Space.44「ドン・アルマゲの正体」

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 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 「キュウレンジャー」も残りわずかとなりましたが、やはり年明けの放送には特別な感触があるものです。昨年末にラッキーとアスランの件に決着がついたこともあり、最終章突入といった感覚が色濃いスタートとなりました。

 しかしながら、最終編への序曲にしては割ととっ散らかった感が強く、一抹の不安を覚える一編でした。

ペガさん久々登場

 今回はペガさんが久々に登場し、何故かスパーダに装着されるという意外な展開となりました。シリーズでは序盤に登場したペガさんですが、長い間登場していないことを利用して、その間に何が起こったかを簡潔に振り返るという趣向で展開しました。

 これにより、今回は総集編なのか? と思ってしまった次第ですが、結局は殆どのイベントが振り返られることもなく、なんだか実に中途半端な「尺稼ぎ」に過ぎなかったのは、残念なところ。このあたりで、ややテンションダウンしてしまったのが偽らざるところです。

 このペガさん周りの見所としては、スパーダ役の榊原さんによるペガさんの「演技」が非常に巧かったこと。細かい様々な動きを付けていて、独立した意志を確かに感じられる秀逸な芝居でした。とにかく見ていて楽しく、工夫された動きが満載なので、今回の白眉と言っても良いかと思います。

ツルギの異変

 数回前より、ツルギが身体の異変を感じるようになっています。色々な原因や展開が考えられますが、不死身の男が有限の命となり、コールドスリープである種のダメージを負ってしまったとか、実はドン・アルマゲとの一戦で自身も与り知らぬダメージを負っていたとか、そういった在り来たりなものではないことを願っています(笑)。

 レッドにストーリーを収斂させていくのが戦隊の常套句とするならば、後述するクエルボの件とも相俟って、ツルギに収束していくのは意外でもあります(ツルギもカラーはレッドですけど)。「ジュウレンジャー」におけるブライや、「ゴーバスターズ」における陣マサトの悲劇は印象的でしたが、それらはレッドキャラとの関係性でドラマを紡ぐ手法を採っており、あくまで縦糸自体のブレはなかったわけです。果たして、今回はどうでしょうか? ラッキーとツルギには、新旧世代の救世主同士という関係性以上のものを盛り込んでいないように思えます。どのように落とし込んでいくのか、期待と不安が入り交じる複雑な心境です。

クエルボ

 浪川大輔さんの類い稀なる芝居の魅力が炸裂しましたね。正に浪川さんが担当されたアナキン・スカイウォーカーの変遷...無垢で理知的な若者が悪の権化に落ちていく様を凝縮した芝居でした。

 昨年末の一編ではヒントを出し過ぎていて(笑)、ドン・アルマゲの正体がクエルボだと分かってしまっていたわけですが、その顛末(瀕死のクエルボにドン・アルマゲが憑依した)もおよそ想像通りだったので、やや拍子抜けでした。まあ分かり易さという部分では良かったのかも知れません。

 ただ、クエルボ自身がドン・アルマゲであることを自覚しているような発言があったので、もう少し踏み込んだ理由があるものと思われます。ここは期待したいところですね。ツルギとの関係は、果たしてツルギが思っているような正しく良好なものだったのか...という疑問がテーマになってくるでしょう。ツルギはそのあたりをペガさんにも指摘されて動じており、ツルギのような強力なリーダーが見えざる部分での不満を看過しているという、組織のリアルな暗部を思わせる構図は、「キュウレンジャー」の纏う雰囲気の中では異質です。この異質さにも、ふと不安を覚えてしまいました。

 一方で、ツルギとクエルボの対決構図が、そのままホウオウとカラスという光と影を象徴する鳥類の相対になっているのは、鮮やかで面白いですね。クエルボが回想される段では、さすがにこのような展開になるとは予想できませんでしたが、妙に扱いが手厚いサブキャラだったことに、今更ながら気付かされるところですね。

進化するキュウレンジャー

 アントン博士の改造によって強化されたデスワームが登場。対するキュウレンジャーは「進化した姿」を披露してこれを撃破するという展開。これはこれで実に燃えるものがあったのですが、大部分に脈絡がないのは大いに気になるところでした。完全に納得できるのはシシレッドオリオンとヘビツカイメタルのみ。オオグマスカイブルーは当初からの能力でしたし、他の面々は今回が初披露(スティンガーもそうでしたっけ??)という唐突さが気になります。それぞれのアクションの見せ方は、物凄い進化を感じられて素晴らしかったですけれども。

 ハミィは完全なるサービスカットのオンパレードで魅せてくれましたが、どうもスベっている感が強く、本人の魅力や努力がストーリー上で活かされていないのが残念。巨大戦にまで引っ張るのも良かったのですが、やはりスベったままという感が払拭出来ないまま、観ているこちらがちょっと気恥ずかしい思いをしてしまいました。全体的に中途半端な印象だった今回にあって、それを象徴しているようなシーンだったように思います。ちょっと「健全なお色気」から乖離しすぎていたか!?

次回

 というわけで、新年早々手厳しいことを書いてしまいましたが、どうも「失速」というタームがちらついて集中できませんでした。プラネジュームが豊富であることを理由にチキュウに戻ってくる構成は巧いので、どうにかドライブをかけて欲しいところです。次年度の予告も始まりましたし、もっともっと現年度に興味を引いて欲しいと思います。