その11「ウキャウキャ!獣拳武装」

 マスター・エレハンの修行が始まり、意気込むラン。ところが、マスター・エレハンはテントを張り始め、続いてご飯の準備を始めた。修行じゃなくてキャンプ…レツとランはエレハンの意図が全く読めない。「遊びの中に修行あり」と言うエレハンは、フライフィッシングをはじめた。「一匹釣れば鎖鉄球術を教えてやる」との言葉に、ランは懸命になって釣竿を振り始める。ランは釣竿を操ることが、鎖鉄球術の極意に繋がると読んだのだ。

 その頃、理央は空の拳魔の骸が眠る場所にやって来ていた。しかし、マスター・シャーフーの張っていた結界に阻まれる。その頃、ムザンコセは地震を起こすのに最適なポイントをようやく見つけ出し、早速地中へと潜って行くのだった。

 ランの様子を見て、ジャンは「ガチガチのシオシオよりも、ウキャウキャの方がいい」と進言した。ランは真面目にやってこそ修行であり、遊び半分ではダメだと反論する。その時、地面の振動と臨気を感じたジャンは、レツと共にムザンコセを阻むべく、街へと急いだ。一人、真剣な顔つきで修行を続けるラン。マスター・エレハンは、ランをあの手この手で笑わせようとする。ランは無視していたのだが、遂に根負けして笑ってしまった。その瞬間、釣竿がイイ具合にしなり、釣り針を遠くへキャストすることに成功する。「笑いを激獣拳の妨げと見做しているのなら、それは間違いだゾ」と、マスター・エレハンは教える。余裕を失わない心構えこそが、エレハンの教えだったのだ。

 ジャンとレツは、ムザンコセを阻むことすら適わず、メレに手も足も出ない状態に陥ってしまう。ジャン絶体絶命の時、ランが登場、笑顔でゲキハンマーを振るい形勢逆転。ランはゲキハンマーをムザンコセが掘った穴に投げ込んだ。激気を込めてどこまでも伸びるゲキハンマーは、ムザンコセを捕らえ、穴から引きずり出す。ゲキワザ・弾弾丸でムザンコセにダメージを与えるラン。怒ったムザンコセは巨大化、ゲキレンジャーもゲキトージャで迎え撃つ。

 ムザンコセの硬さに歯が立たないゲキトージャだったが、マスター・エレハンが現れ、ランを中心にして心を一つにし、激気を燃やせと指示。3人は激気を燃やしてゲキエレファントを召還、さらにゲキエレファントと合体してゲキエレファントージャを完成させる。エレハンマーを振るい、ムザンコセを圧倒するゲキエレファントージャ。超絶リンギで向かってくるムザンコセに、ゲキエレファントージャは大頑頑丸を炸裂させる。ムザンコセは敗れ去った。

 戦いが終わり、一息ついたマスター・シャーフーは、結界の破壊される気配を感じた。理央が空の拳魔・臨獣ホーク拳のカタを蘇らせたのだ。

監督・脚本
監督
竹本昇
脚本
横手美智子
解説

 対ムザンコセ・大逆転編。勿論、逆転の鍵はエレハン・キンポー、そしてランが握っている。

 「オネスト・ハート」のランが学ぶのは、何と「余裕」。「遊びの中に修行あり」とするマスター・エレハンならではの教えである。ただし「遊び」の部分として、キャンプの描写がごくわずかにあるのみで、他はフライフィッシングの練習に終始している為、いま一つ「遊び」が見えてこないのは残念。むしろ、エレハン・キンポーの「セクハラ」まがいの行動や、幼児性丸出し(!)のギャグ応酬が強烈で、こちらの方に「遊び」を感じることができる。

 「どんな時にも余裕を失わない」ことと、「戦いの中で笑顔を忘れない」ということは、現実には必ずしも繋がらない。しかし、肩の力を抜いた瞬間に開眼する事柄というものは、決して少なくない。無心こそが究極の極意であるが、それは達観した達人ならではのものであり、そうでない者にとっては、笑顔を作って余裕を保つことが、その極意への近道だということだ。いつも真剣で真っ直ぐ、一見完璧なランの心も、余裕というクッションがないこと故の脆さというものが、具体的な描写がなくとも感じられるのは、なかなかに凄いことである。

 エレハン・キンポーの行動を反映した為か、激獣拳側の描写は極めてコミカル。フライフィッシングの針を、エレハン・キンポーの耳に引っ掛けるというお約束のギャグに始まり、自らのスカートに針を引っ掛けるというサービス(?)シーンも(必死にスカートを押さえる様子が可愛い)。極め付きは、キスを迫るエレハン・キンポーへの、美希の華麗なキック! 「拳聖」と名の付く者を一蹴する美希は一体…。それにしても、スーツアクターのコミカルな演技と、水島裕氏の演技がよくマッチしている。エレハン・キンポーは、1クールにおける最強のゲストキャラクターだ。

 ランの描写は一貫して明るく爽やか。変身シーンは完全新撮となり、「セーラームーン」のようにリボン状物体が収束するパターンが登場。まさにランカスタムといった贅沢さだ。さらに、ゲキイエローに変身してからは、華麗なゲキハンマーの鎖鉄球術を披露。ただ振り回すだけではなく、微妙で複雑な肘の動きが美しく、これぞまさに「術」と名の付く技に相応しい所作である。アクションを非常に大事にしている様子が伺えて嬉しいシーンだ。

 ゲキエレファント、ゲキエレファントージャの登場というトピックもある。強化合体が登場するのは、近年のシリーズとしては妥当な時期と言えるだろう。ただ、師匠のモチーフが、そのままゲキビーストとして登場するというワクワク感は何物にも代えがたい。動物好きな子供たちの心を掴む仕掛けだ。逆に大人の心を掴むのは、ネーミングやキャスティングというところがニクい。

 一方で、臨獣拳側の描写はシリアスだ。何と、早々に「空の拳魔」が復活してしまう。宙に浮いたまま荘厳さを湛えた声(納谷六朗氏)で語りかける様は、敵ながら実にカッコいい。どことなく、俗世界に生きる者という雰囲気をその言動から漂わせる、数多のリンリンシー達とは、相当に格が違うということなのだろう。また、メレの生身のアクションシーンも増加。カット割による描写ながら、ムザンコセに対して踵落としを披露し、ジャンを踏みつけるという衝撃シーンも登場した。獣人態の華麗なアクションともうまく繋がっていて好感度が高い。

 双方、異常な盛り上がりを見せる第1クール。これから先、このスピード感を維持するのは大変だろうと察するが、このまま突っ走って欲しいものである。