ブレイブ4「うちぬけ!ゆうきのガブリボルバー」

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 今回はイアン編。これで遂に、劇中では五人全員の面が割れたという事になります。

 イアンのキャラクターは一匹狼のような面が強調されている為か、前回、前々回と比べると、やや性急な感が強いものの、状況説明自体は回想を交えて短時間で過不足なし。やや引っかかるのは、イアンがダイゴの方を向くまでの時間の短さで、1話分で収めるには、ちょっと勿体ないような気がしました。ただ、このテの話を前後編でやる程の時間的なヌルさは「キョウリュウジャー」には無さそうなので、これはやはり正解なのかも知れません。それだけ、あらゆるパターンの話を消化していく、貪欲かつスピーディな企画だという事です。

 今回の目玉といえば、それはやはり...。

 ゴーオンブラック=石原軍平こと海老澤健次さんのゲスト登場でしょう!

 制作側が意図したかどうかは別として、ブラックの話に先輩ブラックをゲスト出演させる粋な計らい。そして、ストーリーへの関わり方も、興味深い点を抱えての登場でした。

 イアンは、「仲間など要らない」というスタンスのキャラクター。まぁ、戦隊では割とステロタイプなキャラクターとして散見される(特に追加戦士に多い)のですが、イアンの場合、「親友の仇討ち」を目的とするが故に、「戦隊メンバーである必要がない」という明確なスタンスをとっており、そこが従来の「頑固な一匹狼」とはやや異なる部分です。いわゆるリベンジャーといった処なのですが、その言動が女性を口説く事に終始している為、かなりライトな人物像を持ちます。この辺りは、子供向けという点でのバランス感覚なんでしょうね。ただ、今回で復讐を果たしてしまったので、今後はその軽々しい言動のみがネタにされるキャラクターになる確率は、非常に高いと思われますが(笑)。

 この、「復讐に燃える戦隊ヒーロー」の嚆矢は、「バトルフィーバー」の二代目バトルコサック=神誠。加入直後のエピソードにおいて、初代コサックの白石健作の仇を討つべく...ではなくて、とある事件で殺された弟の復讐にメンバーを巻き込むまいと、バトルフィーバー隊を抜けようとするのですが、やがて復讐の相手がエゴス怪人だった事が分かり、それはバトルフィーバー隊としての戦いでもあったというクライマックスへ繋がっていきます。ここでの神誠のポジションは、イアンによく似ていますが、神誠が年長者であるという事や、その後もしばらくはプライベートでメンバーと戯れないといった描写がある事で、クールな男のイメージを保っていました。一方で、イアンはあの調子ですからねぇ(笑)。

 もう二人、有名なリベンジャー系ヒーローが東映には居て、一人は「快傑ズバット」。もう一人は「東映スパイダーマン」。もう一人加えるとしたら、「仮面ライダーV3」のライダーマン。

 ズバットは、宮内洋さんにしか演じられないと評される、卓越したアクションとキザな立ち振る舞いが両立した秀逸なヒーローでした。ズバットである主人公の早川健は、正に復讐鬼といった雰囲気で、変身(ズバットスーツ着用)後は、容赦なく生身の人間である悪党を締め上げる冷徹なヒーローでしたが、素顔の彼は、敵を前に余裕の笑みを浮かべて対峙し、自身の卓越した技の数々で敵の用心棒を翻弄、上から目線で「いかがかな」とキザに言い放ってしまう、「有り得ない程の格好良さ」を体現する男でした。この辺りは、リベンジャーとしての「重さ」や「暗さ」を、軽妙なタッチでぼかしていく(むしろ爽快感に変える)という手法であり、イアンに通ずる処があるとは言えるのではないでしょうか。

 スパイダーマンは、一話一話のエピソードが結構強烈なインパクトを持ち、後の「宇宙刑事」のストーリーパターンの原形が随所に見られる為、「復讐」の二文字があまり浮かんで来ない作風なのですが、最終回では、復讐を果たした男が、父と、力をくれた「兄弟」の還らぬ姿を思い浮かべて夕陽の前に佇むことしか出来ないという、ある意味衝撃的なエピローグが用意されていました。スパイダーマンである山城拓也は、普段、スパイダーマンである事を悟られぬ為に、クラーク・ケントばりの道化を演じており(半分は拓也の「素」が出ていた印象)、また珍しく恋人の居るヒーローだったので、割と重苦しいエピソードが連続する中、拓也は爽やかな魅力を発揮。この辺りにも、イアンの原形を見て取る事が可能です。

 ライダーマンは、平成ライダーにおけるライダー同士の反目の原形を作り出したキャラクターで、復讐者としての性格を前面に出していましたが、このライダーマン=結城丈二が居なければ、早川健も山城拓也も神誠も存在しなかったかも知れません。このようなキャラクターを出せる程、「V3」は安定した作風だったという事かも知れませんね。

 さて、話が大幅に逸れてしまいましたが、イアンの復讐譚に関しては、先達程徹底していたわけではなく、どちらかと言えば、「銃が当たらずに親友を死なせてしまった」というトラウマを強調する要素でした。「何が何でもデーボ・ドロンボスへの復讐を果たそう」という感じではなく、むしろ「デーボ・ドロンボスに銃弾を当てる事で、自らのトラウマを克服したい」といった感じで、メンタル面での弱さを強調していたように思います。従って、劇中、普段のイアンが「虚勢を張っている」という風に見えて来るようになり、ステロタイプになりがちなキャラクター設定を持つイアンに、ある種の深みを与えていました。

 その「弱さ」の発露は、捕縛されたダイゴの方に向けた銃を落としてしまうという行動となります。それはそのまま、イアンが「戦隊の一員である事」を自覚している事の裏返しであり(「外せば当たらない」事が分かっているので、ダイゴを「仲間」だと思っていなければ、特に躊躇する事もなかった筈)、それ故に、人の心のテリトリーにズカズカと入って来るダイゴに、心を開く事が出来たものと受け止めることが出来ます。ストーリー運び自体は割と大雑把な印象こそありますが、なかなか緻密な感情表現が盛り込まれていますよね。

 で、海老澤さん演じる御船士郎ですが、彼の発見した「超古代文明の遺物」は、エピローグでアイガロンによって持ち去られていた事が判明します。そんな事など知る由もないイアンは、士郎の復讐を果たし、自分のトラウマも克服したとあって、「超古代文明の遺物」に頓着しない様子を見せています。いわば、イアンの過去がこれで精算されてしまったわけで、今後、「超古代文明の遺物」が再登場となった際に、どのような物語を紡ぐのか、興味を惹かれます。

 冒頭で示した通り、海老澤さんはゴーオンブラックを演じていた「先輩ゲスト」ですが、興味深い事に、ゴーオンブラック=石原軍平は、イアンとは反対に「仲間になりたくてしょうがない男」でした。

 警察官として働いていた軍平は、ある日、ゴーオンジャーを目撃し、そのあまりの格好良さに我を忘れて、何とか自分もゴーオンジャーになりたいと考え、警察関係者とは思えない数々の犯行(笑)を企てては失敗するという、トンデモキャラでした。ゴーオンジャーに対する自分の売り込みも相当なものでしたから、真にイアンとは真逆の存在です。このエピソードに海老澤さんを登場させた事の裏には、「真逆のブラックとの対比」という意図があるのではないかと勘ぐってしまうわけです。

 まぁ、多分ないですけどね...(笑)。

 ところで、毎回充実した素面アクションを展開する「キョウリュウジャー」ですが、今回もしっかりと盛り込まれています。それぞれの得意技を活かしたアクションは、回を追うごとに熟練度を増しているのが頼もしい処。しかも、獣電池のチャージが完了するまで変身出来ないという、足枷設定がある事により、生身で戦う意味が担保されていて、ストーリー的にも無理がない。「単なる見せ場」を超えて、ドラマの一部としてちゃんと昨日している処が素晴らしいと思います。

 巨大戦では、キョウリュウジン・ウエスタンが登場。ここでも、ゴーオンブラックの炎神であるガンパード(銃撃戦に長けるシェパード+パトカー型の炎神)と奇妙な符合を見せています。わざわざBGMを変化させたり、夕景に設定したり、身軽な銃撃戦を主体にするといった、マンガチックな描写が楽しく、充実度はすこぶる高いものとなっていました。

 次回は、ソウジとイアンの対立になるようですが、前回と今回の展開を踏まえた、いいシリーズ構成ですね。ゲストは、戦隊の先輩ではなく、何と何と「超星神シリーズ」から!!