Mission 5「キケンな熱暴走!」

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 ヒロムのフリーズ、ヨーコのエネルギー切れに続き、リュウジのウイークポイントが描かれ、これで全員のウイークポイントが出揃いました。

 そして、熱暴走の当事者であるリュウジがメインになるかと思いきや、何と実質的なメインはヨーコ。「ゴーバスターズ」では、この「テーマずらし」の手法が非常に巧く使われており、サブタイトルでは「題材」としてキャラを立てておき、本編ではその「題材」に関わるキャラクターをメインに据えるという構成をとって、ドラマの充実度とスリルの生み出す高いテンションとを両立させています。

 今回を見ると、ヒロムのウイークポイントであるニワトリフリーズは、ある意味、局面を大きく悪化させる恐ろしいものでありながら、コミカルな面が強調されていて、ドラマのアクセント、あるいはアクションの流れに変化をつける要素として扱われているようです。一方、ヨーコの場合は、ヒロムと同様のアクセントとして用いられながらも、よりヨーコの少女っぽさ、可愛らしさを強調する要素として用いられている気がします。エネルギー源が「お菓子」なのは、その最たる物証でしょう。

 リュウジの場合は、今回描かれたように、単純に身体が熱を発するという事ではなく、精神にも影響を及ぼし、文字通り「暴走」してしまいます。長い付き合いのヨーコに対して、ひた隠しにしてきた事が示すように、ヒロムやヨーコのウイークポイントに比べると、劇中での印象は格段に深刻です。

 このアンバランスさ、各人の年齢にも関係しているような気がしますが...。この辺りを続きにて。

 設定上、リュウジ、ヒロム、ヨーコの年齢順であるゴーバスターズ。ヒロム役の鈴木勝大さんとリュウジ役の馬場良馬さんは実年齢が少し下、ヨーコ役の小宮有紗さんは実年齢が少し上といった差異こそありますが、概ね劇中通りの年齢順・年齢差とあって、雰囲気は正に兄弟のようです。年齢差をつけている戦隊シリーズ、実は結構あり、中にはズバリ兄弟姉妹となっているものも存在しますが、殆どのシリーズが年齢差はあれど同格扱い。「ゴレンジャー」や「ゴーグルファイブ」〜「バイオマン」のように、年長者を敬称付きで呼んだりする事はあっても、そこに年齢差を感じさせる演出は殆どなかったと言っても良いでしょう。

 「ゴーバスターズ」の場合、年齢差を非常に意識して脚本や演出に組み込んでいるのが分かります。よって、ヒロムはリュウジに敬語を使うし、ヨーコはリュウジを兄、あるいは極端な話、父性の持ち主として捉えているわけです。これは「シンケンジャー」において、レッドと他のメンバーの間に地位的断絶を敷いたのと同じくらい、戦隊シリーズにおいて画期的な出来事かも知れません。

 前述したウイークポイントと年齢の関係としては、以下のように読み解けるでしょう。

 真ん中に位置するヒロムは、その20歳という、ある意味微妙な年齢の天才が持つ「危うさ」を、ニワトリでフリーズという荒唐無稽極まる「奇抜な面白さ」に託して、深刻になり過ぎない描写とし、戦隊のレッドたる安定感とエッジの効いた存在感を両立させています。

 最も年下となるヨーコは、自信家の面と幼さ故の思慮の不足を、「お菓子に頼らないと動けなくなる」という設定を持ち込む事で強調。甘党の自信家というキャラクターは数多く存在しますが、単なる甘党でなく、命綱にまで先鋭化している処が素晴らしい。先鋭化する事で、ヨーコ自体の可愛らしさがグンと強調される辺り、その効果の面白さは抜群です。

 最年長で、しかも他の二人とかなり年が離れているリュウジ。彼に与えられたウイークポイントは、冒頭に示した通り、格別に深刻に見えるように配慮されています。年長者の持つ思慮深さがもたらす慎重さ。それはある意味、このテのキャラクターの典型ですが、そこを軽く打ち破ってしまうウイークポイントが与えられた事によって、彼に二面性を付加。しかも、その二面性はウイークポイントという「外的要因」がもたらすという構造によって、リュウジ自身の本質でないという担保付き。

 「突如豹変する可能性のある、底抜けに優しいお兄さん」という、悪く言えば安っぽいラノベのような設定が、これだけ厚みを持つ存在となっているのは、他の二人に比べて深刻であるというギャップが光る設定の巧さ。これに尽きるでしょう。意外性を設定レベルで支える手法のお手本ですね。

 さて、その暴走っぷりは、異様なまでの充実度を以て描かれる事となります。

 タイヤロイドという、おしゃべりな由緒正しき戦隊怪人たるメタロイドが登場。徐々にメタロイドを中心に戦隊らしさを導入してきてますね。このタイヤロイド、何と暴走したリュウジに完膚無きまでに叩きのめされ、ダーティ極まるファイトスタイルの餌食となり、遂にはリュウジ単独で等身大戦を早々に終えてしまうという、前代未聞の事態にまで到達してしまうのです。

 タイヤロイドがおしゃべりなキャラクターだった事で、その哀れさが際立ち、一瞬同情を引く辺りが秀逸なプロット。それだけに、リュウジが凶悪なファイターに見える辺り、かなりの戦慄を伴うシーンとなっていました。今回、最も盛り上がるのはRH-03の活躍シーンなので、巨大戦に比重を置く為の措置としても優秀です。

 そして、ダメ押しとばかりに、ヨーコの存在を完全に忘れた上で、凄まじい鉄拳を振るい、ヨーコを脅すというシーンが用意されました。ここでのヨーコは、泣き方の演技があまりにも秀逸であり、少女性をアピールして余りある存在感でした。その後、リュウジの熱暴走にショックを受けたヨーコと、これまで何とか隠し通してきた暴走後の姿を見られてしまったリュウジが、それまでの時間とこれからの時間のターニングポイントを確認する展開となるわけですが、この展開は非常に面白いと思いました。

 というのも、実戦経験こそ浅いとは言え、厳しい訓練を受けたプロフェッショナルとしての戦闘チームとして成立しているゴーバスターズに、精神的な成長の余地が残されていた事が分かったからです。ヨーコに少しだけ優しくなれたヒロムしかり、自分を覆っていたベールを剥がしたリュウジしかり。特にヨーコはこの傾向が強く出ており、最年少ならではのポジションとなっています。ある時点から、戦隊シリーズに「成長」の二文字は不可欠なものとなっているので、「戦隊らしさ」の要素として、正当なのではないでしょうか。

 さらには、基本的にリュウジとヨーコのドラマである一方、ヒロムの見せ場がちゃんと用意されていたのが凄い処。エネトロン輸送車の護衛という、「ゴレンジャー」を思わせる作戦内容もさることながら、輸送車に仕掛けられた罠を破壊すべく、各種ガジェットを使って対処、ライディングしながらの射撃と、アクションが非常に充実。スパイアクション映画の雰囲気を、これでもかと詰め込んだ、素晴らしいシーンとなっていました。テンションは上がりっぱなしです。

 巨大戦では、前述の通り、RH-03の活躍をメインに据えています。ミニチュア、CGを縦横無尽にフィーチュアした画作りは、挑戦的なCB-01の描写とはやや異なり、割と近年の戦隊シリーズに近い雰囲気でまとめられていました。それはやはり、ラビット形態の愛らしさに起因するものでしょう。しかしながら、その巨大戦アクションにドラマを発生させる手法は、やはり「ゴーバスターズ」の独壇場。苦戦、無謀、逆転。常にヨーコの心情を反映させていて、充実していました。

 次回は、ロボットの合体というシークェンスそのものがドラマになるようです。楽しみですね!