再起を賭けている時期で、その試みはかなり成功していた)アルバムが、天に旅立つ前の地上への置き土産に見えてしまう。歴史を前提に聴くと、華やかなブギーが一層寂しさを喚起する。

 「地下世界のダンディ」は銀河の彼方へと飛び去ってしまった。

原題

Dandy in the Underworld

邦題

地下世界のダンディ

パーソネル

※ クレジットが記載されていないため、割愛しました。

曲目
  1. Dandy in the Underworld (地下世界のダンディ)
  2. Crimson Moon (深紅色の月)
  3. Universe (宇宙の舞踏会)
  4. I'm a Fool for You, Girl (きみに恋わずらい)
  5. I Love to Boogie (ラヴ・トゥ・ブギー)
  6. Visions of Domino (ドミノの幻影)
  7. Jason B. Sad (悲しきジェイソン・B・サッド)
  8. Groove a Little (グルーヴはいかが?)
  9. The Soul of My Suit (心はいつもロックン・ロール)
  10. Hang-Ups (恋はあまのじゃく)
  11. Pain and Love (苦痛と愛)
  12. Teen Riot Structure (十代の暴走)
  13. Celebrate Summer (セレブレイト・サマー)
  14. Dandy in the Underworld (地下世界のダンディ)

※ 13、14はボーナストラックです。14はシングル・ヴァージョンです。