第39話「どうして?俺たち高校生」

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 超駆け足のワルズ・ギル決戦編が終わり、一段落という事で、かな〜りユルいお話でしたね。

 一応、現時点で最強の敵であるバスコも登場しますが、以前の対バスコ戦における戦い方に比べ、ややゴーカイジャー側にも成長が見られるといった描写もあり、必ずしも負けっぱなしではないという辺りは、なかなか良かったのではないでしょうか。

 というのも、一話完結という形式上、バスコに毎度何らかの退場契機を与えなければならないからです。既に、大いなる力の略奪行為が必ずマーベラス陣営と偶然重なってしまうという、登場上の不自然さを内包している上で、退場においても偶然性を導入しなければならないとあっては、バスコの使い方がどんどん難しくなってしまいます。

 さて、今回はメガレンジャー編でした。ゲストはメガレッド=伊達健太こと大柴隼人さん。「メガレンジャー」は「ターボレンジャー」以来の高校生戦隊でしたが、レッドに「落ちこぼれ」を設定するという設定のシフトにより、より爽やかな学園ドラマとなりました。

 当然ながら「メガレンジャー」当時と比べ、格段に「大人の男」となった大柴さんですが、「諸星学園高校」の教師になっているという設定にも完璧に雰囲気がマッチしており、もはや「落ちこぼれ」ではなく、「生徒と等身大で付き合える先生」となっていました。実はこの「等身大」という言葉こそが、「メガレンジャー」のテーマ。

 続きの方では、その「等身大」にスポットを当ててみます。


 今回の見所は、何と言ってもマーベラス達の学校生活ですね。

 体裁は「先輩ゲスト編」ですが、それなりに困難な試練や重いテーマを背負う事を課してきた他の先輩達に比べ、さすがは健太、海賊達に学校生活をさせて、学校が楽しくて大事な場所だという事を理解させるという、他のスーパー戦隊には殆ど通用しない試練(?)を課します。

 「ゴーカイジャー」は、シリアスとコメディの振り幅が広く、それぞれの「場」でそれぞれ水準を超える魅力を発揮するという、稀有なシリーズだと思いますが、今回はその中間にあって、スーパー戦隊のある種の独特のユルさを強調し、その場での魅力を確認するような作風だったように思います。その中心を担うのが伊達健太。しかし、「メガレンジャー」は特にユルいシリーズというわけでもなく、むしろ後半戦に向かってハードな作風になっていく印象のシリーズでした。では何故、健太がユルさを許容するキャラクターなのか。そこを追求すると、自ずと「メガレンジャー」の魅力なりテーマ性が見えてくると思います。

 ここで見えてくるのが、「等身大」。ここでいう「等身大」は、巨大戦がないがしろにされているという意味ではなく、ドラマのテーマが「等身大」だという意味です。

 繰り返しになりますが、「メガレンジャー」は「高校生戦隊」。しかも、同じ「高校生戦隊」の「ターボレンジャー」よりも、徹底して「高校生」です。

 伊達健太がメガレンジャーにスカウトされたのは、通学途中に寄り道出来るようなゲームセンター。メガレンジャーのメンバーは、諸星学園高校の「デジタル研究会」の部員。先生に正体を隠して戦うメガレンジャー。文化祭や修学旅行といったイベントも描かれ、メンバーは、学業や遊びと戦いの両立に悩んだり、励まし合ったりします。究極は、メガレンジャーである事がバレた後、危険視されて学校から追い出されるという展開。その後、「友達」や「先生」といった、メガレンジャーの面々が「等身大」で付き合ってきた人々により、卒業を祝福されるという、非常に感動的で爽やかな幕引きを迎える事となります。

 また、「メガレンジャー」には「良き大人」が登場するのも特徴。久保田博士、大岩先生、そしてメガシルバー=早川裕作。それぞれが、個性的で一筋縄で行かないキャラクター性を持ちつつも、健太達にとっては頼れる背中を見せてくれる存在でした。学園モノには、「悪しき大人」と「良き大人」が不可欠ですが、悪い大人の部分を敵組織であるネジレジアが担っていたので、主人公サイドには「良き大人」が付いていたという事。納得のいく人物構成だったと思います。

 というわけで、「メガレンジャー」には、主人公同士の「等身大」の付き合い(健太以外のメンバーが両方カップルだったという、空前絶後の設定も)に加え、主人公と他の生徒との「等身大」の付き合いがあり、そして良き大人達との「等身大」の付き合いがあったのです。そのお陰で、「メガレンジャー」の出来事は、どこか地に足の着いた印象があり、そして、我々の日常の延長上にあるような雰囲気があったのだと言えるでしょう。

 そして今回、伊達健太がその「良き大人」になって帰ってきたわけです。

 その「良き大人」っぷりは、生徒達が気軽に声をかけてくれる教師という像で、存分に描かれていました。そして何より「メガレンジャー」のファンにとって嬉しいのは、健太が「デジタル研究会」の顧問になっていて、メガレンジャーの上部組織であるI.N.E.T.とも、依然関係が継続していると思しき描写がある事です。これにより、健太がメガレンジャーであった高校時代から、全く変わらないスピリットを根底に維持しつつ、大人としての知識や観点を身につけており、生徒達と等身大で付き合える教師になっている事が伺えます。

 素晴らしい事に、健太は自分が「等身大の付き合い」で支えられた経験を活かすべく、教師という道を選んでいるんですよね。当時「メガレンジャー」を視聴して楽しんだ者としては、大変嬉しい事です。

 その「等身大の付き合い」が、「メガレンジャー」のテーマであれば、それをゴーカイジャーに伝えるのが健太の役目。しかし、健太は単に「学校生活を送れ」とマーベラス達に指示し、後は物陰から見守っているだけでした。

 マーベラスがその身体能力をフルに生かして、バスケのチームと意気投合している間に、ジョーとアイムは生徒同士の恋模様を目撃、ルカとハカセは件のデジタル研究会にて、部員との交流を果たします。これらのシーンは、学生姿のメンバーの爽やかな出で立ちと相まって、それぞれシリーズの名シーンとして挙げられるべきものに仕上がっていると思います。大抵、学園コスプレモノはコメディ一辺倒に終わってしまうのですが、今回のように、ちょっとコミカルながらも学校生活に馴染んでいる様子が「微笑ましい」のは、マーベラス達の深みのあるキャラクター故でしょう。これは見事でしたね。

 それを見守る健太の眼差しは、正に「良き大人」のもの。大柴さんの自然な芝居がとてもいい感じでした。一方で、バスコと対峙した際の鋭い表情は、当時の厳しい戦いに際してのものに通じ、学校に仕掛けられた爆弾を憂う表情は、当時の仲間を心配するそれに通じていました。

 その爆弾回収では、ゴーカイジャーの活躍一辺倒ではなく、生徒達がそのネットワークを駆使して発見に協力するというプロセスが実に秀逸。「健太の教え子」という感覚を混ぜ込む事で、諸星学園高校にメガレンジャーのスピリットが生きているという雰囲気にまで昇華させており、単なる学園パロディモノから脱却していた事に、感心しきりでした。ユルさの中に、確固たるテーマ性があったわけです。

 さて、今回の豪快チェンジは、的を射た活用法になっており、ストーリーの流れに沿ったものとなっていました。

 鎧は、マジシャイン、ゴセイナイト、メガシルバーにチェンジ。この中で、特にゴセイナイトはバスコの略奪を阻止すべく天装術を使うという、実に理にかなった利用法が印象的でした。

 マーベラス達五人は、タイムレンジャーにチェンジして、集めた爆弾を圧縮冷凍するという活躍を見せます。爆弾の処理方法としては、最良の選択である事に加え、次回がタイムレンジャー編である事を見越した使用が、緻密な構成力を感じさせます。

 トリは当然のごとくメガレンジャー。前述の鎧のメガシルバーも加えた六人編成で登場。主題歌インストも流れて雰囲気充分な上、個人武器もふんだんに使用してアクションを盛り上げてくれました。メガブルーによる立体映像や、サイバースライダー&オートスライダーの描写は、さすが現在の技術というわけで、当時のそれを超える完成度を誇っていました。変身シーンも再現されてましたね。

 大いなる力は、ラストシーンにて、「卒業証書」として健太から手渡されるという展開になり、結局大いなる力が何なのかは分からないままとなりましたが、今回の構成上、特に不明なままでも満足度は高く、わざわざ盛りこんでバランスを欠くより良かったのではないでしょうか。

 次回はタイムレンジャー編。さすがに永井大さんは出演しないようですが、まさかのドモン=和泉宗兵さんが登場。これまた楽しみですね〜。

 そうそう、巨大戦で渡辺宙明先生&水木一郎アニキの挿入歌が聴こえてきましたね。宙明節、健在!!