Mission 7「エース整備不良?!」

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 スーパー戦隊シリーズでは、ある種のタブーとも言うべき、「メカの整備班」にスポットを当てたお話。

 「ゴーバスターズ」のこれまでのエピソードの特徴としては、地味なトピックを取り上げて、それをスリリングなアクション編に仕立てるという事があげられると思いますが、今回は正にその極北とも云うべきものでしょう。

 ただ、これまで天井知らずな完成度を示していた「ゴーバスターズ」でしたが、今回は地味な題材に引っ張られて、やや地味な完成度に落ち着いていたような気もします。その原因は、各キャラクターの言動の不徹底(ヒロムの「ヨーコ」という呼び方etc.)と、整備班自体の描写にあるように思いますが...。

 その辺りを続きの方で言及してみようと思います。すみません、忙しいのでちょっと短めです。

 その前に、整備班がタブーだという話について、少々言い訳をしておこうと思います。

 「ゴレンジャー」、「チェンジマン」等では、イーグル隊員、地球守備隊の隊員といった、レギュラー陣以外の人員が多数登場するシーンが存在します。その中には、開発チームや整備チームといった人員もまま見られるわけですが、全体的にスーパー戦隊シリーズはそういう面を殆ど重視する事はありません。

 そもそもレギュラー自体が、司令官等を含めると6〜7人程度居るわけで、「縁の下」を重視すると、ストーリーが停滞する危険性が強まってしまいます。また、戦隊メカには基本的に無敵である事が求められ、手痛いダメージを受けて破壊されるような事があっても、基本的に翌週には真っ新の状態でそびえ立たなければならないわけで...。

 それ以前に、戦隊ロボにはシステマティックなアクチュアリティ(要するに合理的で説得力のある変形合体機構)は必要であっても、メカとしてのリアリティは必要ないと、私は思います。少なくとも「ゴーバスターズ」より前は。なので、整備されている姿自体が想像し難いとも言えるでしょう。

 「ゴーバスターズ」では、敢えてその辺りにスポットを当てており、ある意味、アクチュアリティ以上にリアリティを求めている、つまり、戦隊のタブーに挑戦しているのではないか...と思った次第です。

 しかしながら、この「挑戦」は大成功とは言い難いのではないか、と思います。というのも、新人整備士がエースというフラッグシップ機の、しかも最も重要なエネルギー機構に関する整備を「一人で」、しかも「単独で」任されている事に、少々違和感を禁じ得ないのです。また、一つのチェックスイッチを入れ忘れただけで、エネトロンのオーバーロードを引き起こすという、フェールセーフを大幅に欠いた設計思想にも大いに疑問でした。

 同様の整備不良話で印象的なのは、「バイオマン」において、グリーンツー=高杉真吾が整備ボックスの上にスパナを置き忘れた影響で、バイオロボが機能不良に陥るというエピソード。レギュラー陣自ら整備を行うという発想の転換に加え、スパナ程度で影響を及ぼすロボット内部のデリケートさが鮮烈でした。このバイオロボの話では、整備の手順を間違えた事による不具合ではなく、本来そこに有ってはならない物体によって引き起こされた不具合という事で、正にフェールセーフを欠いた機構を露呈してます。しかし、真にこのエピソードが価値を示すのは、責任を感じた高杉が、自らの身体をエネルギー伝達ケーブルの代わりにするというシーンでしょう。つまり、このエピソードは、主役メンバー自身がの自覚を促すエピソードであって、メカの機構云々、整備が云々という話ではないわけです。

 ウルトラシリーズの方に話を拡げると、整備系技術者がはっきりとドラマにフィーチュアされたのは、意外にも「帰ってきたウルトラマン」と「ウルトラマンメビウス」くらい。前者は、石橋雅史さん(!)演ずる近藤班長が、郷秀樹と共にマットアローの整備を急ぐシーンが印象的。後者は、綿引勝彦さん(!)演ずるアライソ整備長が、職人気質の頑固親父を好演し、都合三話の出演となりました。両者に共通するのは、いかにも手練な雰囲気。整備班としてドラマに絡める人物像としては、こういったキャラクターが適していると思います。いかにも「縁の下」であり、足下がふらつかない。主人公が乗るメカを、安心して任せられる。そんな感覚です。

 故に、今回の「人選」は考えの古い私にとって少々違和感の残るものでした。あと、前掲のグリーンツーのくだりが印象的だったので、ドライバーを置き忘れた時に、「こっちが原因だったらいいのに」と思ってしまった事を、正直に申し上げておきます(笑)。

 こうした「整備に関するリアリティ」はやや及第点を下回っていますが、ドラマ的には実に爽やかで良かったのではないかと思います。新米整備士・小山の雰囲気、演技も抜群でしたし。ドラマの流れとしては、新米じゃないとダメなわけで、そのポジションをよく理解した演出だったと思います。

 今回のメインはヒロムなので、如何にして「天才」の成長物語を作るかという点で、非常に示唆に富んでいたのではないでしょうか。今回、ヒロムは風見鶏を見てフリーズするという笑撃シーン以外は、戦術的に悪い処が一切なく、主に周囲との関わり方に関する成長を重視していました。つまり、当面戦闘力としては完成形にあるヒロムは、主にその性格面を改善(?)していく物語を作っていく事で、成長ストーリーを巧く紡いでいく方針のようですね。

 いわば、孤高の天才から、周囲に支えられる天才への変化といった処でしょうか。

 今回巧いと思ったのは、CB-01が出動不能の間、GT-02、RH-03の大活躍がフィーチュアされた処。CB-01復活後は、すぐにゴーバスターオーに合体するという、まぁいわば普通の戦隊の展開となったわけですが、それまでの他の二体の動かし方が非常に巧く、ピンチの連続というシチュエーションでありながら、ミニチュアワークとオープン撮影+見事なスタジオワークによって、各メカの魅力が最大限に引き出されていたと思います。GT-02のアニマルモードの活躍も、嬉しいポイントでしたね。

 デンシャロイドとデンシャゾードは、戦隊における「コミカル怪人」の典型でした。ただ、デンシャロイドの方は良いとしても、デンシャゾードについては今回のスリリングで硬質なドラマには、やや不似合いだったかも知れません。攻撃方法はコミカルではありませんでしたが、背景を効果で処理する等、割とアニメ風な演出が目立っており、ゴーバスターオーの「あまりに戦隊ロボらしい」演出と相まって、「ゴーバスターズ」で期待する巨大戦とは少しベクトルが異なっているかなぁ...と。

 というわけで、ちょっと辛口になりましたが、次回は設計図にスポットが当たる! 「ゴレンジャー」や「バトルフィーバー」等で展開されたあの「定番」が帰ってきます! 楽しみですね。