第37話「天空の王者」

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 一週のブランクを挟んでの今回。ここでまたもや新戦士の登場です。

 鳥男ことバドが変身するジュウオウバード。彼の鮮烈な登場と活躍を堪能できる...のかと思いきや、なんと今回は新戦士登場までの意外な危機編に徹するという、驚きの構成となっていました。

 サブタイトルで期待した向きには、少々肩透かしを喰らわされた格好でしたね。ただし、ジュウオウバードへの変身は一種のミラクルとして描かれたので、引っ張った意義は大いにあったと思います。

サグイルブラザーズ

 今回のジュウオウジャーが追い詰められていく展開には、近作のバングレイ編とはやや異なった趣が与えられました。それは、このサグイルブラザーズが醸し出す軽いノリに依るところが大きいようです。

 倒しても次々と別の兄弟が現れる様子や、常にラップのような喋りで迫ってくる様子にはイラッとしますが(笑)、そのイラッとさせる部分すら、この兄弟怪人の狙いになっている気がします。また、兄弟が倒されても喪失感を表に出さない辺りは不気味で、命の概念に圧倒的な解釈の差があるデスガリアンの一員であることが、強調されていると言えます。

 今回、このサグイルブラザーズには、ロープやクラブといった道具で対象物を破壊あるいは爆発に巻き込むという、直接的な破壊者としての属性が分かり易く与えられています。惨劇の被害者こそ直接的には描写されませんでしたが、ロープで建造物が切断される様子はなかなかの恐ろしさ。このロープ、ダブルダッチの要領でジュウオウジャーを翻弄するという楽しいシーンがありますけど、振れると爆発するという緊迫振りはその見た目の楽しさを凌駕しており、素晴らしい緊張感を伴うアクションシーンに仕上がっていました。

 そのダブルダッチにおいて、かつて長縄飛びに憧れつつも友達の輪に入れなかった操が、真っ先に失敗するというオチを繰り出して可笑しさを生んでいます。操のネガティヴな面を利用した危機描写の理由付けが実に巧く、さらにはその所為で大和が巻き込まれて脚を負傷し、後の大ピンチに繋がっていくという構成も見事でした。

 一体が倒されても、その代わりが次々に出てくるという流れは、その口調と相俟って実に苛々させられるものですが、その苛々がドラマの進行と共に焦りへと転化されていく辺りが巧み。また、一人だけ巨大戦に参加するという展開に関しては詳細な理由が伏せられ、ちょっとした引きになっていたりします。色々な仕掛けが用意されていて圧倒されますね。

ラリー

 久々登場のラリーさん。初対面の操が正装して挨拶に来る辺りは可笑しいですね。人望の厚さは相変わらずで、レオやアム辺りは抱きついて喜びを表現するほどでした。

 今回は、新しいキューブを発見したという設定で登場。バドとの回想を挟むことで、今回のクライマックスへのきっかけを作っていますが、その回想の内容はまだ大和たちに開示していません。ちなみに、キューブを発見したという知らせは、伝書鳩(?)で真理夫のアトリエに届けられましたが、こういう仕掛けは実に良いですね。真理夫さんの鳩への仮装まで用意して、何気なく流されるようなシーンにも強い印象を与える演出には感心させられました。

 バドとの関係は、回想によって少しだけ明らかになりましたが、次回はさらに明確に示されるのでしょうか?

 ヘコんだりハイテンションだったりと、相変わらず面倒な操ですが、それが良い方向に出たのが、サグイルブラザーズとの再戦でした。

 縄跳びに失敗した操は、大和に励まされることになりますが、そこですぐに立ち直るというよりは、自分に何ができるかを考えることに集中し実践してみせるといった具合に変化しており、彼の成長振りを垣間見ることができました。その成果は、「縄跳びを難なくこなす」のではなく、「縄を掴んで逆転のチャンスを作る」という方向に現出。掌の痛みに耐えつつサグイルブラザーズを振り回すパワフルさには、言いしれぬカタルシスがありました。ちなみに、操の掌のケガを心配するアムが良い感じでしたね。

 大和がある程度完成された人格を有し、その成長要素を廃している分、操の成長をちゃんと描いているのが巧いところです。

キューブオクトパス

 ラリーが発見した新しいキューブは岩山に埋まった状態で発見され、しかも巨大であるため、覚醒を待つしかないという状況でした。ジュウオウキングで取り出した場合、保管場所に困るという想像シーンが用意されており、アトリエが無残につぶされるという内容でしたが、これが実にリアルな描写になっていて可笑しさは抜群でした。

 基本的にジュウオウキューブウェポンは、登場も覚醒もかなり唐突に描かれるのですが、今回も例外ではありませんでしたね。ただし、まずは「鈍器」としてキューブを振り回し、コミカルではありますが危機を脱するというシーンが挿入されたため、岩山から取り出すという行為が自然に描かれることになり、その後の覚醒に至るプロセスがスムーズになったと思います。

 キューブオクトパスはジュウオウキングに合体してジュウオウキングオクトパスを完成させます。背中にプロペラ状のガジェットが装備されるので、見た目が派手になり、パワーアップの視覚効果を上げていますね。同時に、それまでのキューブウェポンより巨大であることも視覚的に納得させられます(実際のトイも他のキューブウェポンより大きめ)。今回はこのキューブオクトパスの描写も含め、全体的に理知的な画面作りが行われているような印象を受けます。

バド

 そして、今回のメインとなる人物が鳥男ことバド。ただし、その登場シーン自体は少なめ。画面に出ていなくても感じられる存在感こそが彼の真骨頂...なのかも知れません。

 ジューマンと人間の繋がりなどない方が良いとの主張は、大和のポリシーとは真逆。故に敵対者となってもおかしくないポジションなのですが、何故か大和の危機を前に「必ず大和を守る」と宣言し、そのアンビバレンツな人物造形に引き込まれていきます。恐らくは、この一見「矛盾」にも見える彼のキャラクター性が、彼の辿ってきた道筋をそのまま体現していて、様々な謎を解き明かす鍵になっているものと思われます。この辺り、次回以降徐々に明らかになっていくでしょう。

 バド自体の戦闘力は、かつてジュウオウジャーたちをジューマン態で圧倒していたことからも相当のものだと推察されますが、今回は防戦一方で形勢不利な印象を抱かせます。これについては説明がないため、やや唐突にも映りましたが、ジュウオウバード登場のためにはあまり無双状態でも困るわけで(笑)。村上さんがあまり表情を変えないままで見事なやられっぷりを披露していて、それが却って格好良かったですね。

 そして、土壇場にて遂に登場するのがジュウオウバード。バドが盗み出したとされる王者の資格は、バドをジュウオウジャーとして認めていたわけではなかったようですが、大和を守るという強固な意志に大地が呼応し、王者の資格がジュウオウチェンジャーに変化する...という流れが巧み。そこには、地球自体が大和を守ろうとしているという意志さえも感じさせていて、壮大さが付加されることになりました。

 ジュウオウバードは、ジュウオウイーグルによく似たスタイルながら、カラーリングが異なり、メインカラーは赤寄りのオレンジ。イーグルの黒い模様を青に染め変え、スペシャル感を演出しています。また、特定の鳥類に限定しない「バード」というネーミングには格上感が漂っており、その点でもスペシャル感が醸し出されています。実際の活躍については、次回までお預けでした。

次回

 バドにまつわる色々な謎が明らかに...? ジュウオウバードは素直にジュウオウジャーの味方となるのでしょうか。それとも、かの「カイザ」のように数奇なポジションで動いていくのか...? 色々と楽しみですね。