第35話「次元ノムコウ」

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 ある意味、「ゴーオンジャー」と「ゴーカイジャー」は真逆の戦隊かも知れません。

 「ゴーオンジャー」というシリーズは、キャッチコピーの「正義のロードを突き進む!」が示すとおり、「正義」を信じて疑わず、自分達の戦う理由が揺らぐような事がほぼ皆無なシリーズでした。それは、今回のゴーオンレッド=江角走輔のセリフにもあるように、たとえ異なる次元の出来事であっても、「正義」が侵されるような事があれば、相棒と共に出向くことを辞さないといった、根っからの正義のヒーローを描くというポリシーに貫かれていました。

 対して、「ゴーカイジャー」は、地球の平和とか宇宙の正義といったイデオロギーとは、本来無縁の存在です。鎧だけは、地球人であり、スーパー戦隊の申し子としての側面があるので、そのポリシーに穴を穿つ存在なのですが、基本的に海賊戦隊の行動は、マーベラスの思惑次第。鎧とて、マーベラスを「正義」の為に強引に説き伏せる事は不可能なのです。

 これまで、ゴーカイジャーによってザンギャックから地球が守られてきたのは、スーパー戦隊の先輩達との交流により、マーベラスの興味の対象が、地球守備への行動に「薄く」関連付けられた為に過ぎず、それは今回、改めて確認されました。

 こんな風に書くと、「ゴーオンジャー」編なのに、重いテーマを内包しているかに思えてきますが、本編はそんな事は全くなく(笑)。むしろ、ザンギャックの登場すら皆無な、完全なる「ゴーオンジャー・ワールド」になりました。

 走輔役の古原靖久さんは、現在公開中の劇場映画「電人ザボーガー」の青年期編で、主役を務めており、このタイミングでの登場はタイムリー。まぁ、「ザボーガー」の制作は東映ではないので、多分プロモーション的な話は全く以て無関係だとは思いますが。

 その古原さん、江角走輔を見事に蘇らせてくれました。完全に当時の走輔でしたよね。


 「ゴーオンジャー」には、ブレーンワールドの概念があり、全部で11の次元から成立する世界を、基本設定に持っています。ブレーンワールド自体はちゃんとした宇宙論の学説ですが、「ゴーオンジャー」ではかなりデフォルメされており、今回の舞台となったガンマンワールドや、クリスマスワールドなんていう珍妙な次元世界が存在、個性豊かな別次元世界が、薄い膜状で並んでいるという、ビジュアル的に分かりやすくも、お伽話的な世界観に仕上げられていました。

 オリジナルの「ゴーオンジャー」は、主に現宇宙=ヒューマンワールドで展開しましたが、このブレーンワールドの設定により、あらゆる世界での展開が可能になり、正に何でもアリな状態を作り出せる舞台装置が設えられたわけです。しかしながら、「ゴーオンジャー」自体かなり人気があったものの、その後の展開はあまりフレキシブルには行われず、過去の戦隊同様、ある時点で区切りが付けられました(その後の「シンケンジャー」人気の方が目立ってしまったという側面も)。

 今回、そのブレーンワールドの一つである「ガンマンワールド」にて、ストーリーが展開されるのですが、これは「ゴーカイジャー」の世界観を侵さない為の方便と捉えるのが妥当でしょう。これまでも、ジャカンジャの残党が出現したり、リュウオーンその人が出現したりと、過去の敵キャラの登場は見られましたが、いずれもザンギャックと何らかの関係が用意されていました。ところが今回は、完全に「ゴーオンジャー」の世界観の上でゴーカイジャーが立ちまわるという図式になっています(後編ではザンギャックも関わるようですが)。

 この図式により、「ゴーオンジャー」がその世界観丸ごと「先輩ゲスト」となり、その中でゴーカイジャーの面々も目立った活躍をする...という、見事な、そして新味のある「先輩ゲスト編」を形成していました。つまり、ザンギャックを廃して「ゴーオンジャー」の続編をやるには、ザンギャックに気付かれない必要があり、それが可能なのは、別次元であるといった手順なのでした。

 そして、「ゴーオンジャー」の世界観を担っているのが、走輔、ボンパー、スピードル、バスオン、ベアールVといった面々。

 走輔以外は声の出演ながらも、オリジナルキャストをこれだけ揃えてくるのは予想外で、嬉しい趣向です。どのキャラクターも当時のままの魅力を放っており、オリジナルを尊重する姿勢が垣間見えますね。各キャラはそれぞれ、「ゴーオンジャー」のその後を体現しており、走輔はレーサーとして活躍しているかも知れない(「かも知れない」というのは、走輔の登場シーンと、レースカーの映像との関連性が疎であったから)。スピードルとバスオン、ベアールVは、他の次元に出没するガイアークの残党を討伐する事もあり、それぞれ「正義ノミカタ」を継続中。しかも、スピードルとベアールVは結婚しており、不良息子まで居るというから驚き!

 勿論、これだけ気合の入ったお膳立ての背景には、新しい「大いなる力」の商品化というイベントがあるわけですが、それにしても、やはり「ゴーカイジャー」が「ゴーオンジャー」の続編を内包しているという実感は大きく、他の先輩ゲスト編と比べても、その実感はかなり大きいものとなっています。

 近作だけあって、プロップ系の充実も嬉しい処。ボンパーを始め、スピードル、バスオン、ベアールVの、巨大戦用ミニチュアと本編用プロップも登場し、世界観の連続性をバッチリ演出してくれます。やっぱり、改めて見ると炎神には不思議な魅力がありますよね。

 さて、これだけ舞台装置が揃っているのだから、走輔も当然の如く、「ゴーオンジャー」の世界観のまま芝居をする事になります。しかし、「ゴーカイジャー」と「ゴーオンジャー」は冒頭にも示したように、真逆と言っていい程異なる世界観を持っています。しかも、「ゴーオンジャー」の本質は「熱いコメディ」なのです。

 以前、「カーレンジャー」のスタイルを「ゴーカイジャー」に持って来る際、一時的に「ゴーカイジャー」をコメディ戦隊として再構築してしまいましたが、今回は極めてバランス感覚に優れていたと、個人的には思います。

 というのも、あくまで「ゴーカイジャー」の世界観のまま、少しずつ「ゴーオンジャー」の世界観が忍び寄っているという感覚だからです。イデオロギーが全く異なる両戦隊であるが故に、ゴーカイジャーの面々は、ゴーオンジャー=走輔の「奇行」にやや冷ややかな視線を向け、ゴーオンジャー=走輔は、ゴーカイジャーの冷めた感覚に憤慨するといった展開になっています。なので、割とドライな感覚で、走輔の言動に笑いを誘われ、「ゴーオンジャー」の雰囲気を堪能する事が出来つつ、走輔に少しずつ歩み寄るゴーカイジャーのカッコ良さも堪能する事が出来るというわけです。

 走輔自身は今回、ある意味でコメディリリーフとして扱われ、笑いどころを作る役目に徹してますが、それでも元ゴーオンレッドである事の証左として、当時よりレベルアップした素面アクションを披露したり、揺るぎない正義の心を示す等、ヒーローとしての貫禄は充分でした。やはり炎神同様、走輔という類稀なレッドヒーローにも語り尽くせない魅力があると思います。

 そういえば、走輔の走輔らしいアイテムがちゃんと登場してましたね。そう、コインです。走輔は、恐ろしい程の強運の持ち主という設定で、その設定は少々消化不良な感がありましたけど、しょっちゅうコイントスをするシーンがあったので、走輔と言えばコインという程の印象があります。こちらも、当時よりコイントスの仕草がカッコ良くレベルアップしてましたね〜。

 今回は前後編なので話が完結しておらず、このような「見た目」の印象でしか語れませんので、かなり短めになってしまいましたが、ここらで豪快チェンジについて言及しておきます。

 まずは、待ってましたのバトルフィーバー。私は超が付く程バトルフィーバーが好きなのですが、ようやくTVシリーズでも豪快チェンジを披露してくれました。登場した個人武器は、バトルジャパンの槍だけでしたが、槍のアクションは新堀さんのそれを彷彿させるもので、満足度は高いです。他にも、バトルフランスが舞のようなアクションを見せたり、バトルコサックが得意の回転キックを披露、ハカセのコミカルアクションがバトルケニアの個性とマッチする等、オマージュに溢れていて好感が持てました。

 ところで、ミスアメリカのタイツは、「ゴーカイジャー」における仕様なんでしょうか。当時は、男性スーツアクターがスタンドインするシーンのみ明確なタイツで、他は素足、もしくは素足に極めて近い薄手のタイツ地のようでした。現在のタイツは、ちょっと違和感があるんですよねぇ。

 バトルフィーバーへの豪快チェンジでは、まさかのペンタフォースも披露。劇場版ではバズーカタイプを披露したようなので、今回のブーメランタイプには、嬉しいものがあります。空中で合体したコマンドバットを、改めて敵に投げつける(弾き飛ばす)という演出が、新しくてカッコ良かったと思います。

 続いて、チェンジマンへ。今回は、それぞれ個人の「アタック」が連続的に使用され、前回のチェンジと差別化が図られていました。チェンジマンの伝説獣アタックには、エレガントな魅力があります。

 締めはデカレンジャーで。ガンマンタイプの敵に相応しく、銃撃戦主体で個性を発揮。剣戟戦にスイッチして、ダイナミックなアクションを披露してくれました。

 巨大戦では、得た筈の「ゴーオンジャーの大いなる力」が使えないという事態に。スピードルとベアールVの息子が関わっているのは明らかなのですが、どのような展開を用意しているのか、楽しみですね。