始発駅「特急烈車で行こう」

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 新シリーズ出発進行!

 という事で、毎年この時期はソワソワしてしまいます。

 戦隊の初回はパイロットフィルムの意味合いを備えるので、バンクを含めて特撮の分量も多めになり、前作との差別化を意識した演出がフルパワーで盛り込まれるので、俄然楽しみになってしまうわけです。

 デザイン、企画意図等、様々な面で奇抜な「トッキュウジャー」の初回は、それら奇抜な要素を軽々と披露しつつ、手堅い構成力で見る者を引き込んでいく辺り、さすがといった処。基本的な設定をハイテンポで紹介しつつ、アクションや特撮もふんだんに見せていく手法の巧さは、歴史あるシリーズならではだと思います。

 今回の布陣は、メインライターに小林靖子さん、パイロット監督に中澤祥次郎さん。つまり、「シンケンジャー」と同様の布陣という事になります。多少乱暴な論ではありますが、小林靖子さんはガジェットや設定が荒唐無稽であればある程、その筆致がハイブロウになる傾向があり、同様の電車モチーフである「仮面ライダー電王」や、変身に書道を用いる侍という「シンケンジャー」といった作品に、その確かな成功例を確認する事が出来ます。

 同じ小林作品でも、近作の「ゴーバスターズ」は、情報テクノロジーをフル活用したファンタジーという意味で充分荒唐無稽であったものの、ガジェットの硬質感の中で、あまりキャラクターを自立させられなかった(自由に動かせなかった)ように見受けられました。全体のトーンとしては「靖子節」とも形容出来得るものが流れてはいましたが、それが戦隊独特のカラーである「突き抜けた感じ」をスポイルしてしまった印象がありました。要は「真面目だった」わけです。

 今回は、その「突き抜けた感じ」を「鉄道にまつわる約束事」の強引な埋め込みによって達成しています。この、「画面で遊んでいる」感覚こそが、現在の戦隊の肝(そして元祖「ゴレンジャー」が標榜していたもの)なのかも知れません。

 それらの約束事に関して言えば、鉄道をスタイリッシュな違和感として据えた「電王」よりも徹底していて、烈車は空間を超越する事もあれば在来線を走る事もあり、車掌はより車掌らしく、アクションの際に流れる音声は鉄道アナウンス風、一目で鉄道モチーフと分かるヒーローのデザイン、敵も鉄道モチーフ...といった具合に、徹底的に一つの「きっかけ」を突き詰めていく作風になっています。

 中でも、衝撃的な「乗り換え変身」は、戦隊におけるフォームチェンジの可能性を「ゴーカイジャー」とは別のアプローチで探ったものですが、ここでも「レッシャーを交換して乗り換える」という手順が披露される(しかも、「お急ぎの方はお乗り換え下さい」というご丁寧なアナウンスが付く)事により、あくまで鉄道にまつわる約束事をパロディとして取り入れる姿勢が貫かれています。

 他にも、巨大戦へと移行する際に改札をわざわざ通る事を「強制」されたり、車内の電光掲示板に逐一現状が表示されていたり、トッキュウオーへの合体の際に指差喚呼が行われたりと、その徹底振りは最早清々しい程であり、あまりの濃口に早々の飽きが到来しないかと、心配になってしまいます(笑)。しかし、「手順の面倒臭さ」はパロディを用いる上での有効な武器であり、そこから生じるユーモアはビジュアル面で大いに利用価値がある一方で、ストーリーのきっかけ作りに貢献するものでもあります。特に小林さんはその辺りが巧いので、期待出来るのではないでしょうか。

 「画面で遊んでいる」と言えば、必殺技であるレンケツバズーカはその王道っぷりが嬉しい合体必殺武器ですが、発射(発車?)する弾丸に相当するものが、「ゴレンジャー」のゴレンジャーストーム・ニューパワー作戦や、ゴレンジャーハリケーンの特徴となる「標的に合わせて変化する」路線を踏襲! このコミカルな味付けには賛否あるかも知れませんが、むしろルーティン化した必殺技の描写に一石を投じるに有効な手法だと思います。

 ここまで見てきた要素で共通しているのは、本作のテーマである「イマジネーション」。これは子供時代の遊びの中で重要な位置を占める想像力についての言及で、実際にそれを解説するシーンが劇中冒頭にも挿入されています。正に、トッキュウジャーである事を実現する「面倒な手続」は「電車ごっこ」の延長線上にあり、豊かな想像力の具現化であると言えます。それは即ち、子供のごっこ遊びに対する訴求力を有しているという事であり、マーチャンダイジングに関してもすこぶる有利な画面作りなのではないでしょうか。

 あと、本作の「イマジネーション」が、「電王」の「イマジン」とリソースを共有しつつも、解釈が全く異なっている事に注目。「電王」の「イマジン」は想像力(というより記憶)を利用するネガティヴな概念でしたが、本作の「イマジネーション」は想像力が自らの力となるという、ポジティヴな概念になっています。勿論、これから先はどうなっていくか分かりませんが。

 さて、フレッシュな印象を与えてくれるキャスト陣、相変わらずキャラクター設定とのマッチングが良い感じです。しかも、幼少期のキャスティングが秀逸過ぎる程秀逸で、ライトが他の面々を幼少期の表情と重ね合わせて思い出すシーンでは、その根拠が納得出来るレベルで示されていました。よくぞこれだけ似ている子役を探したものだと思います。

 ここで初回を見た上での印象を振り返ると、ライトは、近年やや避けられる傾向にあった、無垢な自我を強みとするタイプ。「ゴーオンジャー」の走輔のようなタイプに、「ゴセイジャー」のアラタのような少年っぽさを掛け合わせたような、疾走型リーダーという感じでしょうか。印象としてはユルい感覚でありながら、結構アクション自体は派手でシャープというギャップを持ち、今シーズンも生身アクションへの期待が高まります。

 トカッチは、これまた「ゴーオンジャー」の連のような知性派に、「キョウリュウジャー」のノブハルが持つコメディリリーフの要素をトッピングしたような、ユーモラスなキャラクターとして成立。恐らく「ジェットマン」の雷太以来となるであろう男性メガネキャラで、これはかなり挑戦的な設定ではないかと思います。変身前後でキャラクター性の統一感が随一なのもこの人。

 ミオは、「バイオマン」のミカやジュン、「ゴーカイジャー」のルカ辺りが持つ基本的な活動的ヒロインの系譜。変身後はいかにもな剣道アクションが新鮮で、明確に戦闘系の雰囲気があります。ただし、笑顔がかなり柔和な印象を与える美人なので、尖った感じがなく、そこが極めて興味深いヒロイン像を造り出しています。このキャラクター性がどう活かされるのか楽しみですね。

 ヒカリは、やや斜に構えたキャラクター。しかも戦闘における手練の雰囲気という点で、カラーは異なりますが「ゴーカイジャー」のジョー辺りを彷彿とさせるものがあります。基本ポジションは「デンジマン」の緑川に近いですが、緑川ほどの「実は熱い」という感じはなく、やや浮世離れしている面々の中にあって、地に足を付けたキャラクターとして立ち回っていくのかも知れません。演ずる横浜流星さんの経歴からすると、アクションに期待してしまいますね。

 カグラは、典型的なピンク型ヒロインというわけではなく、特に「ジェットマン」の香に顕著な、実戦向きでないキャラクターというのが凄い。ただし、想像力が非常に豊かなので、思い通りのキャラクターに「成り切る」というアイディアが光っており、実際にコミカルなイメージシーンを体当たりで演じている辺りに斬新さ(ちょっと平成ライダー風味ですが)を感じられます。こちらも素顔が柔和な感じなので、独特の雰囲気を本作に与えていますね。それにしても若い(笑)。

 そして、何と言っても今回のキャスティングの目玉は、関根勤さんでしょう。

 この車掌は、関根さんじゃないとダメだ。そう断言してしまいそうになるくらい、はまり役です。ヘンに芝居がからない肩の力の抜き方が素晴らしく、「トッキュウジャー」のモヤのかかったような雰囲気の半分は、関根さんが担っていると言っても過言ではないと思います。この良い意味での「現実感のなさ」は本当に素晴らしいですね。関根さん自体は、「ゴレンジャー」のペギー七変化編へのゲスト出演があり、実に38年ぶりの戦隊出演。凄い話です。

 敵キャラ「シャドーライン」に関しては、今回は描写は少なめ。スタイリッシュなデザインの戦闘員が新味を出している以外は、あまり突出した印象を出していません。ただ、暗色を基調とした統一感は、前作「キョウリュウジャー」の派手なトーンと明らかに一線を画しており、より悪役っぽいラインでまとめられています。謂わば、怖いのです。この中での注目は、グリッタ嬢の声を務める日髙のり子さん。もはや説明不要のベテランですが、戦隊には関根さんの「37年ぶり」に匹敵する「34年ぶり」の出演。ただし、前回は「バトルフィーバー」でのレギュラー・ケイコ役として顔出し出演なので、声優としての出演は今回初となります。ケイコはもう一人のヒロインと言っても良い程重要なキャラクターでしたから、印象に残っているファンも多いのではないでしょうか。今回は実に醜悪なデザインのキャラクターを担当されていますが、そこに可愛らしい声を当てているのが面白い処です。

 こんな感じで始まった「トッキュウジャー」ですが、ぶっ飛んだパロディ精神とビジュアルでありながら、どことなくやや影のあるような空気が漂っている感覚なのは、やはり「靖子節」が効いているからなのでしょうか。何となく市井の人々を不安にさせる「神隠し」の空恐ろしさや、どことなく現実世界から浮いているような烈車の乗組員、「死んでいるも同然」という、幕開けに全く相応しくない不吉なターム。これらの要素が、光と影のコントラストを強めています。この独特のトーンが、吉と出る事を願う処です。初回を見る限りは、全く心配ないと思っているわけですが(笑)。