ブレイブ6「ストップ!うたうキャンデリラ」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 メインのキャラクターも画面構成も場面転換も派手派手で、何だかとっ散らかった雰囲気はあるものの、全体的に明るくて面白いエピソード。

 縦糸はアミィとラミレスの束の間の交流ですが、そこは二人の爽やかな魅力でサラリと。実態は、敵も味方も様々な場所で奮闘する総力戦になっており、まるで一大イベント編。まだ1クールも半ばなのに(笑)。

 しかし何と言っても、今回最大の魅力は、サラリとしたアミィとラミレスの交流、そしてアミィの孤軍奮闘。イベント編の様相を呈しつつも、しっかりアミィ編として成立しています。

 今回は、アミィに「放っとけない」とか「お節介」といった属性を付加していました。これは戦隊ヒロインとして重要な要素であり、女性ならではの細やかな配慮によって、男性メンバーでは察知しにくい事件をいち早くキャッチして先行するというパターンはお馴染みとなっています。

 今回のアミィの場合、事件をキャッチするという展開ではなく、ラミレスの苦悩に早く気付き、それを取り除くべく行動する事で、事件解決(つまりアンキドン探索)の糸口を誰よりも早く掴むという展開でした。これは、主に子役ゲストを絡めた上記の定番を変形させたものと言えます。そこに、バイクをかっ飛ばしてアンキドンの気配を探し回るという、アミィの活動的な面を盛り込んで、一筋縄ではいかないヒロイン像を造り出していました。

 そこで気付くのは、アミィのヒロイン像が、「バイオマン」から何作か続いた「活発なヒロインと、お淑やかなヒロインによる二人組」という、ヒロイン二人体制のハイブリッドであるという事です。ラミレスに「Powerful lady」と評される活発な(そして乱暴な)面と、「お節介」な世話焼きの面を有する上、獣電池の力であるとはいえ、デーボ・ウイルスンをメロメロにした「可愛い」面をも有するアミィは、ここ最近の個性化ヒロインの中にあって、ある意味貪欲に定番ヒロイン像を追求する存在として、異色の光を放っています。

 従来、色気で惑わすヒロインという側面を一度でも与えられた者は、戦闘中においてあまり男性的な面を見せない傾向がありましたが、今回はアクションにもルックスにも長ける素材を得て、ヒロイン像が大きく動いたように思います。

 ちなみに、その萌芽は「チェンジマン」のチェンジフェニックス=翼麻衣ではないでしょうか。同席する女性メンバーのチェンジマーメイド=渚さやかは、頭脳派の淑女といった雰囲気はあるものの、可愛らしさや色気担当という感じではないサバサバした人物像でしたし、麻衣はアクション派でありながら恋愛話やお色気誘惑エピソードが存在していました。卓越したアクション派ヒロインでは、「ジャッカー」のハートクイン=カレン水木が最初ですが、カレンは割とストイックな武道家のような雰囲気があり、変身後の色仕掛けアクションとの乖離が激しかったように思います。一方のお色気系のパイオニアは、何と言っても「デンジマン」のデンジピンク=桃井あきらです。異論は認めません(笑)。

 脱線しましたが、そのうら若きアミィと、やや怪しげなオッサン(失敬)であるラミレスがバイクに乗っている様子は、ちょっぴり犯罪的な匂いもあって...(笑)。

 とまぁそれは冗談として、ダイゴ達を空気にしてまで立ち回ったアミィの動きは、ヒロイン編としての完成度も一級でした。

 一方で、デーボス側のメインはキャンデリラ。敵でありながら「喜び」の感情を引き出さなければならないという、難しい役どころ。劇中でも「喜びは集めにくい」なんて事を言っていたくらいなので、非常に珍しいタイプの幹部キャラクターだと思います。今回は、キャンデリラ役の戸松遥さん自らが歌唱するという一大イベントがあり、声優ファンも納得。キャラクターの色を保ちつつ歌うのは非常に難しい事なのですが、さすがは人気声優といった処でしょう。戸松さんはグラビア等もこなされるそうなので、何となく、いずれは人間体が登場するのでは...と思っているのですが...。

 実は、ここでキャンデリラ VS アミィという単純な構造に落とさない処が絶妙でして、今回はラミレスももう一人の主役という状態なので、アミィだけを持ち上げないよう、理性が働いています。何と言っても、ラミレスはキョウリュウシアンなる「新戦士」である上、マーチャンダイジング上、非常に重要なアンキドンのパートナーですから、ラミレスがメインにならなければならないシーンでは、アミィもスッと一歩引いているわけです。Aパート+Bパート前半をアミィが、Bパート後半をラミレスが担当している感じですが、それでもアミィ編としての魅力を失わないのは、徹底したアミィ関係の魅力を引き出す演出に要因があります。

 例えば、メロメロ作戦はマンガチックな演出が過度ながらも、本当に可愛いですし、名乗りでセンターを担当させるという、近年では珍しい構図があったり、いつもはダイゴが担当の「荒れるぜ~~止めてみな!」を、アミィの「荒れるわよ~~止めてみなさい!」に変更したりと、様々な「押し出し」が盛り込まれています。アクションでは、思わずラミレスも驚く「乱暴」っぷりで魅せてくれました。

 今回は、実際にアミィにメロメロになった男性諸氏も多い事でしょう(笑)。しかし、まだ1クールも半ばなのに、本当にこんなに飛ばしまくってていいんでしょうか...。

 さて、Bパート後半の主役はラミレスですが、ラミレスがキョウリュウジャーとしては孤独だった(=「戦隊」ではなかった)事と、現・キョウリュウジャーが「戦隊」である事のコントラストを描く事で、ラミレスの無念と、現・キョウリュウジャーの強さが浮き彫りにされました。というのも、ラミレスの変身するキョウリュウシアンは、巨大化した敵をもハンマーで叩きのめすという、凄いパワーの持ち主として描かれていたからです。そのパワーがあるにも関わらず、老年期まで生きながらえる事無く生命を散らしたという、悲劇的な設定は、逆に現・キョウリュウジャーが「戦隊」として強固なチームを組んでいるからこその強さというものを、より強調していました。正に、「5つの力を一つに合わせて」が出来るか否か、それが勝利への鍵になるというテーマの顕れですね。

 ただし、ラミレスは前回でも示されたように、その悲劇的な来歴を感じさせない「陽気で無垢なオッサン」として描かれている為、込められている悲劇性は殆ど感じられません。魂の存在であるが故に、その活動にはスピリットパワーの限界があるという感覚は、悲劇性満点でしたが、アンキドンが元に戻ってからは、その限界もどこかに吹き飛んでしまい、陽気に、そしてパワフルにキョウリュウシアンに変身。ドスの利いた声色でアンキドンを召喚する迫力は、素晴らしいものがありました。残念ながら、ラミレスがサンバのステップを踏む描写はなく、あのステップが現・キョウリュウジャーならではのものである事が判明したわけですが、何と言っても、変身プロセスでわざわざCGを使ってスリムになる描写が加えられる等、ユーモア溢れる描写が愉快! 今後も是非折に触れて登場して欲しいキャラクターとなりました。

 ラミレスの陽気さを継承してか、巨大戦でも「キョウリュウジン マッチョ」という、ヒーローロボットでは使われそうにないネーミングが秀逸。土俗的なリズムをパーカッションが奏でるBGMもハイセンスで、アミィ共々終始パワフルでした。

 次回はダイゴ編。しかも定番ニセモノ編!?