第三幕「腕退治腕比」

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 千明主役編。

 初回を丈瑠編、前回をことは編と、一応位置づけることはできますが、今回のようにはっきり一人のキャラクターを主人公に据えるのは初めて。

 一応、丈瑠とは対極の位置にある千明ですから、ドラマ的に盛り上がること必至なのです。


 今回のお話を強引にまとめると、ロクロネリの技への対策を、丈瑠と千明がそれぞれ立て、実行するというもの。

 本当にそれだけ。


 しかし、丈瑠がいかにも武士道を体得した者らしい対策であるのに対し、千明はゲームをヒントにしたトリッキーに戦術を取るなど、キャラクターに合致した戦い方を展開しており、豊かなイメージを構築してます。

 しかも、「シンケンジヤー」の根底に流れる重厚な侍のイデオロギーを、さらりと語って見せる軽妙な語り口というバランスの良さが光ります。


 また、千明は丈瑠を「殿」と呼び、事実上自分が家臣であることを認めたのですが、それによって千明が他のメンバーと全く同じ志を持ったのではなく、あくまで「殿」という言葉は、自分より上の実力を持つ丈瑠をリスペクトした千明の二人称に過ぎない、としたところが巧い。

 「殿」という記号は他のメンバーと同一としつつ、そのキーワードに込めた意思は、それぞれが異なるという、多面的な構造が広がりを生んでいます。

 千明の場合は、「殿」=「追い付き、追い越す存在」ということですね。


 この3話という早い時点で、千明を丈瑠に迎合させたということは、対立構造をズルズルと引っ張っていく必要がない程、色々な仕掛けがシリーズ設計の中に用意されている、ということの裏返しでもあるわけで。

 「シンケンジャー」、非常に楽しみになってきました。


 一方、外道衆の生命維持には、三途の川の水が欠かせないという設定を、今回初めて映像化。

 これにより、三途の川の水を人間界にも溢れさせるという、ちょっとピンと来ない外道衆の目的も至極真っ当に響くようになったし、敵の弱点を作ることで、ヒーローを追い詰めつつ見逃すという予定調和なシーンに説得力を持たせることも可能になりました。

 やっぱり無駄のなさが際立っています。


 では、今回も見所を中心に振り返ってみたいと思います。

 冒頭は、早朝より稽古するシンケンジャー達の図。

早朝稽古

 千明だけ盛大に寝坊しており、流ノ介に咎められ、丈瑠に竹刀で頭をぶたれる始末。

 千明は何と、毎日寝坊し黒子に着替えさせてもらっているという体たらく。


 「黒子さん達」という、いわゆる小道具が効いてます。

 時代物の舞台装置としての記号的存在と、こういったギャグの担い手を兼ね、「シンケンジャー」独特の雰囲気作りに大きく貢献しています。

 彼らの正体は不明ですが、式神の一種なんですかねぇ。

 このあたり、中盤でネタとして使われそうな気がします。


 一方、千明を叱責しまくる流ノ介も、実は寝過ごしてしまい、ギリギリ間に合ったものの、下がパジャマのズボンという状態。

 これは物凄く伝統的なギャグで、私が知っている限りでも、昭和41年の「ウルトラマン」に、アラシ隊員がスリッパのまま出動しようとしたり、ムラマツキャップが慌てて隊員服を後前逆に着ていたり、といったギャグが存在しました。

 そして、「シンケンジャー」のパンツキャラは流ノ介に決定ということに...(「ゴーオンジャー」では走輔でしたね)?


 丈瑠は「剣もモヂカラも侍の心得も全部一段落ちる」と千明を評し、千明のプライドをどんどん打ち砕いていきます。

 イヤなリーダーだという印象もあるかと思いますが、丈瑠の言うことはもっともだし、後に出てくる「浮世との決別」に際しては、このくらい洗脳染みた手法が必要なのかも、と思わせているのも確かです。


「何なんだよここは!学校かよ!同じ学校なら、高校の方が楽しかったよ!友達も居たし」


と千明は反発。

 千明にとっての「学校」はネガティヴなものであり、友達の存在が唯一楽しいと思わせる要素だったようです。


 彦馬に五百文字書くよう言い渡された千明は、稽古その他諸々を適当にごまかして逃げ出します。

五百枚

 居たねぇ、小学校の頃、こんな同級生が(笑)。


 さて、今週の外道衆は。


 ロクロネリが登場です。

ロクロネリ

 ロクロネリは薄皮太夫を、「血祭ドウコクがいなければ、今頃野垂れ死にだ」と揶揄していましたが、どういうことなのか?一応伏線ということにしておきましょう。

 逆に薄皮太夫は、ロクロネリを「卑しい」と見下しており、外道衆には身分制度的なヒエラルキーがあるものと思われます。ただし、上下関係はあくまで力の差ということになっているようで、言葉遣いに関しては、全員ほぼタメ口になっています。

 ロクロネリが言うように、薄皮太夫は「姫」なのか?何か色々と有りそうですね。


 さて、逃げ出した千明は親友らしき人物、コージとマサトに会っていました。

 ここで千明が、卒業式にも出られないままシンケンジャーとして招集されたことが明らかに。

 卒業式に出られないというエピソードに、何となく重さが感じられますが、戦隊ヒーローになった者が、突如世間から姿を消すという状態に生じる矛盾を、「そういう家柄だから仕方ない」というエクスキューズに落とし込んでいく手法が見事です。

 それは、千明の「一応納得してシンケンジャーをやっている」といったニュアンスのセリフに現れています。

 千明自体は別にシンケンジャーをやることに関して疑問を持っているわけではなく、侍の鍛錬に対して抱く面倒臭さや、丈瑠の態度が気に入らないという設定になっていて、そこが巧いのです。


 千明達の歓談中、ロクロネリが、たまたまそこに現れます。

 シンケングリーンに変身して立ち向かう千明。シンケンジャーであることに関しては疑問を抱いていない故、すぐ行動に移せるのが爽快でいい。コージとマサトの驚く様子もヒーローモノらしくていい。

シンケングリーン VS ロクロネリ

 腕を伸ばして地下を這わせ、地上の敵を奇襲するという、ロクロネリの「かいなのばし」に翻弄される千明。


 結局、コージとマサトはロクロネリによって負傷させられてしまいます。

コージとマサト

 丈瑠達が駆け付けますが、丈瑠もやはり「かいなのばし」に苦戦します。

 丈瑠の指示により、シンケンジャーは流ノ介の「シンケンマル・水の幕」によって瞬時に退却。便利な技だ(笑)。

水の幕

 一方のロクロネリは、三途の川の水切れを起こして退却。

ロクロネリ

 敵側の、よくある「覚えておけ!」的な退却の際の、いいエクスキューズになっているのは、冒頭に述べた通りです。

 人間界には普通に出て来られないという、外道衆の足枷として機能しているのも、色々な不都合を解決するのに効果的です。


 さて、千明は彦馬にこってりしぼられ、他のメンバーからも責められまくります。

 コージとマサトは2~3週間の怪我で入院したと、病院に搬送した茉子とことはの口から語られます。

 結構、被害が直接的に描かれているのは、最近のスーパー戦隊シリーズにしてみれば衝撃的ですね。


 丈瑠は、


「過去を捨てるのは、家族や友達を巻き込まない為だ」


と言い、千明の力不足ではなく、友達と会ったことを責めます。

 この論理、私個人的に関心しました。というより目から鱗でした。

 千明の未熟な腕の所為にするのではなく、もっとメンタルな、心構えといった部分を叱責するという...。

 そういった意味では、パワーアップ至上主義的な最近の子供番組への、アンチテーゼと言えるかも知れません。


 しかし丈瑠は、ロクロネリの技を明日までに破れるようになれと言い、今度は千明の腕に関するハードルを設けるのです。


「俺達より一段落ちるくらいなら我慢できるけどな、数段落ちてるんじゃ話になんないんだよ。侍やめろ」


という辛辣な言葉で千明を鼓舞(私には鼓舞しているように見えました)。


 メンタルな部分は友達が負傷したことで身に染みた筈。今度はフィジカルな部分を鍛えてもらう必要がある。

 そう丈瑠は考えたのではないでしょうか。


 面白くない千明は飛び出して行き、ネットカフェで悶々と過ごしていました。

千明

 いかにも彼らしい逃げ場なのが素晴らしい。


 ふと、ゲームを見て何かを思い付く千明。この「気付き」の描写は定番ですが、場面や心情を一気に転換するのに非常に適しています。


 千明はひたすら素早く動く稽古を開始。

千明

 そしてまた、丈瑠も稽古をしていました。

丈瑠

 それぞれが、全く違うアプローチでロクロネリ対策を練り、それぞれがその対策完成に向けて努力する姿は、互いの精神がぶつかり合うというイメージ描写で締め括られます。

 何ともカッコ良くてケレン味がありますね。

 千明が市街地で、丈瑠が屋敷で、という対比は、そのまま後半の戦い方へもリンクしていきます。見事。


 さて翌日、三途の川の水を充分堪能したロクロネリ達が、また暴れ始めます。


 迎え撃つ、千明以外のシンケンジャー。

茉子・丈瑠・流ノ介・ことは

 1人足りないと指摘されると、千明がストリートパフォーマンスを思わせる凄い宙返りで登場!


「おい丈瑠、今日から俺は、一人で戦うからな。決めたんだよ。こいつも俺が倒す!」


と、高らかに宣言します。

千明とシンケンジャー

 千明がバンクでない変身シーン(千明中心で回転するアングルをとりながら変身するという意欲的なシーン)を披露し、ここから大チャンバラの始まり。


 今回は、それぞれがシンケンマルによる得意技を披露。


 丈瑠は、シンケンマルから猛火を放ちつつ斬り捨てる「火炎の舞」。

 流ノ介は、シンケンマルから強力な水砲を放つ「水流の舞」。

 茉子は、シンケンマルを華麗に振り抜いて光と共に斬る「天空の舞」。

 ことはは、シンケンマルから土煙を発しつつ敵を斬る「土煙の舞」。


 そして、雷撃の秘伝ディスクをセットし、丈瑠が「雷電の舞」を披露します。


 一方、千明はロクロネリと対決。

 千明はロクロネリを挑発し、ひたすら逃げ回る戦法を取ります。


 途中、丈瑠が千明の前に現れ、ロクロネリの片方の腕を止めてみせるのですが、もう片方の腕に打ちのめされてしまいます。

 しかし、千明はそんな丈瑠に、自分ひとりで戦うことをアピールします。

 そう、千明はただ逃げ回っていたのではなく、腕が絡まって動かないようにしていたのです。

かいなのばし絡まる

 この戦法、触手系キャラでは定番中の定番。しかしながら、これほど建造物に被害を出しまくるヒーローというのも、なかなか凄まじいものがあります。

 後に千明は「一か八かの戦法」と言ってましたが、そういう行き当たりばったりな様子を表現したのだと見ていいでしょう。


 動けなくなったロクロネリに、シンケンマルで「木枯の舞」を決める千明!

シンケングリーン VS ロクロネリ

 単身で必殺技を炸裂させるのがいいですね。侍の名に相応しいです。


 当然、ロクロネリは二の目で巨大化。

 千明はやはり「自分一人で充分」だとして、熊折神で出ます。

熊折神 VS ロクロネリ

 この熊折神、動きが極端に可愛いですね。狙ってやっているとしか思えません。

 ファースト・インプレッションでは、デザイン的にはちっとも可愛くないと思っていたのですが、この動きはホントに可愛い。おかげで造形物まで可愛く見えてきました。


 熊折神は蹴飛ばされ、丈瑠は強制的に侍合体を開始。

 どうも5対の折神さえ同じ場所に揃っていれば、丈瑠の一存でシンケンオーに合体できるようです。これは珍しい趣向です。


 千明はこの時点では、自分の戦法に絶対の自信があった為、丈瑠に動き回るよう提案するのですが、丈瑠は、


「殺気があれば、必ず攻撃は読める!」


と言って、不動のまま目を閉じて集中しはじめます。

丈瑠

 さらに、シンケンオーの目の電飾を消灯するという描写が入り、あたかもシンケンオーが目を閉じたかのような雰囲気になります。

 この時、他のメンバーは恐らく目を閉じておらず、丈瑠がメインでシンケンオーを操縦(?)していることが分かります。


 見事に「かいなのばし」を見切った丈瑠!

シンケンオー

 右足で左腕を踏みつけ、柳生流のように構えたダイシンケンで右腕を封じています。

 巨大な手練の武将といった雰囲気が抜群。得意技を完全に封殺されたロクロネリは、ダイシンケンの露と消えます。

 今回は大ナナシ連中が出ませんでしたが、1対1の決戦ムードが高く、今回は出なくて正解だったと思います。


 戦いが終わり、千明は丈瑠に向かって、


「丈瑠!いや、殿、これからも一緒に戦わせてくれ」


と言い、片膝を付いて家臣としての姿勢を示すのでした。

千明

 丈瑠は、


「誰も、辞めさせるなんて言ってない」


と何とな~くツンデレな雰囲気を発揮(笑)。

 最初からそのつもりだったでしょ的な雰囲気が、丈瑠というキャラクターからイヤな奴という要素を削いでますね。この辺の巧さは突出してますよ。


 千明の態度を見た流ノ介は大喜び。


「殿~!ハッハッハッハ...!」


と緊張感のないハイテンションで丈瑠を追いかけます。

 流ノ介、完全にギャグキャラ化してます。まぁ、当然と言えば当然ですが。


 最後は、千明のモノローグで締め。


「俺のは、一か八かの強引な作戦だった。けど、あいつに有ったのは、アヤカシの技を見切る自信だ。あの時にもう、あいつは攻撃を読んでたし、俺の一か八かが成功したのも、あの時アヤカシの気が一瞬逸れたから...俺一人で勝ったんじゃなかった。絶対あいつを越えてやる。絶対」

丈瑠と千明

 丈瑠を追い抜くという、象徴的なカットで終了。

 丈瑠は余裕かつやや厳しい表情で歩いているのに対し、千明は全力疾走という図になり、2人の実力差と、そのギャップを埋める為に千明が為さねばならない努力が端的に示されています。


 なお、サブタイトルの「腕退治腕比」ですが、文字通り(ロクロネリの)腕を退治し、文字通り丈瑠と千明の腕比べになってました。天晴れ!