第37話「最強の決戦機」

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 いわゆる、巨大ロボ最強形態登場への序章というヤツですが、ある意味、ワルズ・ギル編として捉える事も出来る一編。つい、応援したくなりませんでしたか?

 残念ながら、色々と設定に無理がある感じもする上、ジョーとバリゾーグの結線も唐突に始まったようでもあり、結構チグハグなんですけど、ビジュアル面では、これでもかというくらいに気合が入りまくっており、最終回並のテンションになっています。

 マーベラスの「(地球を)守ってないし、守れてもいない」というセリフは、「ゴーカイジャー」の在り方を鋭く示唆していて、良かったですね。実の処、ゴーカイジャーの面々は地球に来るまで連戦連敗していたも同然だったという壮絶さ。それが深みとなっている感はありますね。

 ビジュアル面の凄さは、とりあえず実際に画面を見ていただくのが一番なので、チグハグな部分についてのあれこれを。なお、個人的事情により短めとなります...。


 ワルズ・ギルというキャラクターは、戦隊では割と珍しいキャラクターだと思います。

 敵に「ボスの馬鹿息子」が出るケースは、アニメ等を含めれば散見されますが、特撮では結構少ない。私が思いつく限りでは、今話題の「ギャバン」くらいしかありません。

 「ギャバン」には、マクーの首領ドン・ホラーの息子、サン・ドルバが登場します。このサン・ドルバ、結構な実力者ではあるのですが、実際の処、銀河で傍若無人振りを発揮出来たのは、ドン・ホラーの息子という肩書きがあったからという設定。その上、母親である魔女キバの妖術の後ろ盾がある事で、数々の勝負に勝ってきたという、何ともヘタレな設定もオマケに付いており、特撮界では史上最強の「バカ息子」だと思います。

 もう一人、「ボスの息子」ではないですけど、「レインボーマン」のエルバンダが忘れがたい名悪役。ピンチに陥ると、母である魔女イグアナに「ママー!」と泣きつくという、マザコン丸出しの超個性派でした。インパクトは絶大でしたね。

 ただ、この二人は、サン・ドルバを名優・西田健さんが、一方のエルバンダを、名ピアニスト・フジコ・ヘミングの実弟である怪優・大月ウルフさんが演じており、演者の卓抜した演技による説得力がありました。故に、単なる「バカ息子」を超えた、たぎるプライドのようなものを感じさせたり、狂気を感じさせたりと、一筋縄ではいかない雰囲気を醸し出していたわけです。故に、語り継がれる名キャラクターとして成立したと言えるでしょう。

 対して、ワルズ・ギルはどうか。

 私が思うに、スーツアクターさんの演技も、声の野島裕史さんの演技力も申し分なく、むしろ近年の悪役キャラの中では出色とも言える出来だと思います。宇宙最強の軍事力を誇り、数々の星々を滅ぼしてきた軍団であるザンギャックの中にあって、道化芝居にも等しい立ち振る舞いで、我々を和ませてくれるのですから(笑)。

 しかしながら、このワルズ・ギル最大の弱点は、いわゆるスーツだという事。近年の悪役は、残念ながら素面の役者が演じる事が極端に少なくなってしまい、それが悪役の魅力をスポイルしているように思えてならないのです。最近は、口を動かす事の出来るマスクが素晴らしく、完全に無表情というわけではありませんが、やはりベテラン俳優陣、あるいは妖艶な女優陣による鬼気迫るようなオーラ溢れる演技には敵わないでしょう。

 かなり独断に満ちた見解ではありますが、ワルズ・ギルの「素面でない」事が、彼の説得力を半減させているものと、私は考えています。故に、今回明かされた「馬鹿息子呼ばわりは承知の上」という話は、かなり唐突に見えてしまいました。例えば素面ならば、ちょっとした舌打ちの表情等から、鬱屈した精神を垣間見る事が出来たりするんですが...。

 まぁ、その辺りは望むべからざる事なので、この辺で置いておく事とします。

 もう一つ、ザンギャックの人間(?)関係が、今となっては不徹底。しかし、これは好意的に解釈するか否かで随分と変わってきます。

 好意的でない見方をすれば、インサーンは、ワルズ・ギルを馬鹿にしている割には、自分も特に戦果らしい戦果を上げておらず、単なる巨大化要員。バリゾーグはいいとして、ダマラスは、ワルズ・ギルを皇帝の放蕩息子だと思っている一方で、皇帝の子息であるという事実の手前、彼に従う事を選択せざるを得ない...という程の深みがなく、行動に一貫性を欠いています。「ゴーカイジャー」という作品の性質上、敵はあまり重視されないのは仕方のない事であり、それ故の扱いの軽さはしょうがないにしろ...ね。

 一方で、好意的な見方をすれば、インサーンは、反逆の徒、あるいは翻ってワルズ・ギルの侠気に触れるという展開を秘めているが故に、現在は巨大化要員に甘んじているという見方も。そして、ダマラスは、ワルズ・ギルに対して保護者のような感情を秘めており、ワルズ・ギルに何かあった場合、皇帝に背いてまでワルズ・ギルを護る為に戦うといった展開も考え得ると思います。

 あ、ないかな(笑)。

 というわけで、ワルズ・ギルがグレートワルズを得て立ち上がり、ゴーカイジャーに挑戦するのは、やや唐突な感じがしたわけでして。また、ジョーとバリゾーグの決戦も、一話丸々盛り上がれる題材にも関わらず、ここに配置してしまったのは、やや頂けない感じがするわけですよ。更には、互いの必殺技(同じ技ですが)を繰り出し、一番盛り上がった処で、巨大戦を描く為に流れをぶった切るという、構成のイマイチ感が。色々と残念なんですよね。

 グレートワルズは、ワルズ・ギルのデザインを巧く落とし込んでいて、素晴らしい。自分の姿を模したロボットに乗るという展開は、「トライダーG7」のザクロンを想起させますねー。

 最後に、豪快チェンジについて。今回は、変則パターンが光りました。ジョーを除く五人で、それぞれがイレギュラーな部類の追加戦士にチェンジして、暴れてくれました。

 マーベラスはウルザードファイヤーに。特徴的な武装や技をバッチリ披露してくれました。ルカはズバーンに。「ズン、ズン」があまりにも可愛くて、オリジナルのズバーンを完全に忘却させてくれました(笑)。ノリ的には、さとう珠緒さんの大いなる力といった処でしょうか。ハカセはシグナルマンに。コミカルでありながら、決めるときは決める姿勢が、ピッタリのチェンジでしたね。武器等もしっかり描写されていました。そして、アイムはデカスワンに。唯一の女性型で、アイムにピッタリ。このチェンジのセレクト、何気に職人技だと思います。

 後編は、最終形態登場編となりますが、どう料理してくれるのか...やや不安ですが楽しみです。