ブレイブ20「アンラッキュー!タナバタのタナボタ」

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 いわゆる七夕に合わせた時節ネタ編。

 登場するデーボモンスターもそのまんまで楽しませつつ、結構えげつない「七夕ならでは」の作戦で戦慄させつつ、ノブハルをダシにして笑いを取りつつ、まさかのダンテツ登場で驚愕させつつ、予告で千葉繁さんを映してもっとビックリさせつつ...。

 千葉さんは置いておくとして、サービス精神をこれでもかと発揮させた充実の回でしたね。

 今回もダイゴの特殊性にスポットが当てられており、しかも、そこに絡めてストーリーの次なる展開を予感させる仕掛けを用意する等、細部に亘って手抜かりがありません。ダンテツの登場シーンは、正に真打登場といった演出が施されており、陽炎の中のシルエットが近づいてくるカットに至っては、山下真司さんの新しい側面を存分に見せてくれたと言っても過言ではないでしょう。

 まぁ、ダンテツの存在自体の解釈が難しくなるような、やや抽象的な絵作りではありましたが...。

 というのも、ダイゴの「幻でない父に会いたい」という七夕の密かな願いが叶って、実際にダンテツがダイゴの目前に現れたという話の流れが最重要とされている為、その辺りが突出して気合いの入った演出を施されており、ダンテツが現れた「真の目的」=「トリンにあるものを手渡す事」が妙に地味になり、印象に残り難かったのではないかと思うのです。

 しかも、ダイゴが振り返った時、既にそこにダンテツは居ないという、幻なのか実体なのかを曖昧にするカットが加えられていて、一瞬「アレッ?」となってしまったのも、ダンテツの実在感を迷わせてしまっていると思います。

 更には、ダンテツの姿がダイゴにしか見えていないかのような、他のメンバーの反応も妙に気になる処でして、あの各々の表情は、そこに不思議な男(ダンテツ)が居るのを見て呆然としているのか、それとも、一人ではしゃいでいるダイゴを訝しげに見ているのか、判然としないんですよね(あれ?仲間が到着したのはダンテツが消えた後でしたっけ?)。

 勿論、ダンテツはダイゴにとって「父」である以上に「先導者」という側面が強く、その意味ではダイゴの精神性を支える存在でならなければならず、単なる実在する父親であるよりは、神出鬼没の神秘的な存在である必要があるでしょう。その意味では、今回のダンテツとの不思議な邂逅は、実に巧く演出されていたとも言えます。

 他の見方をすると、何となく幻なのか実体なのか曖昧なまま引っ張って、トリンにある物を手渡すといった行為によって、ダンテツが正真正銘本人であった事を明確にする...といった演出意図だったのかも知れません。

 いずれにせよ、ダンテツの神秘的な存在感はしっかりと醸し出され、しかも偶然とはいえ、ダイゴの願いは叶ったわけで、これぞ七夕の奇跡といった処ではないでしょうか。

 そのダンテツの登場シーンですが、山下真司さん由来のネタを仕込むとはやりますねぇ。

 「歯をくいしばれ。俺はお前をこれから殴る!」ですよ。スクールウォーズですよ(笑)。

 元ネタを知らない世代にとっては、その後に繰り出される超絶パンチの映像とも相俟って、「キングの父ちゃんは何て格好良いんだ!」と思う事間違いなしなんですが、元ネタを知ってると、どうも「泣き虫先生」のイメージが付きまとってしまい、ちょっと笑ってしまうんですよね。この辺り、「先導者」としては正しいネタだったのかも知れませんが...(笑)。

 まぁ、他のセリフはいちいち格好良くて素晴らしかったですよね。「キングと呼ばれているのか」とか、「竜の道を戦隊の仲間と共に進んで来い」とか。前回もそうですが、父親たるもの、こうでなければならないなぁ、と思ってしまうわけですよ。キョウリュウジャー自身やスピリットレンジャーを含め、「キョウリュウジャー」には「立派な大人達」が揃っていていいですよね。

 一方で、ダイゴの特殊性は、このダンテツとの関わりで一層強調される事になりました。

 皆が願い事を短冊に綴る中、ダイゴはあくまで無欲であり続けます。「仲間と一緒に戦っている」事に最上の喜びを感じている故、他に望む物はないとまで言い切るのです。しかし、心の中では密かに父親との本当の再会を望んでいました。「照れくさい」という感情は恐らくダイゴにはないと思うので、純粋に「短冊なんかに書かなくても」と思っていたのかも知れません。あるいは、「今は叶わない(叶う必要がない)事だろうから、わざわざ書かない」という事なのかも。

 まぁその辺りはいいとして、ダイゴはキョウリュウジャーである事以外に無欲な男である事が分かったのは、今回の一つの成果でした。レッドの特殊性をその精神性に求めた時、大抵が猪突猛進の跳ねっ返りとされるか、突出した博愛主義の聖人とされるかだと思いますが、ダイゴはそのどちらでもなく、あくまで父が示した道を戦隊としての戦いに求めているだけなのです。これによって、ダイゴが思慮の足りない男でもなく、「人々の笑顔の為だけに戦っている」男でもない事が示され、キャラクターの厚みが損なわれませんでした。

 計らずして、ダイゴはダンテツに会う事が出来、しかも父の拳に助けられるという、「会いたいという願いは叶うがしかし、父をまだ超えられていない事も見せつけられる」状況に置かれました。ダイゴは竜の道の前を行く父の背中を、今度はもっと実在感を伴ったリアルなブレイブの源として胸に秘める事が出来るようになったわけで、今回の「事件」は、ダイゴにとってもより強いブレイブを獲得する「イニシエーション」に近いものとして描写されたのも納得です。

 さて、今回の作戦指揮者はキャンデリラだったわけですが、これまでのキャンデリラの作戦は、「喜び」の代償をあまり求めないものだったのに比べ、今回の場合、願いが叶う事と生命が引き替えとされている事に注目しなければなりません。無論、これまでも「代償」はあったわけですが、それでも今回のようなえげつなさはなく、キャンデリラのキャラクターにおける異質さが際だっていました。今回は「悪の組織らしさ」が付加されていて、やや異質さに翳りが見えています。

 ただし、ラッキューロとのコンビによる愉快犯的な言動の楽しさは相変わらずで、しかも初登場の「必殺技」のバックに何故か戸松遥さんが登場する等、遊び心は幹部随一となっていて、やっぱり何だかよく分からない幹部である事に変わりはないようです(笑)。

 また、口調をキョウリュウジャーが真似るので、ラッキューロが怒ってしまうというギャグも取り入れられ、単なる「戦う相手」とは異なる印象を与えようという遊び心が冴えていますね。ドゴルドとアイガロンも、最近はコミカルな味付けを大いに許容するようになってきましたので、賑やかさの盛り上がりに期待出来そうですね。

 次回はまたもや新戦士登場。千葉繁さんも登場。「見て驚け」ですね、正に!