第51話「さよなら宇宙海賊」

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 遂に最終回。最終回には、様々なパターンが存在しますが、この「ゴーカイジャー」の最終回は、正攻法の極致たる最終回だったと思います。

 尺の殆どは、ゴーカイジャーの逆転劇とザンギャック皇帝・アクドス・ギルの打倒に割かれ、エピローグは少なめ。その時間配分は大正解で、「ここで来たか!」というフリージョーカー(文字通り切り札!)での突入、そして「スーパー戦隊シリーズ集大成」と呼ぶに相応しい、もうどうやって撮影したか想像もつかないラストバトルの凄まじさに、テンションは上がりっぱなしでした。

 あまりに凄まじいので、巧くまとめられませんが、一年を通じて見てきた感想等も交え...。


 最終回のゴーカイジャーは、二つの面を見せてくれました。一つ、宇宙海賊。一つ、歴史を背負った35番目のスーパー戦隊。

 宇宙海賊の面は、アクドス・ギルとの地上戦を挟んだ前後で出現します。ナビィ含めた宇宙海賊の逆転劇は、フリージョーカーの奪取から、ギガントホースへの特攻、マーベラス&鎧の皇帝襲撃、ギガントホースによる大艦隊の一掃、ギガントホース破壊に至るまで、実にダーティでハードな戦いっぷり。海賊と認められた鎧も迫力ある言動で皇帝を翻弄しており、ここでの戦いは正に宇宙海賊のものでしょう。

 マーベラスが鎧を連れて行くというくだりでは、「スーパー戦隊」の名を口にしていますが、ここではマーベラス自身がスーパー戦隊であるという意味は薄く、むしろ鎧の中にあるスーパー戦隊のスピリットを燃え上がらせる口上としての側面が強いように思います。他のメンバーとの関係性も、海賊としてのゴーカイジャーならではですし。

 一方で、アクドス・ギルとの地上戦での、マーベラスの「地球を守る」宣言は、正にスーパー戦隊のスピリットそのもの。「地球に来たのが間違いだ」といった趣旨の発言は、スーパー戦隊が守り継いできた地球というイメージを喚起させてやまない、名台詞として心に残りますね。

 バトル自体も、海賊戦隊ゴーカイジャーならではの戦い方は薄められており、目まぐるしい豪快チェンジによって、過去の戦隊アクションが再現されるといった趣向になっています。その組み合わせ、セレクションの妙味は、目まぐるしい中にもこだわりが感じられ、その裏に厳然としてある職人芸を感じさせます。

 忘れてならないのは、名乗りが慣例通り、素面のキャスト陣によるものとなっていた事。どのような理由付けでマスクオフにするのか、興味津々でしたが、まさか変身途中に名乗りを入れる事で解決するとは! 意外な処理で驚いたと同時に、感心しましたね。ポーズ自体はアクロバティックな要素がなくて簡単なものなんですけど、雰囲気を合わせるという面は、スーツアクター陣と綿密なすり合わせがないと、実現しないのではないかと思います。簡単であるが故に、非常に難しい名乗りだと思います。

 アクドス・ギル打倒後は、正義のヒーローという肩書きを返上するかのようなエピローグが印象的。地球に訪れて一番最初に寄った「スナック・サファリ」の新店舗で再度カレーを注文し、シリーズの初めと終わりを綺麗に繋げてくれたのを始め、スーパー戦隊としてのサインを子供達に請われても断り、レンジャーキーを先輩達に返していく...。これは35番目のスーパー戦隊となった彼らが、地球という場所の特殊性を象徴する「スーパー戦隊」からの脱却をする事で、海賊としての次なる旅を始める...といった意味合いにとれます。

 ここから読み取れるのは、スーパー戦隊が地球でしか成立しないという事。かつて、「ウルトラマンガイア」で「地球はウルトラマンの星」という最終宣言が為され、視聴者に驚きを与えたわけですが、「ゴーカイジャー」では、「地球はスーパー戦隊の星」という最終宣言が為されたと考えて、差し支えないと思います。つまり、マーベラス一味(あえてこのような呼び方をします)は、今度何らかの理由で地球に訪れれば、スーパー戦隊であるけれども、ひとたび地球を離れれば、宇宙最強の宇宙海賊として名を馳せる。そういう事です。

 しかし、ここで完全にスーパー戦隊を脱却しているわけではない、スーパー戦隊の担保が存在します。それが鎧です。

 気づけば、マーベラスと共にギガントホースに乗り込んだのも鎧ですし、地上戦でアクドス・ギルに対してゴーカイガレオンバスターを突き刺し、単独でぶっ放そうとしたのも鎧です。この鎧の全面フィーチュア振りは、これまでの流れから行けば、やや唐突にも映る処理です。

 ところが、これら鎧の活躍ぶりが、一つの縦糸として生きてきます。それは、鎧が地球人であり、地球を守ったスーパー戦隊の正統なる後継者として扱われているという縦糸。鎧がスーパー戦隊によって守られた地球人の代表として、次なるスーパー戦隊になる事を運命付けられた男である以上、宇宙からの侵略者に対する「落とし前」は、鎧が率先して付ける必要があった...と言えば言い過ぎでしょうが、それに近い演出意図が感じられるのは確かです。

 鎧は、シリーズ全編を通じて、マーベラス達をスーパー戦隊側に引き寄せる役割を果たしており、逆にエピローグにて、地球人代表として宇宙に旅立った(つまり、海賊に引き寄せられた)わけですが、鎧の加入によって、地球という場の影響を受けない宇宙でも、マーベラス達がスーパー戦隊である事を担保しているように思えるのです。

 ここで、アクドス・ギルに関して言及。アクドス・ギルは、ギガントホース内部では座ったままマーベラスと鎧を翻弄するなど、その実力の高さを見せつけました。しかし、皇帝という地位がスポイルする知略の不足か、大艦隊を瞬時にして失い、地上戦でも数多くのスーパー戦隊の力を身に付けたゴーカイジャーの前に、その実力を発揮する暇もなく、倒されました。

 いわゆるラスボスとしての強さは、どうだったのかといった話もありますけど、当たり前のように繰り返されてきた巨大戦による決着がないという掟破りに加え、皇帝自ら地球という惑星に乗り込んでくる程、宇宙海賊の存在を疎ましく思っていた事を感じさせるその行動を見ると、「強さ」という面自体は丁度いい塩梅であったと思います。というより、大艦隊の画作りは充分ラスボスを前にしての絶望感を煽っていましたし、そのウィークポイントとして皇帝自身が存在すると考えれば、そのウィークポイント自体があれだけの戦いを見せるのですから、それはそれで順当な強さだったのではないでしょうか。

 そして、「シャイダー」における「大帝王クビライの死=フーマ崩壊」の図式に代表される駆け足な印象(止め絵で銀河系各所での銀河連邦警察勝利が描かれる)とは異なり、徐々にザンギャック崩壊が始まりつつあるという言及に留め、マーベラスが「宇宙で二番目のお宝」を、ザンギャック本星に求めるという今後の展開が用意されるなど、すぐには壊滅しない「帝国」のリアリティが描かれた点は特筆出来ます。勿論、今後の展開を可能とする為の、一種の担保でもあるでしょうけど。

 そんなわけで、アクドス・ギル、いいじゃない。そういった結論を私はとります。

 さて、今回の豪快チェンジ、まとめるの大変ですね。とりあえず、順番に列挙してみます。

 (ここより追記。完全に忘れていました。ご指摘に感謝)

 最初に、ダイランドー戦。

 まず、ジョーがデカマスター、ハカセがズバーンにチェンジ。剣術つながりという事でしょうか。驚きは、ハカセのズバーンが「いててて!」と言いながら、剣モードにチェンジしてしまった事。「仮面ライダーディケイド」のファイナルフォームライドを思わせる、楽しいシーンでした。

 女性陣は、ルカが姫シンケンレッド、アイムがマジマザーに。それぞれ効果的な戦術を見せ、ダイランドーを翻弄していました。最後に、素面でのゴーカイガレオンバスター発射が見られたのも大収穫でしたね。

 次に、ギガントホースからの脱出手段として、マーベラスがゴセイレッド、鎧がゴーオンウイングスにチェンジ。ゴセイレッドはスカイック族であり、天装術で飛翔が可能。ゴーオンウイングスはロケットダガーにより、飛行が可能という事で、巧く使われています。

 続いて、アクドス・ギル戦。

 (ここまで追記)

 まず、鎧がゴセイナイトに。アカレンジャーとダイヤジャックによるヤリビュート&ダイヤソードの同時攻撃、バトルケニアとバルパンサーのアニマルアタック、デンジピンクのデンジパンチと続きます。

 続いて、ボウケンレッドとテンマレンジャーのロッド攻撃、ダイナブラック&イエローマスクの分身攻撃、忍者繋がりでシュリケンジャー、ニンジャホワイトも登場。

 次に、ゴーグルピンク&ファイブイエローのリボン攻撃、レッドレーサー、ゴーオンブルー、ブラックターボの高速アタックが炸裂。

 そして、プテラレンジャーとアバレイエローの翼竜ペア、ギンガレッド&黒騎士による炎の兄弟共演、ブルースリー、チェンジグリフォンの空中殺法と続きます。

 空中殺法はさらに続き、レッドホーク、ピンクフラッシュ、ガオイエローの「空飛ぶ戦士」で攻撃。続けざまにメガブラックとゴーブルーがブレスレットを使ったパンチ攻撃を加えます。

 イエローライオン、タイムピンクのペアによるバズーカ発射に続き、キングレンジャー&オーレッドの超力戦隊ペアによる斬撃が決まります。

 最後は、「スーパーレンジャー」と称し、ハイパーシンケンレッド、スーパーゴセイブルー、スーパーゲキイエロー、デカグリーン・スワットモード、レジェンドマジピンク、ゴーカイシルバー・ゴールドモードが揃い踏み。パワーアップ形態の揃い踏みは正に圧巻。

 いやはや、実に壮観でしたね〜。

 そして、エピローグに登場した先輩ゲスト達に言及しないわけにはいきません! こちらも登場順で。

 まずは、バルイーグル=飛羽高之。現実空間での登場が実に嬉しい限り。敬礼が当時を彷彿とさせます。次に、テンマレンジャー=天重星・将児とキリンレンジャー=天時星・知。このお二人、当時と全然変わってません! もう、嬉しすぎて興奮しまくりました(笑)。

 ファイブイエロー=星川レミ。こちらも音楽室という現実空間での登場が嬉しいですね。そして、ゴーグリーン=巽ショウ。この方も当時と変わりません。仮面ライダーデルタ役も印象的でしたね。マジピンク=小津芳香も登場。ファミリー劇場でその特異なキャラの魅力を振りまいていた彼女、やっぱり素敵です。

 ゴーオンシルバー=須塔美羽。お嬢様という設定を生かした、ゴージャスな出で立ちでの登場でしたが、ホント、可愛いし綺麗ですよね〜。そして、前回重要な役回りで登場したマンモスレンジャー=ゴウシも登場しました。変わり種として、ドギーとシグナルマンが並び立つというカットも。

 最後を締めくくるのは、やはりこの人。アカレンジャー=海城剛! あの誠直也ボイスが響き渡り、アカレンジャーへの転換も見せてくれる大サービスには、感涙必至でした。もう、何も言う事はありません。

 というわけで、「ゴーカイジャー」を一年間見てきたわけですが、同様の初志に立脚する「ウルトラマンメビウス」や「仮面ライダーディケイド」といった作品群を、あらゆる面で上回る完成度だったと思います。よく、ここまで巨大な存在となったスーパー戦隊を、クロスオーバー作品として一つの作品にまとめあげたものだと感心します。

 当初は、「過去のスーパー戦隊に変身して戦う戦隊」という面が尋常でなくクローズアップされ、「過去の遺産に頼る」戦隊というイメージが先行していたように思います。

 ところが、先輩ゲストの登場が判明してからは、俄然、スーパー戦隊シリーズ視聴者のあらゆる世代との一体感が醸し出されるようになり、逆に先輩ゲストの登場のないエピソードの完成度がグングン上がっていくという、正に「成長するシリーズ」となりました。ザンギャック自体の扱いの軽さは、如何ともし難い面が否めませんでしたが、こうして最終回まで通して見ると、それなりに巧いバランスで成立していたのが素晴らしい処です。

 長年の戦隊ファンからすれば、OBの「その後」が見られる貴重なシリーズとして映り、そして、毎年更新されるタイトルの妙味・新味に対する欲求も満たしてくれる素晴らしいシリーズだったと思います。キャラクターの立ち具合が特に素晴らしく、これだけ先輩ゲストの登場が鮮烈である中、「空気」と揶揄されるキャラクターが皆無な戦隊を成立させるのは、並大抵の努力ではなかった筈です。

 ごく個人的には、某所で書いたエイプリルフールのネタが、話の内容は違えど(当たり前)、ほぼ実現してしまった(「ゴーカイ VS ギャバン」)という、奇跡のような煌きを目の当たりにしたシリーズでもありました。こんな事は、もう二度と起こらないのではないでしょうか。すみません、実は都合がつかなくて、当の映画は鑑賞できていないんですが...。

 スーパー戦隊シリーズ自体は、この「ゴーカイジャー」で肥大化した世界観に一区切りつけて、次作の「ゴーバスターズ」でリセットを図るようです。

 実はこういったリセットの試みは結構失敗していて、「スカイライダー」や「仮面ライダーBLACK」は結局昭和ライダーのサーガに飲み込まれましたし、「ウルトラマン80」は過去作との関係性を曖昧にする事で脱却を図りましたが、結果的に、過去作との関連性が希薄である故に踏み込めなかった部分を残して、シリーズ断絶となってしまいました。「ウルトラマンメビウス」の後のリセット作は未だに生まれていない事も、集大成の後の難しさを物語っています。

 これだけの完成度を誇る「ゴーカイジャー」を作り上げた後ですから、「ゴーバスターズ」に対する心配は微塵もない筈ですが、何となく心配してしまうのは、年長ファンの性なのかも知れませんね(笑)。

 というわけで、一年間ありがとうございました。

 そして、次回から「特命戦隊ゴーバスターズを見たか?」の方に舞台を移しますので、よろしくお願い致します!