Space.17「闇のドームを照らしタイヨウ!」

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 前回の、ある種のバッドエンドに続く展開たるやいかに!?

 シリアスムードを引き摺るのか、はたまた、それをぶっちぎって超コメディに振るのか。サブタイトルからは後者を想像していましたが、意外にもニュートラルな雰囲気でまとめられていて驚きました。

 スポットが当たっているのは、ガルとバランスの関係。ガルにはラッキーという精神の拠所があり、バランスにはナーガという相棒が居るため、この二人の間にある関係性についてはこれまで全くというほど言及されませんでした。しかし、意外と一緒に行動する機会も多く、スーツキャラ同士の良い意味でのガチャガチャした芝居合戦の醍醐味もあって、良いコンビを見せていたと思います。

 今回、この二人の関係が整理されたことで、人物相関図もより密な繋がりを呈すこととなりましたね。

シャイドス

 影から影へ移動し、目にもとまらぬ奇襲攻撃を得意とするダイカーン。その能力はキュウレンジャーを窮地に陥らせると共に、見事に圧政を成立させています。

 治めるエリアを常に監視しており、自分の悪口を言ったり、労働を怠ったりする者に容赦ない攻撃(勿論、特殊能力を活かした奇襲によるもの)を加えて恐怖による強制労働を強いているという、極悪非道ぶりが光ります。さらには、影を作り出すために特殊なドーム内で二つの人工太陽が常に交互にのぼり、また影が小さくなると自分が影から出られなくなるという理由から、南中高度の高い二時間は闇に包まれるような仕組みとしています。この二時間の「夜」以外、人々は強制労働させられるわけです。圧政を特殊能力に結びつけ、さらにその弱点を補うための施策を打って、それすらも圧政に利用するあたりが実に面白いですね。ちょっとした長時間労働へのエスプリにもなっていて、苦笑いさせられる点も秀逸です。

 このシャイドス、恐らくは能力を表す「シャドウ」と、隠れるという行動をなんとなく表明した「シャイどす」あたりからネーミングされているものと思われますが、本人は全然シャイなんかではなく、むしろダイカーンらしい肝の据わった卑怯者といった雰囲気。このあたりのギャップも面白いところでした。

 ラッキーとバランスが勢いでモライマーズを撃破してしまったため、巨大戦はシャイドスが自ら担当していますが、特殊能力を使うのを忘れて瞬殺されるという、些か取って付けたようなシチュエーションになっていました。正直、今回の巨大戦はなくても良かったんじゃないかと思いますが(笑)、せっかくリュウボイジャーが来たので、一応見せ場を作ったというのが本当のところでしょうかね。

ガルとバランス

 冒頭で、リュウコツキュータマ探しに焦るガルと、好機を待つのみという態度を貫くバランスが抜群のコントラストで描かれ、ガルがバランスに苛ついて掴みかかるというシーンも展開されました。ガルのアクティヴさと、バランスのスタティックな言動が魅力的に描かれていましたね。

 ガルは決して粗暴なキャラではないのですが、焦るとつい手が出てしまうのが「ビーストスター」らしくていいですよね。ごくごく個人的な好みですが、私は犬好きなのでガルが大好きなんですよ...。中井和哉さんも大好きですし、本当可愛いです(笑)。今回は、その猛進振りとは別に「体を張る」キャラであることが示されます。自ら痛い役目を引き受けて仲間の仕事を助ける。ペシミスティックな自己犠牲とはちょっとニュアンスが異なり、もっと体育会系な「頑張り」に似た主義を持っている感覚ですね。それが非常に良い結果として表れたのが今回だと思います。

 一方、バランスに関しては、お調子者の裏に隠された理知が強調されました。「果報は寝て待て」を地で行く行動もさることながら、極力無駄な動きをしないのがバランスの主義のようですね。また、自分の仕事をあまりおおっぴらに開示しないのも特徴で、有能な人物の定番要素を与えているあたり、絶妙な味付けになっていると思います。

 というわけで今回は、表面上「熱さ」に忠実な者とそうでない者の対立っぽく見せておきながら、その対立の根拠などは実のところ極々表面上の事項に過ぎないことを語っており、二人は互いを補完し合う見事なコンビであることを見せました。バランスにとっては、本来の相棒であるナーガとはまた違う化学反応を実現しうる人物としてガルが存在することになり、有機的な関係ベクトルが形成されるプロセスを見ることができたわけです。

 今後も賑やかなコンビネーションに注目ですね。

ヒカリキュータマ

 スペシャルでの例外を除けば、星座ではないキュータマが初登場。太陽と月を司るキュータマとなっており、リバーシブルな特殊仕様が斬新です。

 このヒカリキュータマ、リベリオン本部から届けられるという設定が巧く、この機会を利用して、本部へ研修に行っている小太郎に近況を報告させるシーンが登場。さらに、小太郎の口からチャンプとスティンガーの様子を語らせることで、物語の連続性とキャラクターの存続性を同時に確保しているところが素晴らしい。今回の隠れた見所の一つとなっていました。

 さて、このヒカリキュータマですが、先のペガサスキュータマと同様、いわゆる強化アイテムとなります。まずは、このキュータマをラッキーに届けるシチュエーションが面白いのですが、それは後ほど。

 ラッキーはシャイドスとの決戦において、あらゆる影を消すためにヒカリキュータマを使うことにします。タイヨウモードでは、シシレッドがタイヨウシシレッドにチェンジ。頭部に太陽の光芒を模した飾りが現れるという、強烈なビジュアルが鮮烈な「シャイニングスター」です。

 赤いキャラに赤い装飾が付加されるとあって、見るからに熱そう(暑そう)なのが楽しいですね。金ピカキャラであるテンビンゴールドをその眩すぎる光で強化し、テンションを上げまくって戦闘力を倍加するという意外な能力が面白く、それも半分以上ギャグっぽい感覚で演出されていました。テンションの上がりまくったバランスは、シシレッドを超高速ジャイアントスイングでモライマーズに投げ飛ばし、そのままモライマーズを撃破してしまうという、凄まじい力技まで披露します。逆に言えば、バランスは普段お調子者として振る舞ってはいるものの、特段テンションが高いわけでもなく、普段の妙に落ち着いた様子がガルを苛つかせていたことに気付かされるわけです。このあたりも巧いですね。

 ヒカリキュータマのツキモードでは、シシレッドがシシレッドムーンにチェンジ。今度は打って変わって月の妖しい光が発せられるモードとなります。テンションの高いタイヨウモードとは異なり、落ち着き払ったクールキャラに変貌し、喋り方もムードたっぷりになる「ムーディースター」です(笑)。こちらは頭部に三日月の装飾が付加されますが、何となく神秘的な出で立ち。秀逸なデザインです。

 そしてその月光で、ガルが狼男の本領を発揮するのが実に可笑しい。満月ではなく、そして何故か凶暴化ではなくジェントル化してしまうのが更に可笑しさを増幅しています。しかし、ガルが流麗な拳法の形を披露して、敵の攻撃を受け流しつつ効果的に急所を攻める戦法は格好良すぎ! 我に返って照れるところが可愛すぎ! ガルの魅力大発見で大収穫でしたね。

 このヒカリキュータマ、シシレッドの強化アイテムとして登場しておきながら、別の仲間を強化してしまい、しかもそれをメインとして見せている意外性が良かったですね。たまたまガルとバランスがその場に居たということも併せ、ラッキーの強運振りが発揮されたという構図も実に良いです。

司令、完全にギャグ要員...

 ヒカリキュータマが届くタイミングが少し遅れ、シャイドスの例のドームの影響で転送も不可能。そこで、ドーム内に侵入する際にカメレオンボイジャーが地面に掘った穴を利用して、ショウ・ロンポーが届けることになるのですが...。

 カメレオンボイジャーよりはるかに巨大なリュウボイジャーをその穴にくぐらせようとしたために、途中でつっかえてしまい、慌てふためく彼が可笑しい! 張り切って出かけるところ、サイズを全く考慮してないところ、やっとリュウボイジャーの頭部だけドーム内に出られたところ、巨大シャイドス出現直後に脱出できるところ、そのまま状況も分からず巨大戦になだれ込むところ。すべてがギャグでした。前回のスティンガーに対する威厳ある叱咤はどこへやら...(笑)。

次回

 次回はスペース・スクワッドの販促回! 勿論私は円盤を予約済です。Amazonプライムでデカレンジャーをおさらいしてますが、本当に面白いですし真面目に作られていますよね。豪華ゲスト編と言っても良い来週の放送が楽しみです。