第4話「リングに吼えろ」

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 セラとレオにスポットを当てたお話。どちらも肉食の頂点たるイメージの生物をモチーフとするキャラクターですが、セラは負けず嫌いで勝ち気な性格、レオは最強の戦闘能力の保持者といった具合に巧く換言されており、好感が持てます。

 しかも、その特徴的な性格については、あまり直接的な描写とせず、感情の機微を繊細なタッチで描く事で表現しており、これぞ特撮TVドラマの醍醐味。非常にレベルの高い演出を堪能出来ます。

 一方で、セラとレオのバトルを4話目にして早くも観られるという驚きも。色々と楽しい要素が詰まった充実回でした。

アミガルド

 投網をメインに据えるという、非常に珍しい怪人。それでいて、漁獲の要素が殆ど感じられないという面白いデザイン。今シーズンは、意図的に「意匠のズラシ」が採用されているようにも思います。そうする事で得体の知れなさを狙っているのではないでしょうか。「デンジマン」における左右非対象デザイン、「チェンジマン」や「フラッシュマン」におけるモチーフの隠蔽といった先達への追随とも取れます。

 このアミガルド、特技の投網よりは、その結果としての「仲の良い者同士を戦わせ、勝った者だけが囚われの身から解放される」というゲームへの帰結の方が悪逆非道。しかも、負けた者は永久に宇宙空間を漂う罰を受け、勝った者はその罪の意識に苛まれ続けるという、真に残虐な設定が背筋を寒からしめます。

 実際、ストリートライブをしていたデュオは罠にかかって勝敗を決するに至っており、敗退した方の命はアムに助けられたから良かったものの、喧嘩を仕掛けた勝者は恐らく罪の意識に苛まれ、互いの信頼関係はアミガルドが斃れたとしても修復出来るかどうか...。この辺りの投げっぱなしな感覚は、70年代の特撮TVドラマのやるせなさに通ずる処があって、現在の感覚ではかなり鮮烈です。前回の、多くの命が失われたであろう描写に続いて、なかなか衝撃的でした。

セラ

 多分メイクの効果もあるでしょうけど、ちょっと鋭い表情がさまになり、鮫とのイメージの重なりを納得させるキャラクターですよね。スレンダーなモデル体型も海洋生物のスリムなスタイルと合致していて、完成度の高いキャラクターとして成立していると思います。

 性格面では、実験的でありながら比較的分かり易い描写だったアムに比べ、セラはまだちょっと掴み処がないというか、まだ隙を見せない感じがありますね。

 今回は、かつて武術大会でレオに手加減された事に関する悔しさを未だに秘めており、それを吐露するという展開。セラは守られる者に甘んじるのが我慢出来ない性格らしく、設定にある「負けず嫌い」という文言がレオとの関わりによって間接的に表現されたわけです。これがとても繊細な描写になっていて好感度が高い。

 「負けず嫌い」ならば、例えば競争に必ず勝たないと気がすまないとか、今回のようなバトルなら、負ける事で悔しさを爆発させるという描写もアリだと思います。今回、なかなか本心を見せず、何となくイライラしているという状態で突っ走る辺り、受け取り側に行間の読解を促しているようで、実に大人っぽい語り口だったのではないでしょうか。

 というわけで、今回のセラは終始厳しめな表情なので、あまり可愛らしさを前面に出してはおらず、クールビューティの体現に留まりました。ツンデレを期待しても、「ツン」しか登場していないので、裏に隠れていそうなお茶目な面は、今後に期待ですね。

 それにしても、レオとの一戦では、早くも高度な生身アクションを要求されていましたね。勿論、本気モードになってからはジューマン態の出番となるわけですが(同一人物でもスタンドインが「要らない」この設定はやっぱり秀逸!)、それまでの人間態アクションでは、ヒレをイメージした手刀を主体とするキレキレの動作を見せてくれました。流麗さを兼ね備えた動きの良さには素直に感動しましたね。

レオ

 これ程、初登場から全くイメージの変わらないキャラクターも珍しいのではないでしょうか。

 とにかく声が大きく、食欲旺盛、悩まない。典型的な豪快キャラクターです。たてがみを残した奇抜な人間態の衣装も素晴らしく、ジューマン態と人間態のイメージ一致度が最も高いキャラクターだと思います(むしろジューマン態のライオンマスクの方が繊細に見えてしまうのも素晴らしい・笑)。

 今回は、タスクに「女好き」と言及され、女性を守るというポリシーが明かされた事で、レオに少々の設定が付加される事となりました。それでもやっぱりイメージが変わらない(笑)。それ程、初めから分かり易くて完成度の高いキャラクターだったと言う事ですね。この「女性を守る」「女性に手を上げられない」というポリシーは、後々弱点とも成り得る設定なので、なかなか楽しみでもあります。

 買い物を手伝うシーンに代表されるように、レオにとっては、セラだろうがアムだろうが同様に「女性」であり、彼女達のキャラクターの違いにまで気を回さない辺り、その少々大雑把な性格が伺い知れます。そしてそれは当初のキャラクターイメージとも合致しており、その優れた統一感が良いですね。そしてその大雑把さ(戦闘中に馴れ馴れしく肩を抱く等)とポリシーが、守る・守られるという関係を良しとしない性格のセラを少々苛つかせてしまいます。しかし、戦闘では良いコンビネーションを発揮しており、すこぶる良好とは言えないまでも、その関係は悪くない事が伺えます。

 セラ同様、レオにも生身アクションが要求されました。彼のアクションスタイルはとにかくワイルド。ネコ科らしく爪の攻撃を取り入れ、相手の動きを封じる手に出たり、華麗な投げ技を披露したりと、やはり高度な見せ場を創出していました。ジューマン態でのアクションはより激しさを増しつつも、人間態との連続性を遺憾なく表現しており、こちらも非常に満足度の高いものとなっています。

タスク

 今回、行方不明となったセラとレオを探し出す為に利用されたのが、タスクの嗅覚。嗅覚に優れるという設定は使いにくいのか、あまり戦隊では登場しないように思いますが、一応「ゴレンジャー」におけるキレンジャー=大岩大太のカレーに対する嗅覚の鋭さを発端として、「バトルフィーバー」ではバトルケニア=曙四郎の嗅覚が度々仲間のピンチを救っています。

 彼の嗅覚がセラ達の発見に繋がるくだりでは、ギャグに彩られた楽しいシーンが続出。まず、臭いの元となる物を何にするかという話で、セラとレオの靴下がチョイスされます。ここでタスクは逡巡の末、レオの強烈な臭いを放つ靴下を選択するわけですが、その過程でセラに遠慮するという意外に(またしても感覚的に子供向けを逸脱した)フェミニンな場面が。

 そして、タスクがレオの臭いを覚えようとして、ジューマン態と人間態に交互に変身しながら悶絶する様子は、正に抱腹絶倒。そこに真理夫が現れ、タスクの珍妙な性癖に誤解して大和が大慌てするという、ギャグの重なりが素晴らしい出来映えでした。やはり、クールなキャラはギャグとの相性が良いんですよね。

アクション!

 クライマックスにおけるアクションは、トリッキーなアクロバットが続出して見応え充分。毎回、少しずつ差別化しているのが凄いですよね。よくこれだけの引き出しがあるものです。

 ジュウオウイーグルが操るイーグライザーは、今回CGではなく主にプロップを使い、迫力と実在感に満ちたカットに仕上がっていました。

 セラとレオのアクションは、互いの長所を随所に絡めつつ、有機的なコンビネーションが観られて素晴らしく見応えのあるものでした。キャラクター性が完璧に発揮されたアクションは、やっぱり良いものですね。

次回

 衝撃のゴリラ型ジューマンが登場! レッドがパワーアップではなく、別形態に変身するという、とんでもないアイディアにも興奮必至。まだ5話目なのに...(笑)。