GP-46「家出ボンパー」

 走輔と連は何か深刻そうに相談している。そして、ボンパーは溜息をついている...。

 同じ頃、ダンベルバンキが現れて街を襲撃していた。大翔と美羽が駆け付けて迎撃するが、ダンベルバンキはそのパワーを見せようと奮起。ところが、両腕が重すぎて持ち上がらない。ウガッツを呼んでも現れず、ダンベルバンキはやむなく逃走してしまった。

 大翔と美羽からガイアークが出現したと聞いて走輔達は驚く。ボンパーが反応をキャッチしなかったからだ。走輔は苛立ち、軍平と範人はしっかりしろとボンパーに言った。連や早輝は頼りにしていると優しく励ますものの、ボンパーは自分なんかいなくなればいいと思っているのではと疑い始める。「どうせ僕はポンコツで、何の役に立たないもん!」と言い、ボンパーはギンジロー号を飛び出してしまった。連と早輝はボンパーを探しに行くが、走輔、範人、軍平は大翔のところに行って非常時に備えることにした。

 ヘルガイユ宮殿に戻ってきたダンベルバンキは、キタネイダスにこってり絞られる。だが、ダンベルバンキが退散してきた原因は、ウガッツR&Lと組んだ最強の蛮機獣という触れ込みだったはずが、ウガッツR&Lが「特訓の割には待遇が悪い」と逃亡してしまったことにあった。驚愕のあまり言葉を失うキタネイダス。一応、ウガッツ達をリモコン操作のオーディションにかけてみるが、逸材はおらず、結局キタネイダスとケガレシアがリモコンを操ることになってしまう。

 連と早輝はボンパーを探し回るが、見つけることができなかった。ベアールVによれば、最近ボンパーが自らを修理する様子を目撃したという。そして、バスオンはヒューマンワールドにボンパーを補修する為の部品は存在しないと言い始める。連は故障したと決まったわけではないと思わず声を荒げ、再び探し始めた。空振り続きの捜索状況に際して、連はボンパーの不調に気付かなかった自分を責めた。早輝はそんな連に、かつてサーキットにて初めてであった時のように笑顔でジュースを差し出す。2人が元気を出して、ボンパーを支えなくては。そう決意し、またボンパーを探し始めるのだった。

 ボンパーの悩みの元は、走輔と連の会話にあった。「なんか、うまく働かないみたいなんすよ」「使えねぇな。ポンコツだし、もうダメなのかな」という会話だ。ボンパーは自分をポンコツで役立たずだと卑下しつつ、さまよい歩いていた。そして、ウガッツR&Lに出会い、ガイアークを辞めてきたと聞いて驚く。

 一方、大翔と美羽の元へやって来た走輔達は上の空。強がってはいるが、ボンパーが気になってしょうがないのだ。その時、大翔と美羽はガイアーク反応を感知する。ダンベルバンキはキタネイダスとケガレシアのリモコン操作によって街を破壊し始める。しかし、その操作はメチャクチャでダンベルバンキは困惑。そこへ走輔、範人、軍平、大翔、美羽が到着し、すぐさま迎撃態勢に入った。だが、ダンベルバンキはリモコンの電波が届かないエリアに入ってしまい、またもや腕が上がらなくなった。ダンベルバンキは再び退散する。

 ボンパーのことが気になって今一つ調子が出ないと苛立つ走輔。それは軍平も範人も同じだった。いつも一緒なのが当たり前になっていたのだ。一方ボンパーは「言いたい事をちゃんと言えば良かった」と後悔していた。その呟きを聞いて突如何かに閃いたウガッツR&Lはヘルガイユ宮殿へと戻る。そして、リモコン要因に戻る対価を示す要求書をキタネイダスに提出した。キタネイダスが要求を飲んでウガッツ R&Lが戻り、ダンベルバンキは真価を発揮し始める。ヘルガイユ宮殿に「ウガッツに屈するとは情けないナリナ」という声が響く。「なんか聞いたような声」だ。

 その頃、連と早輝はボンパーを見つけていた。ボンパーは炎神のようにゴーオンジャーの相棒でない上、失敗ばかりで必要とされていないと悲観していた。しかし、連はきっぱり否定した。全員、ボンパーのことを大切な仲間だと思っていることを言い聞かせる連。皆、ボンパーが居るから笑顔になれる。それはボンパーも同じ気持ちだった。ボンパーが言いたかったこと、それは「一緒に居てくれてありがとう」という言葉だったのだ。全てのわだかまりが氷塊したボンパーは、ガイアーク反応をキャッチ。既に皆が戦っていることを感知した。

 ダンベルバンキは圧倒的な強さでゴーオンジャー達を叩きのめしていた。即座に合流する連と早輝だったが、7人揃っても苦しい状況を打開できない。その時、ボンパーはウガッツR&Lの存在に気付いた。ゴーオンジャー達に迫るダンベルバンキの前に立ちはだかるボンパーは、走輔のマンタンガンを手にとって狙いを定める。「僕がみんなを守るんだ!」ボンパーの放つ弾丸はダンベルバンキをかすめてビルの屋上に居たウガッツR&Lを撃ち抜く。ボンパーはその類稀なる分析能力を発揮して逆転をものにしたのだ。ボンパーは故障などしていなかった。勢いを取り戻したゴーオンジャーとゴーオンウイングスは、スーパーハイウェイバスターとウイングブースターでダンベルバンキを打ち倒す。ダンベルバンキは腕が上がらないまま巨大化するも、セイクウオーとゴローダーGTの敵ではなかった。

 ギンジロー号に戻ってきた一同。走輔と連はギンジロー号の修理を考えていた。ボンパーが聞いた「ポンコツ」「うまく働かない」という言葉は、ギンジロー号に対する言葉だったのだ。ボンパーがガイアーク反応を感知できなかったのは、「ポンコツ」という言葉で頭がいっぱいになった所為だったのだ。

 その頃、ヘルガイユ宮殿に置かれたムゲンゴミバコから「いよいよ我の出番ナリナ」と恐ろしい影が出現していた...。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 スピードル!

監督・脚本
監督
竹本昇
脚本
吉本聡子
解説


 珍しいボンパー編...なのだが、連と早輝にスポットがあてられているという側面も。ストーリーとしては、勘違いを発端としたドタバタ劇のパターンを踏んでいるが、そこはコミカルに展開せず、妙にしんみりした友情物語に変換されている。

 事の発端は、ギンジロー号の調子が悪く、走輔達が「ポンコツ」呼ばわりしたのをボンパーが聞いて自分のことだと勘違いしたというもので、その事で頭が一杯になったボンパーは、ガイアーク反応をキャッチ出来なくなってしまう。ボンパーが「ドラえもん」並に人間臭い思考回路を有していることが分かり、また同時に、ガイアーク反応のキャッチという「機能」はボンパーにとって「能力」であることがこの瞬間に判明する。今回の反応をキャッチできないという現象は、「機能」ならば機能不全と解釈せざるを得ないが、様々な機能を総合して発揮している「能力」ならば、他の要素によって容易にスポイルされる可能性があるわけだ。勿論これはマニアックな解釈であって、ボンパーを「1人のキャラクター」として捉えれば、心理的な要素が入り込むのは自然といえば自然。水先案内ロボという設定であるボンパーを、ゴーオンジャー達と同格にして見せる、いい機会になったのではないだろうか。

 他方、ガイアーク側にも家出人が出る。ウガッツR&Lという、リモコン操作に長けたウガッツ2人組が、待遇を理由に脱するのである。これも、典型的な戦闘員脱走譚の骨子をなぞっているのだが、如何せんボンパー側メインでスポットが当てられている為に、殆ど発展しない。ダンベルバンキの腕をリモコン操作してやらなければならないというアイデアは非常に面白いのだが、残念ながらこれは失敗の連続という部分がクローズアップされてしまい、今ひとつの感は否めない。戦闘員の反旗パターンは、硬にも軟にも面白く化けたエピソードが過去のシリーズに沢山存在しており、発展性の余地があっただけに勿体無い感じだ。ボンパーにマンタンガンで撃たれて、それまで感情移入を許してきた2人が一気に破壊されてしまうという結末にも、些か疑問を感じてしまう。妙に鏡面度の高い金属板に「ウガッツウガッツウガッツ...」と書き並べただけで、意味が伝わるなどのギャグは面白かったが。

 人間キャラクターのメインは、連と早輝が担当。このペアは珍しい組み合わせだ。実は、今回に今ひとつ飛び抜けたものを感じられないのは、この2人のキャラクター性に依るところが大きい。個性を強烈に打ち出している「ゴーオンジャー」の各キャラクターの中にあって、2人はどちらかと言えば大人しめの部類に入る。たまに走輔の暴走に感化されることはあれど、概ね冷静な視点で物事を分析している連。そして当初の天然系少女から強いヒロインへと成長を遂げた早輝。4クール目に入ると各キャラクターの設定も安定しており、この2人から暴走的な飛躍が生まれる余地は極端に少ないのだ。実際、連と早輝はひたすらボンパーを心配して探すことに終始し、その途中でボンパーとの思い出を語るという役割にとどまっている。しかも、途中で展開されるダンベルバンキとの戦闘にも参加しない。ウガッツR&Lのリモコンを奪って逆転に出るという発想があっても良かった気がする。

 逆に、情けないダンベルバンキの派手な活躍が際立っている。腕が上がらない為に2度も退散することになり、戦闘シーンの断片化を生んでいるものの、それぞれが「リモコン要員なし」「下手なリモコン要員(キタネイダスとケガレシア)」「優秀なリモコン要員」という状況に描き分けられており、各々の反応と演出が巧く特徴付けられていて面白い。本当に重そうな演技も素晴らしく、当初からウガッツR&Lが働いていたら、かなりの強敵になったであろうことがちゃんと匂わされている。レッドレーサー=岸祐二氏の声もバッチリハマっており、終盤の蛮機獣らしく、コミカルさと強大さが程よくブレンドされたキャラクターに仕上がっていたと言えよう。

 ダンベルバンキの件を除けば、後は割と地味だ。

 基本的に他の要素はコメディには発展しないし、ボンパーとゴーオンジャーの友情物語にも、ちょっとした「今更感」がある。ボンパーというキャラクターは、スーパー戦隊シリーズの「マスコット系司令官キャラ」の中でもかなり高感度が高い部類に入ると私自身は評価しているが、それはゴーオンジャーと同じ目線に立っているという感覚が伝わってくるからだ。今回はそれをわざわざ再確認しているのであって、「今更感」が漂うのである。

 また、基本的に連と早輝の「美しい言葉」だけでボンパーとのわだかまりが氷解していくあたり、その言葉を素直に受け取るだけの余裕があれば良いが、実際は結構見ていて厳しい。一句一句は本当に感動的だし、ボンパーとの関係が「深い友情」であり「強い仲間意識」であることを思わせる。しかし、やや畳み掛けるようにそれらの字句が現れて来る為に、字面の上での感動劇にベクトルが向いてしまい、ボンパーのような無機質で表情を持たない者を相手にするには、かなり無理があったようにも思われるのだ。ボンパーの「笑顔」って何だよとツッコミたくなるのが正直なところだろう(ただし、ボンパーの声を担当する中川氏の演技は素晴らしかったが)。

 もう一つ指摘させていただく。ボンパーが壊れる前に「ありがとう」を言いたかったというシチュエーションについてだ。この時点で、ボンパーが故障しているかどうかは半ばどうでも良くなっており、著しく感動が損なわれている。ボンパーの家出の原因にこの「ありがとう」は全く関係しておらず、シチュエーションとして浮いている故に、この部分だけ付け足し感が漂ってくる。勿論、「言いたいことを言っておけば良かった」という呟きは、ウガッツR&Lの行動に繋がる重要なポイントになるために欠くことはできない。だが、故障というキーワードが危機感を伴って出てくるわけでもなく、その必然性はかなり疑わしい。私なんかはこの辺で妙に冷めてしまったのだ。しかも、ギンジロー号の故障というネタバレが出る前に、既に故障ではなかったという結論に達しており、これは明らかな構成力不足だろう。

 とまぁ、こんな感じで手厳しい評価に終始したわけだが、キラッと光るシーンがやはり幾つかある。それは特に回想シーンにおけるものだ。

 今回、回想シーンは都合2回登場する。一つは、初めてゴーオンジャー達が各々のジャケットを受け取るシーン。あのジャケットをボンパーが用意したということが初めて劇中にて明確に描かれた記念すべきシーンだ。当然新撮カットで構成されたこのシーン、各々が初々しい表情をつくっていて演出がやけに丁寧。特に無邪気に喜ぶ範人の表情が秀逸だ。もう一つは、早輝が初出動でうまく戦えずに消沈して帰ってくるというシーン。当初が3人体制で、しかも1話より前に既に戦闘を経験しているという設定を急に思い出させる秀逸なシーンだ。当初は早輝も戦闘に不慣れだったということ、早輝のゴーフォンに付いているストラップがボンパーの手製だったこと等、この短い回想シーンで色々なことが見えてくる。

 しかし、真に凄いのはあらゆるトピックが見えてくるということではない。些細なことかも知れないが、私が声高に評価したいこと、それは早輝の髪型だ。

 現在、早輝の髪型は眉の下で真っ直ぐ切り揃える、いわゆる「パッツン」なのだが、放映開始当初は少しだけ分け目があった(もっと言うと撮影回のショットでは完全に分けていた)。それを今回の回想シーンでは再現しているのだ! 恐らく、現在のパッツン早輝で回想シーンを作っても特に違和感がなかったと思われるのだが、わざわざスタイリングを変えて登場させるこだわりっぷりには本当に感嘆した。ストラップの件での回想の後、現在の早輝がアップで映ることにより、その違いが余計に印象付けられることになり、時間の経過を感じさせられる構成になっているのもポイント。とは言え、時間の経過を髪型から感じた視聴者諸氏がどれだけ存在したかは分からないが...。とにかく、私としては特に感心したことを記しておきたい。

 ところで、ラスト近くになると、懐かしい梁田氏の声が響いてくるわけだが、ようやく黄金トリオ復活...というわけではないようだ。梁田氏を迎えたことで、今度こそ大ボス登場という雰囲気を匂わせてはいる。この巨大な影のインパクトは大きく、一気に本編を食ってしまっている。ここでふと思いつくのは、今回がこの新幹部登場前の一息として作られた回だったのではないかという説。だとすれば、目立ったトピックがないことや、ボンパーとの絆の再確認という要件、結成当初を振り返る構成もかなり納得できる。新年一発目が総集編のお祭りエピソード、そして今回がちょっとした内輪の決算的な意味合いを持っており、最終決戦にむけての箸休め的存在だと見做すのが自然だ。新戦隊の予告も放送されるようになり、終盤ムードは加速している。