Space.11「宇宙を救う3つのキュータマ」

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 サブタイトルはアルゴ船に関するトピックを表していますが、メインとなるのはラッキーが初めて遭遇する不運と、小太郎とスティンガーの交流。

 「アンラッキーなラッキー」という超キャッチーなコピーが秀逸そのものですが、なかなか痛々しい感じに描かれていて意外にシリアス。そしてラッキー幼少期の謎まで用意されるという徹底振りが嬉しいです。

 一方のスティンガーと小太郎のコンビは、兄弟をキーワードとしたこれまたシリアスなもの。ただし、小太郎が明るい少年キャラクターの典型を行っているので、良い感じに中和されていました。

イカーゲンとマーダッコのコンビ復活!

 マーダッコの欠片を拾っていたイカーゲン。これは必ずやマーダッコの復活があると踏んでいましたが、やはり実際に復活しました。ただし、復活の度に性格が変わるという特徴が付加されており、飽きの来ない工夫が見られます。

 この、復活の度に性格が変わる女性幹部というものには既視感があったものの、しばらく思い出せなかったのですが、「ゴーバスターズ」のエスケイプがそうでしたよね。エスケイプの場合は、古いバックアップデータから実体化することが、性格リセットのエクスキューズとして用意されていましたが、マーダッコの場合はそんな大層な理由付けなどはない! 説明したって蛇足に過ぎないとばかりにすっ飛ばしています(笑)。

 マーダッコの性格の変化については、やはり声の演技の素晴らしさがほぼすべてと言っても過言ではないでしょう。喜多村さんの器用さが伺い知れます。

 このコンビ、前ほど強くない印象にはなりましたが、やはり先読みに長けるイカーゲンは強敵。ラッキーは幸運だろうが不運だろうが一様に攻撃を回避されること自体に変わりはないため、不運に見舞われている状況が加わって戦果のほどは最悪となります。今回のイカーゲンは、ラッキーが超えられない壁としての存在感を発揮していました。次回はこれをどう乗り越えるかが焦点と思われるので、これだけコテンパンにやられるのも良いですよね。

デスワーム

 今回はダイカーンではなく、得体の知れない生物という変化球。名前そのままの巨大なワームの描写は鮮烈で、割とコミカルなダイカーン群に慣れた視聴者は、この不気味な怪物によって、「キュウレンジャー」の宇宙が通り一遍ではないことを認識させられる格好となりました。

 ただし、何故か巨大なワームのままではなく等身大の怪人に変化する能力があり、そのあたりのご都合感には少々コミカルさが感じられることも。それでも、このような怪物が密かにあらゆる惑星に辿り着いているという点や、今回のように街一帯が既に捕食されたらしいといった点が、非常にサスペンスフルであり、「キュウレンジャー」の世界観を拡げています。

 水に弱いという性質は、ミズガメキュータマの能力を描写するのに適しており、あらゆるキュータマを登場させることが命題となる今シーズンでは、こうしたひと工夫の積み重ねが大事になると言えるでしょう。

 ストーリーへの関わりとしては、トモキュータマを飲み込んでいるという重要な役割を担っていて、探査中に「トモキュータマが移動する」という展開はSF映画における定番っぽくて嬉しいところ。巨大戦も担当し、リュウテイオーの初陣の餌食となるわけですが、ヘタをするとダイカーンよりも存在感があったり。撃破と共にトモキュータマが解放されるも、それをイカーゲンによって奪われてしまうという展開は、オーソドックスながら巧いところで、次回への確実な引きになっています。

アンラッキーなラッキー

 この人の強運ぶりは普遍だと思っていましたが、意外にもこんな序盤で不運な日が描かれるとは。しかも、幼少期の悲惨な回想が登場し、実はその強運に何かしらネガティヴな要素があるのではと匂わされるのです。ラッキーがまさか、天衣無縫で完全無欠のポジティヴキャラでなく、非常に暗い部分を抱えているレッドだったとは...。多人数キャラクターに深化を求めるのは困難であり、シチュエーションの面白さを楽しむシーズンだと割り切っていたので本当に意外でした。

 イカーゲンとマーダッコに完膚なきまでに叩きのめされるやられっぷりは、この極悪刺客コンビの強さが遺憾なく描写されてきた経緯があるので、それほど意外性はありませんが、ラッキーが逃げるチャンスすら訪れない、勝機もまるでないというアンラッキーぶりこそが今回の恐ろしさ。他のメンバーがデスワームにかかりっきりというのも正に不運で、ストーリー構成の巧さが光ります。

 さて、どうなるのか...? そして彼の「強運」の正体は...?

小太郎とスティンガー

 スティンガーが小太郎の戦いへの参加を反対する理由は、これまた意外にもすぐに明らかになりました。チャンプの疑惑を晴らす気配が全くないだけに、この件についても引っ張るのかと思っていましたが、この辺は割り切っているようですね。

 その前に、小太郎はちゃんとオープニングにもレギュラー扱いで登場しており、物凄く驚きましたね。本当に正式メンバーなんですね! 何だか感慨深いものがあります。

 スティンガーは血気に逸る小太郎の言動を危惧しており、かつて強さに溺れてしまった自らの兄の姿に小太郎を重ね合わせて危険視していたことが明らかになります。セリフで語られるのみではありますが、こうした機微の細やかな描写は大歓迎で、より両者の繋がりを強化するものとして納得のいく流れでした。弟が誇れる兄であれと諭すスティンガーの優しさは特筆モノで、クールに振る舞いながらも大切な事柄に熱を込められる好漢として株が上昇しています。

 一方の小太郎は、力を手に入れた少年の危うさを見事に表現。コグマスカイブルー自体も他のメンバーに引けを取らない実力を有していて、頼もしい限りなのですが、前半ではその力量を過信するシーンがあるなど、お約束ながらも良い感じに機能していました。スティンガーと「弟に誇れる兄になる」と約束してからは、スティンガーと見事なコンビネーションを見せ、スティンガーを「兄貴」と呼ぶなど、素直な面がしっかりと描かれました。実に爽やかな師弟コンビといった感じですね。

次回

 総勢11人の出撃という凄まじい絵面に期待です。ラッキーに一体何があったのか、そのあたりにも注目したいですね。