ブレイブ23「たてッ!バクレツキョウリュウジン」

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 今回でデーボス復活編完結...かと思いきや、弥生関連で次回まで引っ張るんですね! 予想外すぎました。

 とはいえ、バクレツキョウリュウジン完成でデーボスを倒すというカタルシスが与えられた今回は、前回を「前編」とした場合、確実に「後編」にあたる内容。ダイゴの言う弥生の強さを「映像化」してしまった勢いの凄まじさに目眩がすると共に、ダイゴ自身の存在感をより高める流れが見事に展開され、シリーズ前半のクライマックスとして実に満足度の高い好編でした。

 次回予告で壮絶にネタバレしちゃってますが、そこに至るまでの弥生の「成長」をテンポ良く、淀みなく描いた点も高く評価出来ると思います。

 今回は一気にグイグイと引き込まれながら見せられて、色んな事を書き連ねるのがはばかられる雰囲気ですが、中でも特に光るシーンを中心に挙げてみようと思います。

 まずは冒頭。

 私の印象ですが、巨大戦で手痛い敗北を喫した時は、コクピットから投げ出されたメンバーが「ウワァァァァ」と落ちていき、絶体絶命の危機に瀕しつつも、何らかの偶然等によって猶予が与えられるというのが、戦隊における定番です。あくまで印象ですけどね。

 ところが、今回はあまりのダメージにダイゴ以外のメンバーが昏倒してしまったにも関わらず、アンキドンとブンパッキーを召喚してキョウリュウジンカンフーを完成させ、ダイゴ一人でそれを操ってみせるという展開が待っていました。「今やれる事を最大限やってみる」というのが、今回のテーマになっているようですが、早くも冒頭からダイゴが体現しています。トリンの「一人では無茶だ」という指摘が入るタイミングも効果的で、キョウリュウジンが複数のメンバーの力の統一によって動かされている事を、改めて思い出させてくれました。

 さらにこのシーンでは、ダイゴが恐竜絶滅に思いをはせ、その無念を感じ取って自らのブレイブを燃え上がらせるというくだりが登場。ここでは、人間の可能性は滅びを回避するという「心への礼賛」も盛り込まれているのですが、面白いのは、礼賛しているのがカオスであってダイゴではない事。これが実に巧い処で、ダイゴが理屈抜きで強い男(劇中で言えば類い稀なるブレイブを持つ男)だという主張が自然に伝わってくるわけです。ダイゴが特異なのは、自分自身の可能性を主張するのではなく、いつも仲間の素晴らしさを礼賛していて、自分の凄さに関してはいつも周囲が言及するんですよね。ダイゴには、割とチートキャラの要素が纏わり付いていると思うのですが、作劇が常に前述のパターンで行われる為、厭味が全くない。このシーンが、デーボスを怯ませ一時退場させるという流れを生んでいるのも巧い処です。

 続いて、スピリットベースでのひとコマ。

 「キョウリュウジャー」の特徴的かつ素晴らしい処は、重苦しい空気をなるべく持続させない処。それを象徴するようなシーンが、そのスピリットベースでのシーンでした。まるで、重苦しい空気を活性剤として用いるかのような徹底振り。誰よりも悔しさを露わにするソウジ、場を和ませようと「ギャグも出なかった」と言ってはみたものの、雰囲気をかえって重くしてしまうノブハル。この二人がグッと流れをせき止めた処で、ダイゴが登場。デーボスに勝てる余地がある事に言及し、来たるべき戦いまで体力を充実させるよう指示するのですが、ダイゴ自身の体調を慮りつつも、それに反論しないメンバーの「分かっている」感が最高で、まるで霧が晴れるように一気に重苦しさが払拭されます。ここでもトリンが場面の補足説明をするようなセリフを付け加えていますが、これも適確でした。こういった雰囲気の変化は、スピリットベースのような明るい空間では演出しにくいので、ナレーションの肩代わりをする存在はやはり必要です。

 ソウジとノブハル以外については、いち早くダイゴの意図に賛同するイアン、雰囲気がどうであれ、ソウジの怪我の手当てを優先するアミィ、爽やかに昼寝を決め込む空蝉丸...と、それぞれの魅力を発散。中でも、アミィは雰囲気の変化に沿ってソウジに対する態度を少し変化させていて、演出と演技プランの緻密さを感じ取る事が出来ます。ちなみにここでは、「今やれる事を最大限やってみる」というテーマがふんわりとした手触りで表現されていますね。

 次に、弥生に関する描写。

 ダイゴが弥生の持つブレイブに当初から気付いていたという展開もさることながら、そんなダイゴの言葉が逆に弥生のブレイブを呼び起こしたかのような描写になっていたのが秀逸です。ダイゴがいなければ弥生はプレズオンの起動を諦めていたかも知れませんし、獣電池ではなく、プレズオンに直接ブレイブインしてしまうという、「自己犠牲」の変奏を披露する事もなかったでしょう。弥生の、ダイゴに対する憧憬の念を超えた「共感」が今回のゴールとするならば、そこに至るプロセスは「今やれる事を最大限やってみる」という行動となって現れ、その結果がダイゴに文字通り重なったわけで、作劇としても非常にスムーズでした。

 捨て身のブレイブインのシーンが、完全に「勇者ライディーン」のフェイドインだったのには、ちょっとニヤリとしてしまいましたが。

 今回の主役は、実質この弥生であり、ダイゴは孤軍奮闘して非常にヒロイックに振る舞うものの、やはり「導き手」の役に徹していると思います。今回のダイゴは完全に弥生の前を走る「お手本」であり、そのキャラクター性に関しては「達観した大人」の面を強調されているのではないでしょうか。その意味で、次回の展開は「もっとダイゴに追いつく」というもう一つのゴールとして用意されたものと理解出来ますね。

 デーボス側の描写も冴えています。

 幹部連中は、ドゴルド以外カオスの意図に殆ど無関心というかついて行ってない辺りに、妙な可笑しさと不気味さとが漂っています。アイガロンは通常より「しみるわ~」を連発してコミカル。キャンデリラはいつもの調子。ラッキューロはデーボスの縮小する作用のある球「のみ」に興味津々といった具合で、デーボスの復活とあまり関わらないドライさが、却って空恐ろしさを醸し出しているのは面白い効果ではないでしょうか。

 カオスとドゴルドが、デーボスと運命を共にするラストもなかなか衝撃的。一方で直前に挿入されるカオスの変化という「引き」が、彼等がまだ「終わりでない」事を如実に示し、簡単にキャラクターを消費しない構成にも好感が持てます。ヒョーガッキをまだ残しているのも凄い! このヒョーガッキを倒す事で、一連のキョウリュウバイオレット編が完結するという事でしょうね、恐らく。

 今回でデーボスを倒した事になりますが、「終わった」感をあまり感じさせないのは、近年の反省故でしょうか。テンションを維持したまま、次回も畳みかけてくる構成には唸らされます。正直、「祭りの後」を心配していたのですが、これなら全然心配ないですねー。

 次回は、掟破りの「二代目バイオレット」登場!!