Mission 4「特命と決意」

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 大丈夫かと思うくらい、ハードなエピソード。

 司令官・黒木の冷徹なまでの使命感と、それを探るように無茶な行動に出るヒロム。そんなヒロムの行動をすぐには理解出来ない「先輩」のリュウジとヨーコ。二重三重に重ねられた思惑が重厚なドラマを紡ぎあげています。

 「無茶な行動」をとるヒロムのドラマを盛り上げる為、アクションも超ハードになっており、その意味で見せ場の多いヒロムですが、実際はヒロム編というより黒木編になっているのがポイント。この黒木の言動をどう捉えるかによって、本編の雰囲気が変わってくると思います。

 どちらにしても、エンディングで一生懸命踊っている黒木を見ると、そんな事どうでも良くなったりするんですけどね(笑)。

 今回は、ある特徴が顕著なのですが...。その辺りを続きの方で。

 ある特徴、それは、事件・事象そのものがドラマとして進行するという特徴です。これまでのシリーズもそうではないかと思われる向きがあるでしょうが、そこには概ね「日本的ヒーローの美徳」が盛り込まれていた事に注目しなければなりません。

 あまりに慣れ親しみすぎて気付き難いのですが、ウルトラシリーズでは「帰ってきたウルトラマン」から、仮面ライダーシリーズでは「仮面ライダー」の2クール目(一文字編)から、そしてスーパー戦隊シリーズでは「バトルフィーバー」から、「日本的ヒーローの美徳」が顕著になります。それは、「身近な者が虐げられる事に怒る」という展開。敵の作戦の規模がどうであれ、そこには「守る者と守られる者」の顕著な関係があり、その上、その両者には前提となる束の間あるいは深い交流があります。

 その構造は、多分に時代劇的であり、多分に刑事ドラマ的でしょう。つまり、日本のドラマ構造の典型を前提に持つ事で、日本人の精神性にアピールしていた事になるわけです。

 逆に、ウルトラにおける「マン」〜「セブン」は、被害者は多くの場合「名も無き多くの人々」であり、ドラマはレギュラー陣の葛藤や怪獣・宇宙人対策の面白さを主軸としていました。ライダーの1クール目は、ショッカーの理不尽かつ奇っ怪な「犯罪」に孤独な戦いを挑む一人の青年の話。「ゴレンジャー」はイーグル VS 黒十字軍の全面戦争をライトな作風で描いており、民間人が巻き込まれる印象はかなり薄い。「ジャッカー」ともなると、そらにその傾向が強まります。俯瞰すると、どれも海外ドラマをかなり意識した企画に端を発しているコンテンツです。

 「ゴーバスターズ」、特に今回は「日本的ヒーローの美徳」が薄い傾向にあると思います。基本テーマとして、エネトロン奪取に対する抵抗がありつつ、今回語られたように、亜空間に転送されてしまった人々の救出というテーマも内包するわけですが、前者は正に「日本的」である必要のないテーマ。辛うじて後者に「日本的」な動機付けが感じられますが、表層ではそれを(ブレーンである黒木が)否定し、ヒーローが内に秘めて戦う動機としているのが巧い。

 この構造を示した事で、「日本的ヒーローの典型を排した上で、日本的ヒーローのメンタリズムを保持する」という、アクロバティックな感覚で新風を吹き込む事に成功していると言えるでしょう。

 難しいのは、この「変化」を視聴者側が受け入れられるか否かですね。特に、黒木の冷徹なまでのクールさに、従来の司令官像と比べた際の違和感を禁じ得ない向きは多いのではないかと思います。

 本編ラストでは、黒木の姿勢に反感を覚え、思わず熱い拳を振るおうとするリュウジ、それを止めて黒木の本気に安堵したヒロム、立ち去る黒木に敬礼する三人...というシーンを繋いで、特命戦隊の鉄則を描いて見せ、より一層のクールさを描くと共に、そこに葛藤の余地を挟ませない安定感を醸しだしていました。しかし、ここにはそれだけではないものがあったと思います。

 これは、黒木役・榊英雄さんの力量によるものでもありますが、「生存者はいない」、「ゴーバスターズは囮」という、およそ子供向けヒーロー番組らしからぬ言動の裏に、ヒロム達に対する全幅の信頼があるように見受けられます。それを示すかのように、厳しい言を放つ黒木の眼光は、鋭いながらも憂いがありました。

 さらに、ストーリー展開そのものからも、信頼感は読み取れます。何しろ、ゴーバスターズは切り札であり、代替不可。それを囮に使うという事は、即ち勝算がなければならない事であるのは自明です。黒木が、本当に生存者が皆無だと考えているかどうかは不明ですが、少なくとも、ヴァグラスの本拠を特定する事が、メサイアのシャットダウンだけでなく、生存者救出に繋がらないとは言えないわけで、黒木が完全なる冷血漢であるという事は、ここで否定しておいて良いでしょう。ヒロム達への「親心」に似た感情も、以前のエピソードで描かれている事を付記しておきたい処です。

 さて、戦隊らしからぬ感覚は、転送誤差3キロメートルを利用した作戦という、子供には少々難解な展開にも見られます。ここから、「ゴーバスターズ」はやはり相当に海外ドラマを意識しているのではないかと思われます。アメリカ産のTVSFドラマは、基本的に大人(ファミリー)がターゲットになりつつ、ガジェットやキャラクターの魅力で子供向けのマーチャンダイジングが可能といった二重構造になっています。「ゴーバスターズ」も、ストーリーの部分では、メインターゲットを高学年以上に設定し、日用品や身近なものをモチーフとしたメタロイド、メガゾードといった「親しみ易さ」と、各種メカのカッコ良さで、低年齢層にアピールしているようです。

 この方向性が、このまま継続されると凄い事になりそうな予感がしますね。中途半端でない力強さが感じられるので、是非成功させて欲しい処です。

 今回はあまり特撮に言及していませんが、勿論凄味を感じさせるシーンが幾つもありました。アクチュアリティ溢れるオープン撮影の醍醐味と、セット撮影による精緻な描写がしっかりと使い分けられていたと思います。そして、何と言ってもヒロムの「肉を斬らせて骨を断つ」戦法のシーンが凄い。斬りつけられるCB-01の胸部、コクピットに達する巨大なカッターがヒロムに迫り、暗いコクピットに陽光が射す。さながら劇場大作のようなこのシーンの凄さには、思わず息を飲みました。通常回でロボットがダメージを受けても、大抵は表面弾着に続いて、コクピット内弾着という流れが殆どだったスーパー戦隊シリーズにあって、遂にここまでやったかという印象でした。

 また、このCB-01のダメージ表現が、黒木の言う処の「バスターマシンの戦力アップ」への布石にもなっていて、段取りの良さも光っていますね。

 私の個人的な予想では、この高いクォリティを備えた海外ドラマ風の雰囲気に、従来のスーパー戦隊シリーズの雰囲気を少しずつ導入していくのではないかと思っています。そうあると面白いだろうと思う一方、それをいい意味で裏切って欲しいと思う面もあり...。色々な意味で楽しみなシリーズです。