GP-33「原始エンジン」

 スピードルは謎の炎神達に衝突された衝撃により、重傷を負ってしまった。炎神ソウルをセットしても、耐えがたい痛みが走り、元の姿に戻ることすらできないのだ。連によってある程度の処置は施されたものの、後はスピードルが自分の力で回復するのを待つしかない。走輔は謎の炎神たちへの怒りに燃えるあまり機嫌を悪くした。範人はキャリゲーターに謎の炎神達のことを尋ねる。キャリゲーターは、炎神族の先祖にあたる古代炎神族であることまでは知っているが、他のことは分からないという。走輔は当て逃げしたヤツを許せないと言って飛び出して行ってしまう。

 一方、あくまで謎の炎神達をホロンデルタールだと言い張るヨゴシュタインは、ケガレシアとキタネイダスに突っ込まれて慌てていた。ドリルバンキまで攻撃されたのは何故かというケガレシアの問いに、ドリルバンキがボーっとしていたからだと主張するヨゴシュタイン。そんなヨゴシュタインにドリルバンキは不満気だが、ホロンデルタールを探し出して連れてくるよう命ぜられ、渋々出動していく。

 イライラモードの走輔とドリルバンキは、それぞれ謎の炎神達を捜索していたが、なかなか見つからず、両者は出くわす羽目に。すぐに戦闘が開始される。走輔は機嫌の悪さによる勢いも手伝って、ドリルバンキと拮抗するが、そこに例の古代炎神達が登場。まずドリルバンキが飛びかかっていくが跳ね飛ばされ、続いて走輔がしがみつく。ボンパーがその反応をキャッチしたことで、連や大翔達も現場にやって来たが、既に走輔達の姿はなかった。エンジンオーG9とドリルバンキの戦闘中及び走輔とドリルバンキの戦闘中に、古代炎神達が現れたことを勘案し、大翔は古代炎神達を誘き出す作戦を立案する。それは、わざとケンカすることで古代炎神達を誘き出すというものだった。

 途中で古代炎神達から落ちてしまった走輔は、スピードルに気配を辿らせようとする。しかし、スピードルは古代炎神達がただの乱暴者だとは思えないと言い出した。ガイアークと戦う意思があるのではと主張するスピードルに、走輔は原始的で野蛮なやつらだと反論。スピードルは人間と彼らの間に入るから、話し合おうと提案する。

 その頃、ヘルガイユ宮殿にすごすごと戻って来たドリルバンキは、ヨゴシュタインにこっぴどく叱られ、また渋々出かけて行った。

 さらにその頃、ガンバルオーVSセイクウオーのケンカ芝居が開始されていた。だが、芝居故に迫力に欠けていた為、軍平が大翔を煽ったところ、両者とも段々本気になり、軍平と大翔によるガンバルオーVSセイクウオーの大ゲンカに発展する。巨大化のタイムリミットが迫る中、現れたのは不貞腐れたドリルバンキであった。ドリルバンキは腹いせに巨大化し、ガンバルオーとセイクウオーに襲いかかる。

 走輔は、遂に操車場にて古代炎神達を発見。スピードルは自分に任せろと言う。走輔はスピードルの希望通り、炎神キャストにソウルをセットしたが、まだスピードルの身体は回復しておらず、苦しみ出す。だが、スピードルは懸命に「ご先祖様」への仁義を尽くした。話ができるようにはなったが、古代炎神達は人語を喋らないので、スピードルが通訳を買って出る。ところが、古代炎神達が言うには、人間とかいう奴は気に入らないとのこと。一層腹を立てる走輔の元にボンパーの連絡が入る。ガンバルオーとセイクウオーの巨大化は解除され、ドリルバンキによってゴーオンジャーに危機が訪れているのだ。走輔はスピードルを置いて仲間の元へ急いだ。残されたスピードルはなおも懸命に訴えかける。人間が炎神に力を与えてくれる大切な相棒であることを。そして、熱い存在であることを。

 仲間の元に合流した走輔は、巨大なドリルバンキに一人で立ち向かい、何度倒れても立ち上がって攻撃を仕掛けていった。「俺にはな、お前なんかよりでっかい勇気があるんだぜ!」と奮起した走輔は、踏みつけるドリルバンキを持ち上げたり、頭の上から斬り付けたりと、凄まじいパワーを発揮する。その熱いソウルを感知した古代炎神達は、突如咆哮を上げ始めた。スピードルの必死の説得と、走輔の闘いぶりに、遂に動き出したのだ!

 古代炎神達は迷うことなくドリルバンキに襲いかかった。スピードルは、古代炎神達が走輔に搭乗するよう促していると告げる。彼らは、走輔のような熱いのは見たことがないと感銘を受け、走輔そして人間という存在を認めたようだ。走輔は早速古代炎神に乗り込む。コクピットに座ることで、彼らとの意思疎通が可能になった走輔は、彼らの名を聞く。古代炎神3体の名は、キシャモス、ティライン、ケラインといった。3体はすぐさま炎神合体を果たし、ここにキョウレツオーが姿を現した。

 キョウレツオーはその圧倒的なパワーでドリルバンキに反撃の隙を与えることなく、これを粉砕した。こうして、古代炎神達は仲間になった。どうやって手懐けたのかと疑問に思う大翔に、美羽は走輔は一番原始的だから相性が良かったのではと返す。それを大翔にうまくごまかされ、上機嫌の走輔は、キシャモス達に「一番の相棒はスピードルで、お前達は二番目の相棒だ」と告げる。スピードルは大いに照れるのだった。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 スピードル!

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
武上純希
解説

 古代炎神族の一大活躍編とキョウレツオー登場編。ご覧になればお分かりと思うが、古代炎神族の登場編には前回をあてるのが妥当ということになったようだ。

 古代炎神族、キシャモス、ティライン、ケライン、そしてキョウレツオーといった新しいキーワードが大挙登場することになったが、やはり新キャラ紹介編としては些か地味な印象。どうもG3プリンセス編の呪縛から、未だ私は抜け出せていないらしい(笑)。

 それはそうと、本編自体は派手なビジュアルや唸らせるような特撮描写が満載で、特撮好きにとってかなり満足度は高い。前回は黄金の龍状態で飛び回っていた古代炎神族だが、今回は重量感と巨大感に溢れる重厚な描写が続出。まずはそれらを追ってみたい。

 最初に登場するのは、走輔とドリルバンキのバトルにキシャモス達が乱入してくるシーン。ここでの疾走感はミニチュア、CG、合成の素晴らしいブレンドによって成立しており、跳ね飛ばされるドリルバンキのユーモラスな様子もさることながら、走輔がケラインにしがみつくくだりでは、そのアクションの的確な配置によってスピード感が存分に描写されている。また、連達が到着した後に、軌道の痕跡が残っているシーンには空気感をも漂わせるCGが効果的に使用されており、疾走の余韻をしっかりと感じ取ることが出来る。こういった現場と特撮の際立ったコラボレーションには脱帽せざるを得ない。

 続いて登場するのは、操車場で走輔がキシャモスらと対峙するシーンだ。ちょっと見ただけでは合成と判別できないような、リアリティ溢れる合成が心がけられ、非常に完成度の高いシーンに仕上がっているのはご覧の通り。このシーンでは、わざわざ見上げるカットと見下ろすカットが用意されており、にわかにミニチュアとは思えない巨大感が見事にマッチし、走輔に対する威圧感すら表現しているように見受けられる。逆にラストシーンで走輔を相棒だと宣言(?)するシーンでは、スーパー戦隊シリーズ伝統の「山の向こう側にバン!」というアングルで処理されている為、余計に操車場のシーンは際立ってリアルに見える。

 古代炎神達が走輔に感銘を受けた後は、ユーモアたっぷりの描写によって現場に急行する様が描かれている。地下鉄に出現したり、新幹線と競争したり、動物園の象 (?)の後ろを走り抜けるといった、「大きさ違うじゃん」というツッコミを端からぶっ飛ばしているような、思い切った映像が素晴らしい。操車場から現場まで走輔が走っていったらしいことや、スピードルがキャストの大きさのまま後から走ってきたことを考えると、一体どこを走ってきたのかという疑問も沸く。だが、OK。これはキシャモスらの「ワンダバシーン」なのだ。「ワンダバ」はウルトラシリーズにおいてはリアルさの追求が行われてきたが、アニメや東映特撮では、いかに派手でケレン味のある演出を見せるかに主眼が置かれてきた。巨大戦艦がいつも稲妻を伴って暗雲から出現すればカッコいいのである。

 そして、キシャモス達のドリルバンキへの攻撃は、ミニチュアとCGを巧みに組み合わせたアクション性の高いシーンに。ティライン、ケラインの噛み付き攻撃のスピーディさは、ミニチュアでは出せないCGならではの味。逆に疾走するキシャモスの迫力は、実在感溢れるミニチュアならではの味だろう。さらに、キョウレツオーへの炎神合体も披露。合体プロセスはキシャモスをバラバラにしてしまうという文字通り強烈なものだったが、ここまでくると変形合体とは言えないのではないかとの不満もある。それでも、腕部の動輪を作動させる描写の面白さや、キシャモスそのものの胸部が咆哮する様子には迫力が感じられ、キョウレツオーのパワフルな魅力を余すところなく描出している。

 こういった特撮の仕事の良さが、そのまま今回の映像的説得力に直結しており、走輔の頭の中のように単純な今回のストーリー(敵味方双方がキシャモス達を探すだけ!)に、大きな彩りを与えることに成功していると言えよう。

 さて、今回は殆ど走輔一人のエピソードとなったが、前回の宝探しへの単純な興味と同様に、今回もスピードルを傷つけられたことに腹を立てているという、至極感情的で単純な動機のみで動いている。大翔や美羽を含む仲間達も、既に走輔のそういう面に関しては諦めているのか、はたまた「奇跡の江角」である走輔の直感的行動によってもたらされる結果に期待しているのか、もうとやかく言わなくなったしまったところが可笑しい。それにしてもこのシーン、大翔と美羽が違和感なくギンジロー号外での歓談に興じているのに目を奪われる。遂に須塔兄妹も「仲良しサークル」に加入したのだ。この仲良し振りは、後に展開される軍平 VS大翔の喧嘩に興味深い影響を与えている。それについては後述したい。

 今回はもう一つ、走輔とドリルバンキの対比という構図が採用されている。走輔はスピードルを傷つけられたことで、当のスピードルを睨み付ける程機嫌が悪く、一方のドリルバンキは、キシャモス達をホロンデルタールと勘違いしたヨゴシュタインにより、その勘違いによる失敗を自分の所為にされてしまったことで機嫌を悪くしている。何と、双方ともキシャモス達に対する怒りを燃やしており、その本質的な部分には殆ど差がない。走輔はスピードルの敵討ちに猛進し、ドリルバンキはキシャモス達(一応ホロンデルタールだと思っているらしい)への腹いせに猛進しているのだ。この時点で、走輔とドリルバンキは既に所属するコミュニティからは逸脱した状態、つまり野良扱いになってしまっており、ゴーオンジャーとゴーオンウイングスは走輔抜きでキシャモス達を誘い出す作戦を、ガイアーク三大臣は殆ど何もしない(!)といった具合になっている。ヒーローものの王道を謳いつつも、既に「ゴーオンジャー」は同質の者が二手に分かれて異なるイデオロギーの元に戦っているという構図になってしまっているのだ。本当の「悪の組織」は、今の時代作り難くなっているのかも知れない。

 走輔の腹の立てっぷりは尋常ではないが、スピードルのことになると本気になってしまうという明るい面がクローズアップされており、視聴者は素直に感情移入できる。同時に、ドリルバンキに関しても感情移入できてしまうのが面白い。走輔の怒りが、凄まじい戦闘力に昇華されていくところも爽快で、前回ではほぼ無敵を誇ったドリルバンキの攻撃を一刀でかわしてしまったり、巨大ドリルバンキに踏みつけられてもその足を持ち上げてしまったりと、マンガチックな描写が説得力を伴って続出する。ここでの走輔の感情は本来ネガティヴな「怒り」であり、昨今のヒーローものにおける負の側面を強調する要素として好んで用いられるファクターなのだが、走輔のそれは「熱さ」として解釈され、スピードルの為の怒りを相棒との絆の強さとして描ききっている。これは、かつて上原正三氏が多用したところの、個人的動機の中にコモンセンスとしての正しさを見出すという展開の翻案あるいは好意的引用ではないかと思える。いわば、東映特撮TVドラマの王道(それは、上原氏を初め、伊上勝氏や高久進氏といった面々が礎を築いたものだ)に回帰したのだ。しつこいぐらいに指摘しているが、走輔のその個人的動機が超然たる牽引力に昇華され、ストーリーを紡いでいくのが「ゴーオンジャー」なのだ。

 走輔とドリルバンキがずっと腹を立てっぱなしなのがユーモラスな為か、全体的なギャグ描写は少ない。というより、その展開自体が高度なギャグだとも言える。ただし、一際印象に強く残るギャグシーンがある。それは、軍平と大翔の大ゲンカだ。キシャモスらは喧嘩相手を求めているのかも知れないという大翔の推理から、ガンバルオーとセイクウオーで喧嘩の真似事を始めるというのが、このくだりの発端だ。ここでは明るく勇壮な BGMが選ばれ、何となく緊張感のない立ち回りが繰り広げられる。これが実に可笑しい。その後、軍平が煽ったことで状況は一変。大翔の操作によってセイクウオーがガンバルオーを本気で殴り、腹を立てた軍平がガンバルオーで反撃、さらに大翔が応じて...という泥仕合となっていく。本エピソード冒頭、大翔がゴーオンジャーと仲良く歓談するシーンがあるのは前述のとおりだが、そのシーンがこの喧嘩を仲の良い者同士の喧嘩であると印象付ける効果をもたらしているところがニクい。確かに軍平と大翔は互いに信頼しつつもちょっとしたきっかけで意見を違えそうな印象があり、人選も抜群だ。結果的に、この大ゲンカは何の役にも立たず、ドリルバンキの奇襲にタイムリミットを迎えてピンチに陥るという、何とも情けない状況に陥っていくのだが、これもまた実に可笑しい。しかも、このピンチを打開するのが走輔だというところで、レッドヒーローの特別性を強調することにもなっており、単なるギャグに終わらせていないところは特筆に価する。

 このシーンで気の毒なのは、ガンバルオー(特にキャリゲーター)とセイクウオー(特にジャン・ボエール)だ。軍平と大翔のケンカに付き合わされた挙句、結局痛い思いをするのは炎神達であり、ホントに気の毒なのだ。ま、どうでもいいことではあるが...。