Space.13「スティンガー、兄への挑戦」

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 前回までに繰り広げられた11人勢揃いまでの道程。今回は打って変わって、新しい旅立ちの前段を描く「準備編」とも言うべき趣になりました。

 小太郎しかり、スティンガー、そしてチャンプしかり。ラシンバンキュータマがしばらく使えなくなってしまうという制限も効いていて、アルゴ船の完成までに隙間の時間を作り、バラエティ豊かな挿話を見せていくという意図が見られます。

 今回は「新たな旅への準備」を段取り良く見せつつ、ゾンビを登場させてビジュアルの面白さを狙ったり、2チーム体制で行動するという変則パターンを見せたりといった楽しさも追求されています。ストーリーがシリアスムードな分、そういった面でバランスをとっているのが巧いですね。

モンドムヨインダベー

 またまたツヨインダベーの出世版が登場。このタイプが出て来たということは、扱いが軽いということです(笑)。そして、期待に違わぬ扱いの軽さを見せてくれました。

 冒頭、人々の訴えを聞くだけ聞いて嘲るように退ける、悪辣なダイカーンを存分に演じていましたが、カローであるスコルピオの登場で一転。スコルピオの毒でゾンビ化し、単に徘徊しつつ感染を拡げていくだけの存在と化してしまいました。こうなっては、もはやドラマを牽引する怪人とは言えなくなるわけで、今回のメインを務めるのはあくまでスコルピオであると示したわけです。しかも、スコルピオ自身は表に出て来ないときていますから、その不気味な存在感を遺憾なく印象付けることに成功しています。

 一方で、毒を維持したまま巨大戦も担当し、モライマーズとのタッグを披露しています。2チームのキュウレンジャーが合流してリュウテイキュウレンオーに合体するプロセスは、燃える要素満載。小太郎離脱前のひと暴れという意味合いも盛り込んで、盛り上がっていましたね。

スコルピオ

 大方の予想通り、チャンプの生みの親であるアントン博士を殺めたのは、スティンガーではなくスコルピオだったようです。チャンプが目撃したのは、解毒を試みるスティンガーの姿だったわけで、やはりチャンプの誤解でした。

 巧いのは、チャンプがスコルピオとスティンガーを見間違えるといった類のよくある話ではなく、「スティンガーが尻尾でアントン博士を刺す」という行為自体はチャンプの目撃どおり真実であり、実はその行為の「目的」を誤解していた...ということでしょう。解毒に際しても尻尾が有用であると提示されることで、曖昧な記憶だとか、姿がよく確認できなかったといったチープな誤解譚にならなかったのは、キッズ向けのSFを標榜する「キュウレンジャー」にとって非常にプラスになったのではないかと推察します。

 ところで、スコルピオの悪辣振りは、久保田さんの格好良い低音ボイスによって魅力的なものに映っています。その姿が怪人と化している理由についてもいきなり説明され、無駄な要素を省いてキャラクターの魅力を追求する姿勢には好感が持てますね。

 その毒で、人々ばかりか、モンドムヨインダベーをはじめとするジャークマターの連中までゾンビ化するという、どっちが問答無用か分からない怖さが良い感じ。スティンガーが、斜に構えつつもその優しさを隠しきれない男として描写されているのに対し、スコルピオは徹底した悪役として描かれており、その真意は不明ながら、現在のところ充分にスティンガー、あるいはチャンプの仇敵としての存在感をほしいままにしていますね。

 元ライダーだけあってライダーキックみたいな技も披露したことですし(笑)、これからいかなる活躍を見せてくれますか...?

旅立ちの小太郎

 ビッグ・ベアとショウ・ロンポーの絡み以外、本編ではリベリオンの存在感をあまり感じられなかったのですが、ここに来て、小太郎がリベリオンの本部へと訓練に出向くことになりました。

 恐らくは、小太郎役の田口さんの学業に配慮してのスケジュール調整だと思われますが、そういった裏話は抜きにして、訓練を課せられるということ自体に組織としてのリアリティがあり、これも「キュウレンジャー」にとってはプラスになると思いました。とにかくぶっ飛んだ設定で突っ走っていながら、足下がぐらつかないようにある程度のリアリティを配しているのは素晴らしいですね。

 劇中の小太郎自身の学業はどうなるのかという疑問もありますが、チキュウはジャークマターに蹂躙されていて非常事態にあり、そもそも学業なんてやってられないというのが正直なところではないかと思います。それより、弟は放っといていいのか...(笑)。

 それはともかく、また帰ってきたときには、凄い戦士になっている可能性が大いにあるので、期待したいですね〜!

 それと、スティンガーとの師弟関係(?)を一旦解消することによって、スティンガーがチャンプと組むようになる状況に巧く誘導しているのが良いですね。スコルピオ打倒を宣言するスティンガーの迷いを、弟を持つ小太郎が看破するというドキリとさせられるシーンも用意されており、ただならぬ少年振りを発揮しました。勿論、これはスティンガーが小太郎に言った「弟が誇れる兄であれ」という助言に対する返歌でもありましたが、逆に短時間で小太郎が成長を見せたとも解釈できるシーンで、感銘を受けました。

スティンガーとチャンプ

 図体が大きい割には意外に存在感の薄いチャンプでしたが(失礼)、ようやくスティンガーに対する誤解が解けたことで自身の方向性を定めることができ、存在感が増したように思います。

 スティンガーが弁明しなかったのは、悪に寝返った兄であるスコルピオについてわざわざ言及したくなかったのと、解毒の技を説明しても(刺すことには変わりないので)信用されるかどうか疑わしかった、あるいは弁解が面倒だったということがあるかと思います。いつかは分かることだから保留していたという感じでもありますね。もしかすると、わざわざ弁明せずともチャンプならば感じ取ってくれると思っていたのかも知れませんが...。

 誤解が解けたことで、体育会系全開のチャンプはスティンガーを相棒と呼び始めるノリの良さを発揮。一方のスティンガーはやや迷惑そうなのが良いです。図らずも声が合ってしまうといった演出もすこぶる効果的で、実は壁を挟んで互いを理解しようと意識していたのではないかと邪推してしまう名コンビ振り(笑)。

 ただし、スコルピオを即ち共通の敵としてしまうほど短絡的にはできていないのがミソで、チャンプは明確に「親の仇」としてスコルピオの打倒を標榜できるのに対し、スティンガーはダース・ヴェイダーと対峙するルーク・スカイウォーカーが如く、ダークサイドに転向した肉親を相手にどう向き合うか迫られることになります。このあたりのドラマには、これまでにない深みを期待できそうな気がしていて、今からワクワクしています。

腰が悪い

 滅法強いリュウコマンダーですが、どうやら自身の年齢に関して少し感じるところがあるらしく、戦闘中に休憩していました(笑)。こんな司令官(しかも変身して戦う人なのに)初めてです...。

ゾンビハミィ

 今回の見所の一つとして、人々がゾンビ化するというシーンがありますが、ハミィもスコルピオの毒に感染してしまいます。まずは「キ〜タ〜コ〜レ〜」が笑いどころ。変身後に感染したので、素面でのゾンビメイクが拝めないと思っていたら、まさかの変身解除後も! それにしても、ゾンビ映画の美女はゾンビになろうとも美女のままなのが定番ですけど、ハミィも例外ではございませんでした。あっという間にスティンガーによって解毒されてしまうので尺は短かったのですが、見事にそのシーンの主役になっていましたよね。

 これもいわゆるコスプレ系になると思いますが、次回はさらなる「変装」があるようなので、お楽しみに!

次回

 思いっきりコメディに振り切っていそうな予告に戦慄...。東映不思議コメディシリーズのタイトルを拝借したと思しきサブタイトルにも戦慄...。シリアスムードをぶっちぎるその振り幅に期待です。