Mission 6「合体!ゴーバスターオー」

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 いやぁ、実に面白い!

 「ゴーバスターズ」は、正に「見たい戦隊」を体現してくれるシリーズだという事が分かりました。今回は、「ロボの合体」というテーマを最大限にイベントとして扱いつつ、そこに骨太なドラマを加味しており、非常に満足度の高い一編に仕上がっていました。

 本当の処、戦隊ロボの合体に理屈もドラマも必要なく、完全に「当たり前の事」として処理されても良いのですが、「ゴーバスターズ」は敢えてここにスポットを当ててきたわけで、やはり様々な面で挑戦的だといえるのではないでしょうか。

 一応、メインはヒロムとなっており、これまた戦隊では極めて珍しい「天才であるが故の無理解」というテーマを体現しています。本来は、このテの役目はレッド以外のキャラクターが負ったりしていたわけですが、レッドであるヒロムが体現する事により、一種独特の雰囲気をレッドバスターに与える事が出来たようです。

 続きの方では、ロボの扱い等々について。

 戦隊で初めてロボが登場したのは、言わずと知れた「バトルフィーバー」ですが、バトルフィーバーロボは非変形ロボであり、戦艦に搭載されて来るという、振り返ればある意味極めてシステマティックなロボでした。

 次作「デンジマン」では、変形ロボのダイデンジンが登場。実は、このダイデンジンの飛行形態であるデンジファイター、驚くべき事に、その飛行形態を生かして爆撃、あるいは空中戦を行うといった描写が皆無であり、ロボ戦以外の特撮による戦闘の描写は、その母艦であるデンジタイガーが担っていました。

 更に次の「サンバルカン」では、遂に戦隊初の合体ロボであるサンバルカンロボが登場するわけですが、そのサンバルカンロボを構成する戦闘機・コズモバルカンと重戦車・ブルバルカンは、個々の活躍が特撮パイロット回(つまり初期数話)に限定されていました。なお、最初期の戦隊にして、合体訓練の描写があったのは特筆すべき点ですね。

 これらの事から明らかなように、基本的に戦隊ロボの変形・合体は、いわゆる発進シーンとほぼ等価であり、巨大戦の露払いとしての機能が主です。後に、「バイオマン」で五人揃って操縦する事が不可欠なロボというエクスキューズが付いたりする事があっても、それを含めて基本的にロボは合体後がすべて。後に、「ジュウレンジャー」、「ガオレンジャー」や「アバレンジャー」といったシリーズにおいて、合体前の「ゾロメカ」にドラマを生じさせる試みがあり、それらは一定の成功を見ていますが、それが直後の作品に直接踏襲される事は殆どなく、これがメインストリームではない事が分かります。

 今回、ゴーバスターオーで提示されたのは、ギリギリまで各バスターマシンで粘り、切り札として合体を果たすという方針でした。勿論、リュウジとヨーコが脱出するまで、そもそも合体自体不可能なシチュエーションではありましたが、その前に、ゴーバスターオーがエネトロンを大量消費するという前提や、合体を「コンバインオペレーション」という、一種の「処理」として定義する等、非常に硬派な設定を提示しており、ロボの合体プロセスが、「掛け声一つで完了する」ようなものではない事を強調していました。これからの扱いはまだ予測が付きませんけれども、しばらくゴーバスターオーをあくまで「切り札」として扱ってくれると良いですね。

 この辺りの設定は、「ゴーバスターズ」のトイ展開とも密接に結びついているように思います。今回、CB-01は商品名・ゴーバスターエースとして単独販売されており、GT-02とRH-03をセットにしての販売となっています。CB-01を4段変形、他二体を3段変形とする意欲的な内容と相まって、いかに今回単体メカを重視しているかが分かります。バスターズとバディロイドが揃って操縦に関わる事で、性能を最大限に発揮する設定になっているのも、単体メカの活躍を描いていく意気込みに溢れており、「巨大戦=合体後のロボ戦」ではなく、その前の等身大戦すらも含めた、「メガゾードのシャットダウンに至るプロセス」を丁寧に描いていく事が念頭にあるようです。私個人としては、非常に歓迎すべき傾向です。

 ちょっと残念だったのは、ここに至って「切り札」のゴーバスターオー合体プロセスが、雰囲気的にかなり「バンク的」だった事でしょうか。シミュレーションにおける描写が非常に格好良かったのは良いのですが、それがそのまま現実空間での合体プロセスに(映像的に)流用されていたのでビックリ。エネトロンによるフィールド内での合体という描写になっているのは理解出来るのですが、背景が黒ベタになってしまい、バンクっぽさ全開だったのは、これまでの徹底振りからすると、やや不満です。また、あらゆるタイムリミットを駆使したドラマの盛り上がりとは裏腹に、コンバインオペレーション本番の描写がかなり弱くて、ヒロムがリュウジとヨーコに敵の迎撃を任せたように見え難かったのも残念な点でした。些細な点かも知れませんが...。

 何はともあれ、「敵前でわざわざロボットに合体させる」という、実はナンセンスな行為を、長年にわたって疑問すら喚起されないまま繰り返してきたシリーズに、風穴を開けてみせたのは凄い事ですね。

 さて、ヒロムのドラマにスポットを当ててみましょう。

 今回は、ヒロムが幼少の頃から負けず嫌いだった事を描いていました。この事から、ヒロムは単なる「天才」ではなく、常に自分が優れた能力を手に入れるべく研鑽している事を匂わせています。故に、ヒロムは「思い上がり」による失敗ではなく、自分が研鑽に関わっていない他人の能力に頼る事が出来ずに失敗したわけで、そこに孤独な天才のエゴといった暗さのない爽やかさが漂っているのが、新しい感覚でした。

 一方、リュウジはヒロムに対し、それを正面切って指摘するのではなく、敢えて一旦突き放してみせたわけですが、これは周囲の者達が云うように、正に「年の功」といった感じでした。年の差をポジティヴに活かしていく作劇は、戦隊としては異質ですが、これが「ゴーバスターズ」の独特の雰囲気を作っている要因の一つである事は、まず間違いないでしょう。

 また今回は、ヒロムのメンタルやポリシーにおける弱点をあぶり出すストーリーだったためか、ウイークポイントが登場しませんでした(各々「予防」はしていましたが)。メガゾード転送タイムリミットもそうですが、定番化させやすい要素を「お約束」にせず、常に新鮮みのある作劇を探っていく姿勢は、最大限に評価したい処です。

 そういえば、今回は「敵の侵入話」でもありました。中盤、あるいはラスト近くの盛り上げに欠かせない定番ストーリーですが、「ゴーバスターズ」では、それを序盤にやってしまったわけで、面白さへの貪欲さここに極まれりといった印象でした。同時に、エンターの仕掛けてくる頭脳的な作戦を、ギリギリで対処しなければならないというスリル。武力だけでない攻防戦の見応えある展開に、制作の本気を見ました。

 次回は、整備班にスポットが当たる! 実にウルトラ的な発想を戦隊的にどう描写するか、楽しみです。