第19話「レックガーの暴走」

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レックガーの暴走

 新キャラ、レックガー登場。

 レックガーといえば、G1の「2010」に登場したジャンキオン部隊のリーダー。日本人と中国人を混同した、アメリカ発の極東キャラの極北とも言うべきキャラクターですが、「ザ・ムービー」ではウルトラマグナスを蘇生させたりと、割と要所要所でキーとなる活躍をしていました。

 「アニメイテッド」では、(原語版がどうかは分かりませんが)東洋的な匂いがかなり薄れていて、オールスパークの作用で誕生した他のロボット生命体と同様に、やや単純で知性に乏しい感じのキャラクターになっています。G1のレックガーが、妙な言葉遣いの裏に卓越した(ちょっと怪しげな)知性を匂わせているのとは、対極です。

 レックガーの声は岩田光央さんが担当。「ビースト」のシルバーボルト役で、かなりぶっ飛んだ演技を披露してくれていた岩田さんですが、今回もキャラクターに相応しい賑やかな仕事を聞かせてくれます。約20分にわたってほぼ喋りっぱなしであり、あのトーンで喋り続けるパワーが凄いです。

 今回のストーリーは、オールスパークの力で、たまたまゴミ処理場から誕生したレックガーが、出会う人々の言葉の影響を受けて、自由気ままに行動することによって起こる騒動。そこに、パウエルの狡猾な戦略とオールスパークの欠片を奪取したいメガトロンの思惑が絡み、危険な事態を招いていきます。

 主役キャラクターは、レックガーは別格として、ラチェットとバンブルビーという組み合わせ。気がつけば、他のオートボット達は冒頭にちょっと登場したのみで、後は一切登場しない徹底ぶり。トランスフォーマーシリーズは、日本側主導のものを除いて、必ずしもリーダーキャラが主役ではないというポリシーが、ちゃんと貫かれているようです。G1では、オプティマス自体全く登場しない回や、ほぼディセプティコンのみで進む話もありましたからね。

 では、細かい処は続きの方で。小ネタも多かったので、キャプ画も少し多めになりました。

 物語は、パウエルの思惑で、市とサムダック社によるゴミ処理ロボットの契約に支障が出ており、ゴミ処理ロボットのメンテナンスが滞って、街にゴミが溢れているという状態から開始。

 パウエルの狙いは、わざと街にゴミを散乱させ、市民の不満が頂点に達した頃に、ある新製品を持ち出して一気に利益を得ようというもの。

 その新製品とは、アイザック・サムダックが作ったナノロボットを改修した、ゴミを次々と消化するマイクロロボット「ゴミ食べくん」。

レックガーの暴走

 一見液状に見える物体ですが、これがマイクロロボットの集合体なのです。

 市民の不満が募っているので、この新製品に市長(というか多分市議会)も飛びつくだろうというのが、パウエルの予測です。メガトロンのテクノロジーを利用しているという後ろめたさのあるサムダックは、その技術を優しさの見えるベクトルに向けていましたが、パウエルは完全に利益主義であり、手段を選ばないという印象です。

 その頃、ゴミの散乱に頭を悩ませる市民を助けるべく、オートボット達はゴミ処理を手伝っていました。

レックガーの暴走

 オプティマスがゴミを積んだ荷台を曳き、他のメンバーが処理場にゴミを下ろすという、日本ではイロモノのギャグになりそうなシーンでも、正統派トランスフォーマーの世界ならば、ごく自然。

 上記イロモノのギャグの例を挙げるとすれば、う~ん…全然思いつきませんが、例えば、「∀ガンダム」でガンダムに洗濯物を干したり、牛を運んだりといった感じですかねぇ。あれは世界観と意外性が物凄く奇跡的なバランスで成立した、ギャグには遠い素晴らしいシーンでしたけど。

 さて、オートボット達が処理場から去る際、サリのキーが反応し、その光がゴミに照射されます。サリやオートボット達は、日常的な光景ということなのか、もう殆ど意に介していないのが笑えますけど、ゴミの中からレックガーが「誕生」!

レックガーの暴走

 G1のレックガーはゴミを再構成して創造する天才でしたが、このレックガーはゴミがオールスパークによって再構成された(んですよね)わけで、引用と創造の絶妙さを感じる事が出来ます。

 ここで、アングリー・アーチャー再登場。いつもの「猪木ギャグ」をこれでもかと披露しています。

レックガーの暴走

 アングリー・アーチャーの声は小西克幸さんなのですが、現在「ゴセイジャー」でゴセイナイト役も担当されているので、そのギャップに一際笑いを誘われます。

 レックガーは、アングリー・アーチャーに出会い、彼の言うままに成り行きで「泥棒仲間」に。

レックガーの暴走

 アングリー・アーチャーを無理やり乗せて逃走して行きます。このシーンによって、レックガーは、言われた事を単純に受け入れて行動する思考パターンを持っている事が分かります。

 また、「レックガーって呼ぶぞコノヤロー」というアングリー・アーチャーのセリフにより、レックガーに「レックガー」という名前が付いた(ややこしくてすみません)のも特筆すべき事項です。レックガーの名付け親は、アングリー・アーチャーなのです!

 一方、G1ファンにとって驚きの事態が待ち構えていました。

 ラチェットとバンブルビーが渋滞にハマり、サイレンを鳴らしてく緊急車両の特権を享受した処で、急に飛び出してきた一人の青年。彼は、妻の陣痛が始まっていると訴えます。ラチェットは市民の為に働くという意味で、姿通り救急車の役目を果たすことにするのですが、その夫婦とは…。

レックガーの暴走

 何と、スパイクとカーリー!

 以前、ダニエルと思しき人物が出てきましたが、今度はその両親であるスパイクとカーリーが出演なのです。

 スパイクは、G1におけるいわゆる人間側の主役。無印ではオプティマス達の良き友として、「2010」では地球の大使として、「ザ・リバース」では、惑星サイバトロンを救うキーマンとして活躍しました。思えば、「ザ・リバース」におけるスパイクの活躍が、トランスフォーマーが有機生命体との関係性を意識する契機になったのではないでしょうか。日本(地上波)で正式に放映されなかったのが残念です。

 ちなみに、この二人は、今回かなり酷い目に遭ってしまいます。ラチェットなんか、元々病院の場所も知らずに搬送しているくらいですからねぇ。この珍搬送劇には色々あるのですが、割愛。

 一方で、アングリー・アーチャーは、とある輸送車に目をつけていました。この輸送車こそ、「ゴミ食べくん」の輸送車。レックガーも同調して輸送車を襲撃します。

 現場に居合わせたラチェットは、レックガーと対峙。

レックガーの暴走

 しかし、ゴミ食べくんのカプセルはアングリー・アーチャーの手に。

レックガーの暴走

 この一連のシーンで、レックガーの投げつけたジャンクの中に、注目すべき物体が。

レックガーの暴走

 このバイクのような物体、G1レックガーのビークルモードにそっくり!

 今回はこういったファンサービスな小ネタが実に多いです。しかし、かなり気をつけていないと気が付きませんね、こりゃ。

 レックガーは、サリの「悪者を捕まえるの!」という一言で、「オートボットの」レックガーとなり、アングリー・アーチャーを追い始めます。

レックガーの暴走

 オートボットのエンブレムまで入っているとは、背中のボックスはさながら四次元ポケットのようです。

 結局、ゴミ食べくんのカプセルは逃走するアングリー・アーチャーの手から落ち、レックガーの背中のボックスに入ってしまいます。レックガーのボックスには、実はオールスパークの欠片が入っていて…。

レックガーの暴走

 こんな感じで、事態は危険な方向に転がっていきます。この数珠繋ぎのようなドライヴ感はいつもながら素晴らしいですね。

 レックガーが容易に騒動の源となる事を危惧したラチェットは、「お前が出来るのは運ぶことだ。ゴミをな!」というちょっと乱暴な言葉をレックガーに浴びせます。

 するとレックガー、素直にその言葉のままに動き始めますが、ゴミを集めて運ぶのではなく、逆に持ち合わせたゴミを街中に撒き散らし(=運び)始めてしまうのでした。

レックガーの暴走

 レックガーのビークルモードは、塵芥車ですね。で、ラチェット達は、こんな目に。

レックガーの暴走

 その頃、オールスパークの反応を探知したメガトロンに遣わされたラグナッツが、レックガーと出会います。

 レックガーはラチェットに「オートボットではない」等と言われており、ラグナッツの「じゃぁお前はディセプティコンだ」といった主旨の言葉にも素直に従ってしまいます。

レックガーの暴走

 ちゃんとエンブレムを付け替えるあたり、レックガーにはオートボットとディセプティコンの区別がはっきりと分かっている模様。

 パウエルにゴミ食べくん回収を依頼されたラチェットとバンブルビー。サリのキーの反応を頼りにレックガーの元へと辿り着きます。バンブルビーの「マイクロロボットを渡せ!渡さないと二度もぶつぞ!」というセリフが秀逸。たまにこんな感じでガンダムのパロディが出てくるので、ガンダムファンの方は注意して聴いてみて下さい(笑)。

 で、素直なレックガーなので、結局ラグナッツに付いていくのですが、素直過ぎて何が起こるか分からないドタバタ振りこそ、今回の真骨頂。

 ラグナッツの上に、オールスパークの作用でパワーアップしたゴミ食べくんを垂らしてしまうのです。

レックガーの暴走

 どんどん侵食されるラグナッツは、レックガーにその除去を頼むのですが、素直なレックガーは、侵食された箇所ごと切り離してしまうのでした。

レックガーの暴走

 ネジ2本程度で、この巨大な後部パーツが留まっているというのが、笑えるポイントです。

 このまま、レックガーはゴミの輸送船に落下。その様子を見ていたバンブルビーは、厄介な問題がいっぺんに片付いたと喜んでいました。しかし、ゴミの輸送船がそのまま港に接触すれば、街はゴミ食べくんに侵食されてしまい、大惨事に陥ります。

 「僕はレックガー!僕に出来るのは運ぶことだ。ゴミをな!」

レックガーの暴走

 レックガーはこの輸送船を陸地に運ぶ気です。

 ラチェットは、レックガーがオートボットではないなどと言ってしまった自分の口の悪さに責任を感じており、事態を自分一人で収拾する決意を固めます。

 「こげな事になったのも、俺の口の悪さが原因よ」

レックガーの暴走

 ラチェットはとりたてて口が悪い印象はないのですが、一応、劇中では口が悪いということになっていて、サリの反応等でそれが感じられるようになっています。

 輸送船でレックガーと対峙するラチェット!

レックガーの暴走

 カッコいい。

 しかし、レックガーは「ゴミを運ぶ」という目的にとりつかれており、遂には目を赤く発光させる(=ディセプティコンになる)までに至ります。

レックガーの暴走

 オートボットとディセプティコンの違いを、ここまではっきりと「目の色」で表現したシーンがあったでしょうか!?

 そしてここからは、ラチェットというキャラクター造形の素晴らしさを見ることが出来ます。

 ラチェットは「オートボットに入って、敵に一度もしたことのない事」をすると言います。レックガーに殴りかかるか…と思いきや、手を差し伸べるラチェット。

「謝るよ」


「自分がなりたかロボットになればよかと」

レックガーの暴走

 レックガーの本心は「ヒーローになりたい」でした。ディセプティコンに踊らされながらも、深層心理ではヤケになっていたのかも知れません。

 レックガーは希望通りオートボットになり、ボックスにゴミ食べくんを入れたまま海に飛び込む事で、自らを犠牲にしてゴミ食べくんを殲滅したのでした。

レックガーの暴走

 必死にレックガーを引き揚げようとするラチェットが、グッと来ます。結果的にゴミしか引き揚げられませんでしたが…。

 その後、この騒動の大元である市長とパウエルを、強制的に仲直りさせるラチェットの姿がありました。

 パウエルはゴミ収集ロボットの修理を確約し、市長はサムダック社との契約を継続する意志を表明します。

 ラチェットらしい解決法ですね。

レックガーの暴走

 ちょっと切ないラストかな…と思っていたら、レックガーは不死身でした。ただし、自力で浮上出来ないらしく、魚に助けを求めていましたが。

レックガーの暴走

 新キャラがレックガーたった一人であるにも関わらず、実に濃い。パウエルの思惑やら、ディセプティコンの暗躍やらもちゃんと網羅してあって、なおかつラチェットの人間(?)性を浮き彫りにする。脱帽です。

 ちなみに、音仏家のコーナーでは、音仏ゆうかさんのこんなクールな冷笑を見ることが出来ました(笑)。

レックガーの暴走

 色々と厳しい声も聞かれますが、私はこの音仏家のコーナーが割と好きですね。出演陣の肩の力も思いっきり抜けてきましたし。