Mission 28「ニワトリに注意せよ!」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 今回も、実にオーソドックスな好編。「ゴーバスターズ」って、実はこういうオーソドックスな筋運びが一番似合っているんじゃないか、と思わせてくれます。

 前回も二つの定番要素の合体版でしたが、今回は三つの定番要素の合体版。そこにリカを少し絡ませたり、裏でメサイアの進化が実は成功していたという状況を描いたりと、いわゆる夏休み最後、そして3クール目初回の充実振りを見せてくれました。

 三つの定番要素とは、ズバリ、「ニセモノ話」、「隠蔽話」、「陽動作戦」の三つ。ストーリー自体は地味ですが、これら定番三要素が実に巧く組み合わされており、ビジュアル的にも楽しく、また派手なものに仕上がっていました。

 まずは「ニセモノ話」。

 枚挙に暇のない定番要素の筆頭ですが、今回の面白い処は、単なるニセモノではなく、敵味方入り乱れて色々な人物に変身してしまう処。

 整理すると、ニック→ヒロム、レッドバスター→ヨーコ、ブルーバスター→エンター、イエローバスター→ヒロム、バグラー→ゴーバスターズとなります。見所は、変身後が、それぞれ変身前のキャラでニセモノを演じるという、実にややこしく楽しいシチュエーションです。

 要するに、ニックの動きをするヒロム、ヒロム(レッドバスター)の動きをするヨーコ、リュウジ(ブルーバスター)の動きをするエンター、ヨーコ(イエローバスター)の動きをするヒロム、バグラーの動きをするゴーバスターズとなるわけで。キャスト、スーツアクター諸氏の、研究を重ねた結果が良く画面に反映されていて、非常に楽しいシーンになっていました。特にヒロム役の鈴木さんは、ニックとヨーコという二者の真似をする必要があったわけで、その努力の程が窺えます。

 ここでの「ニセモノ」は、どちらかと言うと「入れ替わり話」の要素が強いと言えるでしょう。

 むしろ、定番の「ニセモノ」は、リカに化けたスプレーロイド2が、「ヒロムの姿をしたニック」から、ウイークポイントを聞き出すというシチュエーションに現れています。

 つまり、今回の「ニセモノ話」の要素は、「入れ替わり話」と「ニセモノ話」の典型を両方共含む、特殊なものだったと言えそうです。

 ちなみに、スプレーが「水性」で、水によって簡単に変身が解けるという辺り、ギャグのセンスもなかなか良かったと思います。

 続いて「隠蔽話」。

 こちらは、明確に弱点のあるヒーローの定番と言うと、そうでもなく、むしろ基地の場所であったり、新兵器の設計図であったりと、露呈すると戦力バランスに影響するようなものを隠す、あるいは誤魔化すというシチュエーションで多用されます。

 今回は、ヒロムのウイークポイントがニワトリであるという事が、ニックのミスによって露呈しかかるという状況を、どう打開するかという「作戦」に重きが置かれています。ここで利用されているのが、前述の「ニセモノ」で、ニックはまだヒロムの姿をしたまま。「作戦」においては、視聴者には、土壇場までどちらが本物のヒロムか分からないようにした上で、演出上は明らかに、サングラスをしておらずメタロイドに飛びかかるのがニックで、サングラスをして物陰から見ているのがヒロム。しかし、実は逆なのではないだろうかと思わせる辺りが実に巧み。結局は演出通りだったわけですが、ヒロムとニックの絶妙のコンビネーション(いわば「絆」の事)を前提とした、「サングラスの奥で目を瞑っている」という作戦が大胆かつ繊細な印象を与えていました。

 ビジュアル的には楽しさが強調されていますが、結構ギリギリの駆け引きだったのは間違いない処で、なかなかスリリングな場面となっていたと思います。

 今回の特殊な処は、隠蔽対象が「物」ではなく、「現象」である事。この定番要素が展開される場合、「物」を何とか隠蔽する為に、その「物」のニセモノを用意するのが王道ですが、今回は、「現象」を隠蔽する為に、「現象の対象者」のニセモノを使うという、王道のちょっとした変形バージョンを用いているわけです。それ故に、既視感がかなり軽減されており、純粋じゃない特ヲタが純粋に楽しめるシチュエーションとなったのではないでしょうか(笑)。

 それにしても、ヒロムのウイークポイントって、まだヴァグラス側に露呈してなかったんですね(って、そこかい・笑)。

 最後に「陽動作戦」。

 これも、かなりの数を列挙出来る定番です。しかし、多くの「陽動」は、市街を派手に破壊するとか、実効性のない巨大な投影物を出現させるとか、あちこちに仕掛けられた爆弾を回収させるといった、割と物騒なもので、その裏で進行している作戦よりも陽動の方が規模が大きいといった本末転倒なものまであるくらいですが(笑)、今回は愉快犯めいた「派手さ」を前面に出したものになっています。

 ここまでのヴァグラスの特徴として、都市破壊よりもエネトロン至上主義というか、メガゾードによる都市侵攻を苦手としている節があります。この辺り、あまり説明されているとは言えませんが、メガゾードの稼働には大量のエネトロンが必要なので、ここぞという作戦の要にしか登場させられない印象があります。

 なので、今回のようにゴーバスターズをターゲットにした、派手な時間稼ぎは作戦として有効であり、また、あわよくばヒロムのウイークポイントを突き止めるという、一挙両得を狙ったものである事も、最近精彩を欠いているエンターらしさを取り戻しているように見受けられました。

 そんなわけで、この「陽動作戦」という定番も、「ゴーバスターズ」流の味付けがされて、より頭脳派な印象を残す事となりました。メタロイド自体はあまり頭脳派ではなくとも、頭脳派エンターの存在をフッと匂わせる辺りが巧いのです。

 さて、その「陽動作戦」の裏には、メサイアの進化を邪魔させないという意図がありました。前回、失敗したように見えた進化プログラムの適用は成功しており、図らずも、前回当ブログで挙げた「ギャバン」での展開を踏襲する事となったわけです。その意味では、まだまだエンターはゴーバスターズの半歩先を行っており、当初よりも見た目にほのぼの感が滲むようになっても、ギリギリの攻防戦は未だ継続中であり、しかも正義側は後手に回っている事になります。

 この展開は、先日最終回を迎えた「仮面ライダーフォーゼ」にも通ずる処があり(というより、近年のガジェット連発型ライダー作品全般に言える事ですが)、主人公側が一つの事件を解決しても、裏ではそれなりに陰謀が進行しているという感覚が活きています。

 ライダーは一年間伏線を振りまいて、最終編で怒濤の如くそれを回収する傾向がありますが、「ゴーバスターズ」の場合はもっとスピーディかつシンプルではないかと思います。次回が、メサイアのシャットダウンを狙う内容になっている処からも、あまり伏線を引っ張らない方針が見て取れます。

 驚いたのは、あまり本編に絡んでこないリカの口から、ゴクとマゴクの名が出た事。そして陣が、亜空間内で管理しているエネトロンを奪われたと、突如告白する事。しかもこれが、大団円後のエピローグで突然暗転するかのような効果を上げていたので、余計に衝撃度が高かったのでした。次回への期待を大いに煽っていますね。

 ちなみに、今回の私的なツボはJとニワトリ。

 Jが益々エキセントリックさを露呈していて、等身大戦でややこしい変身を目の当たりにして、「全部攻撃すればいい」と言ったり、巨大戦でビルに擬態したメガゾードを見つけられず、「ビルを全部攻撃すればいい」と言ったり。このヒーローらしからぬ極端な思考が、やや軽めの言動を取る陣と巧いコンビネーションを成していると思います。

 一方のニワトリは、ヒロムのトラウマ回想シーンでのもの。この恐ろしいニワトリのシーンを見て、私は「動物のお医者さん」における最強の生物である、ニワトリの「ヒヨちゃん」を思い出してしまいました(笑)。

 次回は、最終編のようなお話になるかも知れないとの事で。出し惜しみしませんね〜!