第17話「エクストラプレイヤー、乱入」

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 追加戦士(?)登場編...ですが、またまた変則的な小技を繰り出してきた感がありますね。

 予想だにしなかったことですが、メインを張るのはセラ。最近話題の加藤憲史郎くんもゲストで登場し、ハートウォーミングな交流譚としてオーソドックスな仕上がりとなっています。これだけでも満足の一編が完成するところに、「ザワールド」なる人物が突如乱入してひっくり返してしまう辺り、「エクストラプレイヤー」たる意義がありました。

 良く言えば絶大なインパクト。悪く言えば取って付けたような感覚。結構危ういバランスで成立している気はしますが、着地点の披露は次回以降ということでしょうか。

トランパス

 今回はモチーフが実に分かり易いデザインで、今シーズンの中では異色な部類になるかと思います。トランプのキングの絵柄を大胆に造形化することで、その能力を事細かに説明することなく印象付けていますね。個人的な印象ですが、トランプの絵柄は結構日本人の好みから外れているような気がしていまして、トランパスの得体の知れない不気味さの源流になっているのではないかと考えます。

 さてその能力は、無数のカードをバラ撒いて人間の額に貼り付けるという至極単純なもの。額に張り付いたカードはトランパスのカードケースを破壊するまで取ることが出来ず、カードに描かれたマークを同じくする人間が出会うと強烈な電撃が走るという、なかなかの鬼畜っぷりです。しかし、ビジュアルが地味な割にはルールが回りくどく、少々物語に入り込みにくいきらいがありました。セラと健斗のドラマに関しては、その回りくどさを巧く利用しつつ展開していたので、さすがだなあと思いましたが。

 そのカードのマーク自体は、自分で線などを書き足して別の図形にしてしまえば、とりあえず電撃を回避出来るお粗末なものとされ、コミカルに仕立てられました。電撃の痛みの描写自体は、ジュウオウジャーの面々を使ってかなりシビアなものに仕上げられていますので、コミカルなオチを用意してバランスをとったものと思われます。また、その「マーク改変」のヒントを真理夫が授ける辺りも非常に良いテンポ感でしたね。

 なお、トランパスの被害シーンで最も高い試練を要求されたのはタスク。メンバー唯一の水落ちとなっており、最近のタスクの受難振りはなかなかのものですよね。レオの危険な姿勢での着地(?)も鮮烈、また、アムがカフェへの墜落後にペコっと謝ってから立ち去るといった細かい描写が光り、今回メインを務めるセラと、キャラクターの棲み分けを印象付けていました。

健斗

 トランパスによって父親とはぐれてしまい、なおかつ父親とは同じマークのカードを貼り付けられて顔を合わせられないという設定の健斗。子役ゲストが被害者となるケースは、意外と近年少ないように思いますが、やはり芝居のスキルを要求されるからですかね。かつては「仮面ライダー」の五郎や「ゴーグルファイブ」のコンボイ達のような芸達者と、それ以外のゲスト子役のスキルに雲泥の差があっても、あまり気にしなかったように思いますが、近年は演出の面でそうもいかないのかも知れません。

 話を元に戻します。

 この健斗には、セラの弟に関するトピックが良く効いていて、弟の存在を重ね合わせているセラの内心が、ちゃんと透けて見える辺りが巧いです。弟は当然ながらジューマン態でしか回想されないので、健斗と同じような年格好なのかどうかは分かりかねますが、年下の男の子という意味ではセラにとって大差ないとしておけば充分でしょう。

 ゲスト子役は一風変わった個性派キャラクターとして登場することも多いですが、今回はオーソドックスな被害者としての描写に終始しており、途中でセラの「時間稼ぎ」に気付いて悪態をつく辺りまで実に子供らしい感じでまとめられていて好感が持てます。従って、セラが健斗を義務感などではなく本気で心配している様子に説得力が生じ、余計な感情を入れずにストーリーに集中することが出来るわけです。

 それにしても、加藤憲史郎くんは巧いですね。お兄さんは既に名子役としての地位を確立している感がありますけど、弟くんも有望です。

セラ

 今回はこれまでのセラのメイン回とは一味違う感じでしたね。より多面的な彼女の姿を見られました。

 セラのトータルイメージであるちょっとお茶目なクールビューティという部分は、今回も遺憾なく表現されていました。トランパスに散り散りにされた際、五人の中でもとりわけ冷静に対処していたのが印象に残ります。また、カードの件が解決するまで、健斗とその父親を会わせるのを何とか先延ばしにしようとする思慮の描写も奮っていて、正当派戦隊ヒロインの体現者といった感が在り在りと伺えました。

 一方で、トランパスに対して容赦ない怒りをぶつける様子には、「実は激情家」という面が覗きます。アムとの差別化を図るに当たって、セラにはちょっと怒りっぽいという属性が与えられていると感じますが、それが良い感じに現出したのがクライマックスにおける怒濤の流れでした。自ら先陣を切って変身、名乗りをあげ、一気呵成に攻め込むシーンには胸のすくようなカタルシスがありました。アクションのテンポも全体的に早めになっていて、物凄いことになっていましたね。また、それだけにその直後の、ザワールドによるどんでん返しが強烈に映ることになります。

 そしてもう一つ、弟に見せていたであろう「姉」の面が鮮烈に描かれました。セラのキャラクター作りに影響している要素の一つとして、目元をキツめに見せるメイクが挙げられると思いますが、それがあってもなお、姉たる表情が素晴らしく優しげで、これは最早芝居が云々という話ではなく、演者である柳さんの素が出ているんだろうなという感じ方になりました。かといって、キャラクターがぶれているかというとそういうわけではなく、むしろセラの本当の姿がこれだろうと思わせる説得力すらありましたね。「正当派戦隊ヒロイン」という表現をしましたが、「子供目線に降りてくるお姉さん」という感覚が物凄く的確に表現されていたと思います。

 また、カードのマークを改変するアイディアを聞くと、自分に対して容赦ないのもセラの凄味でしょう。描き込む対象はカードだけでいいのですが、大和が真理夫に「メイク」されたのを見た影響なのか、大胆に自らの顔面に至る縦線を入れてしまう辺り、コミカルなシーンなのにその気迫が存分に感じられます。どうも、セラは顔に何らかの悪戯をされるシーンが多いように思いますが、制作側の趣味としか思えません(笑)。ちなみに、この行為が健斗を笑わせることになり、無駄なシーンを生まない構成の巧さが光ります。

ザワールド

 このネーミングを聞くと、どうしても「なるほど・ザ・ワールド」を思い出してしまうのは私だけではないはず(笑)。

 それは置いておくとして、セラ絡みのストーリーが一段落付こうかという処に、突如何の脈絡もなく(今回の「ゲーム」に何ら関係ないという意味)乱入してくるという、鮮烈デビューを果たしたザワールド。トランプをモチーフとしたゲームが展開された後ということで、その「The World」というネーミングがより効いて来ます。トランプはタロットカードを源流としていますが、そのタロットカードの最終カードが「The World」。「完結」というタームを強く感じさせるカードであり、文字通りジュウオウジャーを完膚なきまでに叩きのめして「終わらせて」しまいました。

 三つのジューマンパワーでマスクを変化させるギミックはジュウオウイーグル&ゴリラの発展系。的確に各モチーフの動物を表現するデザインワークの確かさに感服します。スーツにも三体の動物があしらわれていますが、事前情報でやや装飾過多に見えたデザインも、動いているのを見るとあまり気にならないばかりか、逆に洗練されているようにも見えて不思議な感覚でした。

 その戦力は、例年の追加戦士(になるかどうかは現時点では不明ですが)の例に漏れず、最強を誇ります。また、敵として現れるという常套句をも踏襲した由緒正しい登場となりました。しかしながら、ここまで悪辣に主人公サイドを追い詰める描写は歴代でも最高レベルの一つではないでしょうか。釣り竿や懐中電灯といったモチーフのアイテムはややコミカルに映りますが、それをコミカルに感じさせない演出を要求され、それがあの悪辣さに繋がった可能性もありますよね。

 次回は今度こそ、このザワールドを中心に動いていくものと思われます。一体どのような変遷をたどるのか、予測が付きません。