第10話「闇と光」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 第8話からは、シリーズ完結後しばらく経過した後の記事です。はい。

 今回は、スーパーグランドキング、闇に魅入られた美鈴、闇の支配者の正体...といった、重大なトピックがドカンと詰め込まれたエピソードですが、「ヒカルと美鈴の喧嘩」の尺の長さの割には、意外とスッキリ見られる構成力が凄い。

 本来は、ヒカルと美鈴の喧嘩がメインなのですが、やっぱり何と言っても百戦錬磨のベテラン役者による「悪霊退散」があまりにも強烈で...(笑)。

 ということで、先にベテランお二人による、闇の支配者の正体を巡るシーンを取り上げます。

 ダークルギエル、いわゆる「闇の支配者」は、白井校長に憑依していて、白井校長の(降星小学校の卒業生が法を逸脱した行為を働いているという)憂いを利用して人間の闇を拡大させるのが狙いでした。しかし、この「解決」はロジックこそ通ってはいるものの、実に唐突に思えます。何しろ、明確に「先輩」として登場したのは、パンドンにライブしたユウカのみ。「闇の支配者の腕」が登場するあの暗い部屋の場所も匂わされる事なく「完全に不明」でしたし、伏線はほぼなかったと言って良いのではないかと思います。

 しかしながら、校歌のパネルを破壊する白井校長の姿が回想される辺りから、何故か説得力が俄然増してきます(笑)。やはりそれは、白井校長役の木野さんの凄まじい演技に依る処が大きい。もうとにかく、物凄いのです。嬉しくなるくらいに。強いて言えば、ここまで狂気に満ちた演技を見たのは、ウルトラで言えば「ネクサス」が最後ではないかと。「ネクサス」以前を見渡してみても、「A」の久里虫太郎を演じた清水紘治さんか、先頃惜しくも鬼籍に入られた蟹江敬三さん演ずるブニョ(「レオ」)辺りしか思い至りません。もうあまりに嬉しくなってですね、本放送の録画を3回は見てしまいましたから。

 この辺りは、やっぱり舞台俳優さんとしての経験が豊富だという事なんでしょうね。本編ではエフェクトが効果的に使われていましたが、メイキングを見ると素の状態でも充分恐ろしい雰囲気でしたよ。

 そして、闇の支配者である事を看破された後の、恐怖とも悔恨ともつかない狂気に満ちた悲鳴の恐ろしさたるや、もう殆どミステリーホラーの様相で、木野さんのキャスティングが、この一連のシーンを予定した上でのものである事を、もう理解出来すぎてしまうわけです。

 続いて、この状況を打破するのがホツマ。津川雅彦さんの演技がこれまた実に濃厚!

 実況系のTwitterで「古畑」というタームが踊ったのですが、白井校長に迫っていく際の口調が、何故か「古畑任三郎」っぽいのです(笑)。実は津川さん、犯人役として二度出演した木村拓哉さんと並び、重要な役どころで二度「古畑」に出演(初出演はメインゲスト=犯人役、二度目はメインの犯人並みに出番の多い医師役)しておられます。この時の経験が今回に活かされている...わけではないですが、隠避する犯人を追い詰める口調として、これほど効果的なものはないと、演技の引き出しから出されたのが「古畑っぽい口調」だったのかも知れません。

 一連のシーンではヒカル達を完全に置いてけぼりにして、大ベテラン同士の演技合戦の様相を呈し、その熟練の技をじっくり堪能する事が出来ます。TVドラマではほぼ演技初心者と言って良いヒカル達のフレッシュな魅力とはまた違う、濃縮された円熟味の中から発露するエキセントリックな演技は、ウルトラの歴史を確かに彩ったのではないでしょうか。

 ちなみに、ホツマが唱えていた謎の呪文は、津川さんがホツマのネーミングを自ら提案した際、ソースにしたという古文書「ホツマツタヱ」に存在する一節との事で、その役柄と謎めいたキャラクター性にピッタリと合致。この演技プランの確かさに、「ギンガ」はかなり助けられたのではないでしょうか。大ベテランをキャスティングする意義を、津川さんと木野さんの繰り広げるシーンが如実に示していました。

 さて、一方の若者によるドラマですが、こちらは脚本を監督の意見で変更した...というこだわりの演出が見られます。

 そのこだわりには賛否両論あるようですが、私はどちらかというと「賛」の方です。

 「ギンガ」は、扱うテーマが「夢」という不確かな、しかも簡単には実現しないものであり、「夢」という単語を口上に乗せるだけでなく、割とシビアに向き合うという描き方をした為、根底に流れるものは意外と重いものになっています。故に、「夢が叶う」という安易な決着は敬遠されてしかるべきで、別の落とし処として、ヒカルと美鈴の関係を再確認するという話が選択されたものと想像出来ます。つまり、二人で夢を追っていこうと。その為には、まず目の前の「阻む者」に二人で立ち向かっていこうと。

 その落とし処を表現するにあたって採用されたのは、二人に喧嘩をさせるというもの。しかも、お互い意地の張り合いに発展する「恋人同士の痴話喧嘩」というヤツで、これが演出の愉快さもあって実に楽しい。しかし、その外部では壮絶な戦いが繰り広げられているとあって、そのギャップが「ギンガ」の特徴を顕著に反映しています。

 で、この「痴話喧嘩」をどう捉えるかなのですが、心を閉ざした美鈴をヒカルが必死に説得するという構図は、実は千草がラゴンにライブしたエピソードで既に披露されており、そのシチュエーション自体にあまり新味はありません。ここで思い切って傍目にはラブラブに見えてしまう喧嘩に転化した事で、二人の関係は元々恋人同士に近いものであった事や、ふとしたきっかけで不意に互いの事が大切に思える瞬間が自然に訪れる等、後の所謂「石破ラブラブ天驚拳」にちゃんと淀みなく繋がる要素を湛えるに至るのです。全体のトーンを暗めにするのではなく、このような重大なシーンをコメディに振ってしまう潔さと思い切りの良さは、私としては「ギンガ」の美点だと思うのですが。あと、二人の「和解」をハグで締めるのも素晴らしいです。二人の著しい身長差が、また良い雰囲気なんですよね(メイキングを見るとさらに微笑ましくなる事請け合いです)。

 若者のドラマとしては、スーパーグランドキングから学校を何とか守ろうと、千草がウルトラマンに、健太がティガにライブするという「総変身」状態も熱い。そこに美鈴の父がセブンとして加わる事によって、かつてのグランドキング戦を思わせる豪華な画面が登場する事になりました。本来は、そこに因縁深いタロウが加わって欲しかった処ですが、それは次回までおあずけ。スーパーグランドキングのような巨大かつ重量級の怪獣を巧く狭いセットの中で立ち回らせていて、その工夫はメイキングを見ると本当に見事であると分かります。そこにウルトラマンとジャンナイン、合わせて4人ものキャラクターを配置するわけですから、空間設計が相当大変だったのではないかと思います。

 最終的には、スーパーグランドキングをヒカルと美鈴のライブしたギンガが倒すことになりますが、ここでギンガサンシャインなる新技を出し、それによって白井校長も救われるという結果をも生みます。ご都合主義と言われればそれまでですが、流れはごく自然だったのではないでしょうか。ギンガサンシャインがヒカルと美鈴の関係によって生み出されたものだと、素直に解釈出来る画でしたからね。